動員の革命(津田大介) を読むと、ソーシャルメディアの可能性はオンラインだけではなく、オフラインで実際に人を動かすことができる点にあると再認識できるはず。

4121504151 「動員の革命」は、「Twitter社会論」などでおなじみの津田大介さんがソーシャルメディアの本質について考察している書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この書籍で津田さんは、ソーシャルメディアの本質を情報発信ではなく「動員」という一点に絞って、考察を展開されています。
 実際問題、アラブの春やオキュパイウォールストリートなど、世界的にソーシャルメディアによる動員拡大の効果は見え始めていますし、日本でも脱原発デモをされてる人たちがソーシャルメディアを一つの情報インフラとして使っているようですから、この視点は非常に興味深い指摘だと言えます。
 津田さん自身も、自ら復興支援などにツイッターの動員力を最大限活用していた方ですから、そんな津田さんならではの実体験に基づく理論と言えることもできるかもしれません。
 ソーシャルメディアの普及によって、社会の何が変化しようとしているのかが気になっている方には参考になる点が多い本だと思います。
 「ドラゴンフライエフェクト」や「逆パノプティコン社会の到来」をあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■ソーシャルメディアの本質は「誰でも情報を発信できるようになった」という、陳腐なメディア論で言われがちなことではなく、「ソーシャルメディアがリアルを拡張したことで、かつてない勢いで人を動員できるようになった」というところにあるのです。
■ソーシャルメディアは、それ単体で政治的な圧力になったわけではありません。広場に何百万人も集まるという、民衆のデモが圧力になったのです。
■ソーシャルメディアというのは、実は人が行動する際に、モチベーションを与えてくれるもの-言い換えると背中を押してくれるメディアとして機能しているのです。


■ソーシャルメディア=納豆論
 誰かが出たときについていきやすい。納豆を一粒つまむと、粘りが次の豆につながるようなもの
■行動する人にとっては、何かの行動に対して反応が返ってくるだけで動くモチベーションが維持できるのです。
■ムバラク政権は国内のネットと携帯電話の回線を遮断してしまいました。 
 それがかえって人々がデモに行く結果を招いてしまった。
 インターネットが切れてしまうと、何が起きているのか知りたくなる。そして、うわあっと外に出てくる。(モーリー・ロバートソン)
■暴動の参加者同士のソーシャルメディアはツイッターではなく、ブラックベリーのメッセージ機能を使ったんです。
 フェイスブックやツイッターは大人の使われ方をしているのに対して、ブラックベリーは悪ガキの使われ方をした。(モーリー・ロバートソン)
■ジャスミン革命に端を発する革命は無計画で、結果的に人が集まって圧力になった部分がありますが、オキュパイは主体が不明であるにもかかわらず、ウェブサイトを見ると全てスケジュールが書かれている。もともとの反グローバル、反WTOの流れの人たちのイデオロギーが相当に入っている。
■8/21のデモの現場には、テレビの取材班も結構来ていたんですが、結局放映されませんでした。それは圧力でも何でもなく、単純にデモが何を求めているのかが分からなかったんでしょう。
■自分達が文句をいえば、当然相手は自分の非を認めて謝ってくれる。そして、すっきりするという、超短期的な落としどころを潜在的に要求しているかのように見えました。そうすると単なるクレーマーの集団として認識され、それが社会に深く届くメッセージにならなかったんですね。(モーリー・ロバートソン)
■「情報発信しないところは注目されない。何もリターンがないと思っていますから」(陸前高田市立米崎小学校仮設住宅会長 佐藤一男氏)
■ソーシャルメディアの5つの特徴
・リアルタイム:速報性と伝播力
・共感・協調:テレパシーのように共有し合う
・リンク:具体的行動に繋がる
・オープン:参加も離脱も簡単
・プロセス:細切れの情報が興味を喚起する
■ソーシャルメディアで企業はどうふるまうべきか
・情報をオープンにする
・業務として専任の担当者を決める
・個々のユーザーと対話の姿勢を示す
・個人の「顔」が見える運営を心がける
・企業の周辺情報のハブになるよう心がける
■フリートークとはアドリブのことですよね。
 台本芸人、アドリブ芸人という言葉がありますが、演出が施されていないスリリングなバイブはアドリブからしか生まれない。(宇川直宏)
■有吉さんは、フリースタイルの批評性に活路を見いだしたのだと思います。
 あだ名の命名というDISり芸
■わら人形論法
 相手の意見をわざと誤解したり、誇張したり、元の文脈を無視して一部を引用して相手の主張を歪めてたたく-これってツイッターでは日常的に行われている光景じゃないですか。
■ソーシャルメディア上ではあらゆる言論がわら人形論法にさらされるという特性を分かった上で、いつ五寸釘を打たれてもいい覚悟をもってわら人形になれる奴が強い
■マスメディアは飽きるが、ソーシャルメディアは飽きない
 今後、ソーシャルメディアに期待したいのは、人々の善意の流入を継続させることです。
■栄村ネットワークは、震災の直後から栄村の細かい被害状況・復旧状況を見やすいブログ形式で発信しました。それが話題になって、5月には仙谷官房副長官も視察に訪れました。
■僕は動員にマイクロペイメントが組み合わさることによって世の中が変わる、と考えています。
■1955年生まれ前後がパソコンによるイノベーション第1世代
 1973年生まれ前後がインターネットによるイノベーション第2世代
 1990年生まれ前後がソーシャルメディアの勃興に立ち会ったイノベーション第3世代

4121504151 動員の革命 – ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ)
津田 大介
中央公論新社 2012-04-07

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