「グーグル ネット覇者の真実」は、創業期から現在に至るまでのグーグルの歴史をまとめた書籍です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
グーグルの歴史を分析した本というと、ジョン・バッテルが書いた「ザ・サーチ」や、佐々木俊尚さんの「グーグル – Google 既存のビジネスを破壊する 」などが有名ですが、実はこれらの本が出版されたのは2006年。
もう5年以上も前の話なんですよね。
当時のグーグルは何と言っても「検索」の会社で、不気味なネット全てを飲み込んでいきそうな雰囲気を醸し出していた会社でしたが、5年たってフェイスブックに攻められる側になっているというのは、実にネット業界の栄枯盛衰を考えさせられます。
この「グーグル ネット覇者の真実」は、「ザ・サーチ」以上に深くグーグルという企業の創業の歴史、創業者の正確やグーグルの文化の謎に深く迫っており、特に創業者二人がうけた「モンテッソーリ教育」がグーグルの文化に大きな影響をあたえているという指摘や、「グーグルの製品はマシン主導であり、マシンによってつくられている。」というマリッサ・メイヤーの発言など、とかく謎の会社として語られがちなグーグルを理解するためのヒントに満ちた本だと言えます。
広告ビジネスの着実な展開や、中国を巡る騒動など、グーグルの強さを改めて痛感させられる話から、意外なグーグルの弱さを感じるストーリーまで、相当丁寧に行われた取材に裏付けられた歴史本と言えますので、グーグルという会社を理解したい方にはオススメの一冊です。
ちなみに「フェイスブック 若き天才の野望」とあわせて読むとさらに今後のグーグルとフェイスブックの正面衝突について、いろいろ想像が広がって面白いんじゃないかと思います。
【読書メモ】
■「たとえ失敗したとしても、完全に失敗するようなことはめったにない」(ラリー・ペイジ)
■「あなたの重要度は誰にリンクされているかで決定されるが、あなたが誰にリンクしているかも、あなたの重要度を決定する。すべては円のようにつながっている」(ペイジ)
■グーグルにとって検索のライセンス契約で得られる最大の利益は使用料ではなかった。最大の収穫は、ヤフーと組むことで従来よりはるかに多くのユーザーとデータを得られたことにあった。
■シュミットは指揮権と統制力を併せ持つ典型的なCEOというより、客員教授のような扱いで入社してきた
■ラリーとサーゲイが2人とも幼少時代にモンテッソーリ教育を受けたことを知らなくては、グーグルを理解することはできない
■モンテッソーリ教育
子供には自分が興味をもったことを追求する自由を与えるべきだという考え方
自分で考えた質問への答えを求め、自分で決めたように行動する
権威を軽視することを学び、何かをする時に偉い人に言われたからではなく、道理にかなっているからそうする
■「邪悪になるな」のモットーは当初はグーグルにとってプラスに働いたかもしれないが、世界各地で論議を呼びそうな地域に進出するにつれ、「重荷」になっていった
■ペイジはエンジニアの言うことを理解できるほど頭の良いプロジェクトマネジャーを探しているわけではない。彼が探しているのはプロダクトマネジャーになれるエンジニアなのだ。
■70/20/10
70%は検索か広告のどちらかの部門に
20%はアプリケーションのような重要な製品の開発に
10%はそれ以外の何でもありのプロジェクトに配属
■OKR(目標と主要な成果)
自分が何をやりたいかではなくて、作業をセグメント化し、どんな結果をいつまでに出せるか、時期を決めて定量化するという手法
■OKRはマネージャーだけでなく社内全体と共有されていた
そこではペイジとブリンのOKRでさえ簡単に閲覧できた
■グーグルの効率性の秘訣は、途方もなく安い値段で性能が低いハードウェアを購入し、必然的に高くなる故障率を見越して創意工夫でシステムの動作を続けられるようにするというアプローチにあった
■「グーグルの製品はマシン主導であり、マシンによってつくられている。それが私たちを強力にし、私たちの製品を偉大にしているのです」(マリッサ・メイヤー)
■「僕らは今後はユーザーのIT部門になる。ユーザーはもはやソフトの更新などにわずらわされる必要は全くない。グーグルがすべて面倒をみるからだ」(アプソン)
■ダブルクリックの買収がFTCに承認されてそれほどたっていない2008年8月8日、グーグルはひっそりと方針を変更し、インターネット上で最強のクッキーを作り出すことを決めた。アドセンスのクッキーを完全に廃止し、アドセンス広告が表示されているウェブサイトを訪れたユーザーのコンピューターにダブルクリックのクッキーを埋め込むことにしたのだ。
■強化されたクッキーで入手する個人情報は、グーグルがユーザーに関して集めるデータの一部に過ぎなかった。検索履歴を通じて、もっとプライベートな情報をごっそり集めていた。
■フェイスブックが恐ろしいのは、ある意味でグーグルとそっくりなところがあるためだ。フェイスブックを率いるマーク・ザッカーバーグは、激しい野心を胸に抱き、エンジニアリングに絶対的な信頼を寄せているという二つの点で、ラリー・ペイジと酷似していた。
グーグル ネット覇者の真実 追われる立場から追う立場へ スティーブン・レヴィ 仲達志 阪急コミュニケーションズ 2011-12-16 by G-Tools |