前回の「今からブログを始める人には当然匿名ブログを進めます」という記事で、最初は匿名ブログで始めるべきだと書いたが、勘違いして欲しくないのは「匿名ブログなら何でもあり」だというわけではないという点だ。
ちなみに、前回の記事には、Danさん、たつをさん、JDさん、たださんと、錚々たるメンバーからトラックバック(突っ込み?)を頂いてしまった。
匿名・実名論ってのは議論し尽くされているようでも、やっぱり話題になりやすいのかなーと思う。
とはいえ、一応このブログのススメコーナー(?)は、あくまでブログ初心者のビジネスパーソンの方をターゲットにしているので、もう一度その前提で会社員にとっての実名ブログと匿名ブログについてまとめると。
そもそも、実名ブログのリスクとは、実名をさらすだけで発生するものではない。
例えばブログのプロフィール欄に自分の実名を書いたところで、その名前と本人が読み手の中で結びつかなければ、プロフィール欄の名前はただのペンネームに過ぎないわけで。
ただ、その「名前」が、例えば「会社名」と結びつくと話は大きく変わってくる。
例えば「田中さん」がブログでNTT批判を展開するのと、「NTTドコモの田中さん」がブログでNTT批判を展開するのでは、受け取る人の印象は全く変わる。(例が適切かどうかは分かりませんが)
個人で発言している限りは、発言についても自己責任のはずだが、会社員の場合はどうしてもすべてがそれでは収まらない。
特に大企業の場合、例えばその批判記事を取引先が読んだ場合、広報担当が読んだ場合、上司が読んだ場合、いずれにしたって何らかのリアクションが発生してしまうはずだ。
企業や組織の肩書きを明示してネット上に意見を公開している以上、本人が個人的意見だと主張しても、誰かが組織や企業の意見として受け取ってしまったり、受け取られる可能性があると判断した場合、その発言が企業や組織の問題に変わってしまう。
だから当然そのリスクを許容できない企業は、ブログ禁止を打ち出すだろうし、まだ態度を決めていない企業においても、自社の従業員の非公認の発言という行為自体を禁止しようという方向になってしまうのは、ある程度仕方が無いと思う。
もちろん、企業や組織公認でブログを書けるなら、それに越したことはないんだけど、まだまだそういう会社は少ないと思うので、だから、とりあえずブログを始めるときにはできるだけ自分を企業や組織とひもづける情報については隠しておいた方が安全。
なので、当然初めてブログを始める人に薦めるのは匿名ブログになる。
ただ、勘違いしないで欲しいのは、匿名ブログとはいっても、その「ペンネームは誰か」ということを特定されてしまったら、結局実名ブログと同じになるという点だ。
いや、もし、ばれないと思って書いていたとしたら、そのリスクは実名ブログよりも下手をしたら大きいかもしれない。
ブログ自体を匿名で書いていたとしても、例えば友達だけにブログを教えていたりとか、異業種交流会で会った相手にはブログを見せていたりとかすると、自分で会社の人に黙っていたところで、どこかしらで話が伝わっていくものだ。
何だかんだいって狭い日本。
匿名ブログのあなたを知っている人と、会社員のあなたを知っている人がいつかどこかであなたの話題になる、なんてのは実はそれほど珍しい話じゃない。
だから、匿名ブログを書いていたとしても、ある程度「いつかばれるのが前提」ぐらいの感覚で書く方が安全だと思う。
(この辺の話は、たださんの「匿名は、維持されなければ意味がない」が参考になります)
そういう意味では、前回の結論と矛盾しているように思えるかもしれないが、実は実名ブログと匿名ブログのリスクはそれほど変わらないのでは、というのが個人的な結論だったりする。
なので、もしあなたが自分の上司を説得できて、広報担当が特に目くじらをたてない職場にいるのであれば、上手く根回ししてブログを書くことを公認にしてもらえるようにするのがやっぱりベスト。
それが難しいなら、とりあえずは実名を公開している感覚をもちつつ、匿名でブログを書くというのが、普通の会社員にはお勧めかなーと思います。
なんだかちょっとネガティブな話が中心になってきて、「そこまでしてブログを書く意味なんて本当にあるの?」とかいわれそうな感じになってしまったので、そろそろ次回はポジティブな話にしたいと思います、ハイ。
ウェブ進化論自身が、ネットとマスメディアの融合の成功事例?
『ウェブ進化論』は何故キャズムを越えたのか? | 実践!Webマーケティング:Blog | ミツエーリンクスを読んで。
ウェブ進化論が凄い勢いで売れているようですね。
なにしろ、「発売から4週間で六刷。累計15万部突破」というんだから凄いです。
ビジネス書で、しかもネット関係の本でこれだけ短期間に売れるというのは、間違いなく初でしょうね。
冒頭に紹介したミツエーリンクスさんのブログで、ウェブ進化論の評判が伝播していく様子が分析されていますが、正直、自分がウェブ進化論の出版記念イベントにパネラーとして参加させてもらったのが遠い昔の出来事のように感じてしまうほどです。
昨日、RTCカンファレンスでウェブ進化論についての議論を聞いてきたこともあり、kwmrさんに書けばといわれたこともあり、もう裏話を暴露しても良い頃だと思うので、自分なりにウェブ進化論の歴史(?)を振り返ってみたいと思います。
私が梅田さんの出版記念イベントについて最初に聞いたのは、確か去年の12月です。
ただ、その後詳細の説明も何にもなかったので、すっかり忘れていて1月12日にいきなり梅田さんのブログで告知があり驚いたぐらいでした。
さらに驚いたのが1月30日に梅田さんのブログで発表された「第一部 これからのメディアについて」という議題設定。
えーー、そのテーマにパネラーが私で良いんですか?というのが正直な感想。
いくらFPNでメディアの真似事をやっているとはいえ、自分のメディアに関する知識なんて梅田さんやR30さんに教えてもらったことがほとんどなので、当日貢献できなさそうだと思っていたのが事実です。
おまけにブログとメディア論みたいなのは、いわゆるブログコミュニティにおいては1年前に激しく議論されたテーマ。梅田さんやR30さんとは、ある程度共通の結論みたいなものを共有している感じはあるので、今更感を感じてしまっていたのも正直なところです。
で、当日、始まる前にR30さんと「メディア論は早めに終わらせて別の議論しましょう」的な画策をしていたりもしたのですが、結局、梅田さんとそういう話をする暇はなく、ポッドキャスティング収録のために不規則発言を封じられたのもあり、メディア論の議論をある意味淡々と収録する形になります。
実は当日まで、梅田さん本人とやり取りは無かったので、ご本人の意思を確認する暇もなく当日に突入してしまったのですが、予想通り当日のメディア論の議論にはあまり貢献することもできず、ちょっと凹み気味で当日を終えたというのが本当のところでした。
これはあくまで個人的な印象ですが、会場に参加することができたブロガーの皆さんも、結構戸惑っていたように思います。
何しろ、せっかく濃いブロガーが20人以上集まっているのに、会場を巻き込んだブログ的な議論が行われるわけでもなく、収録を黙って見守る形になってしまったわけで。
皆さんいずれ劣らぬ論客ばかりですから、結構消化不良になっていた人も多かったようです。(確か会議1.0と比喩する人もあったと記憶してます)
まぁ、その分、その後の2次会では、ブログ的にいろんな議論が白熱していたわけで、皆さん満足して帰ったわけですが。
ただ、今となっては、このイベントの意図を自分が大きく勘違いしていたのが良く分かります。
私個人は、ブロガーを集めてパネルディスカッションをするということで、てっきりいつもブログ上でやっているような濃い議論を、濃いブロガーを巻き込んで行うイベントなのかと勘違いしていたわけですが。
このイベントはあくまで、メディアやブロガーの人たちに「ウェブ進化論」について書いてもらうためにあったわけです。
まぁ、出版記念イベントなんですから、当たり前の話。
今思えば、我ながら、ひどい勘違いをしたものです。
特に今回のイベントのメインのターゲットは、やはり既存マスメディアの人だったのだと思います。
ついつい私たちは梅田さんをCNETブログの頃から知っているので、超有名人だと勘違いしてしまいますが、一般的な基準から言えば梅田さんはそれほどマスメディアに頻繁に登場する人ではありません。
ウェブ進化論という書籍を出したところで、普通に行けばブログには取り上げられても、それほどマスメディアに取り上げられることは無かったはずです。
そもそもこの書籍「ウェブ進化論」のメインのターゲットは、ちくま書房のインタビューでも書かれているように「リアル世界の四十代~五十代の人たち」に「ネットの世界をきちんと伝えよう」ということ。
ブログでいくら話題になっても、そのままではリアル世界の四十代~五十代になんて伝わりません。
そのためには、なんといってもマスメディアに取り上げられることが必要なはずです。
そこで一つの象徴的な役割を果たすのが今回の出版記念イベント。
20名以上のブロガーに事前に書籍を配布し、「発売直後に一斉に」ブログで書いてもらうというバズの集中化を行った上に、IT系のニュースサイトにも記事を書いてもらい、書籍発売直後の話題づくりを行います。
そういう意味では、出版記念イベントのターゲットが既存メディアの記者の方と考えれば、第一部が「これからのメディアについて」というテーマ設定だったのは今考えれば自然です。
記者の方々にとっては、ネットと既存メディアがどのような位置づけになっていくのか、どのように融合していくのかというのは非常に興味深いテーマのはず。
多くの記者の方が、梅田さんの発言に注目していたはずで、もっとこの人の話を聞きたいと思ったはずです。
結果、書籍販売後1週間~2週間で、おおくのオンラインメディアに梅田さんのインタビュー記事が掲載されることになります。考えたら、書籍出版をきっかけにメディアにインタビューされるというのはそれほど普通のことではありません。書評コーナーに掲載されるならまだしも、梅田さん本人のインタビューが連発したわけですから。
これらの中には当然事前に仕込んでいたものもあるはずですが、出版イベント直後のブログでの盛り上がりが好影響を与えたものも多いように想像します。
ただでも、ブログを中心に話題になっている上に、オンラインメディアでも大量に紹介され、「ウェブ進化論」は見事なスタートダッシュを成功させます。
それがAmazonのランキング急上昇や、品切れ続出をひきおこし、それが更なる話題を誘っていくのは皆さんご存知の通り。
3月4日に 「王様のブランチ」のベストセラー紹介コーナーで第一位で紹介された時点で勝負アリ、ですよね。
この時点ではブログやオンラインでの盛り上がりは一段落しているわけですが、すでにウェブ進化論の話題はマスメディアまで突き抜けて行っているわけで、もう役割は終了です。
まずブロガーを中心に話題を盛り上げ、それをオンラインメディアにつなげ、最終的にマスメディアに届け、(その後ようやく新聞広告をうつ)、という形で見事にクチコミの連鎖が発生したわけで。
発売前に梅田さんが、ここまでの大ヒットを想定していたのかどうかは分かりませんが、事前に緻密に計画された、見事なブログマーケティングの成功事例ということができるのではないでしょうか。
もちろん、この成功はウェブ進化論という書籍自体がクチコミを発生させるクオリティだったからこそです。
そういった仕掛けが無くても単純に書店に並べただけでも大ヒットしたのかもしれませんし、ライブドア騒動と重なって、ネットやウェブの今後を冷静に考えたい人が増えたのかもしれないとか、他にこういった本が無かったので丁度ニーズにマッチしたとか、いろんなことは考えられますが。
ネットの世界のことをいかに「リアル世界の四十代~五十代の人たち」に伝えていくかということを、考え続けてきた梅田さんならではの成功だと言えると思います。
企業で社員向けにまとめ買いする事例も増えているようですが、今後ウェブ進化論のおかげで、多くの企業でウェブの力を理解してくれる管理職の人が増えてくれれば、ウェブを上手く活用したい我々のような世代の追い風にもなるわけで。
私たちブロガーも、そんな記念すべき成功事例の最初の盛り上がりに少しでも貢献できているんだとすると、何だかちょっと嬉しくなりますね。
相変わらずなんだかちょっとまとまらないエントリになりましたが、長くなってしまったのでとりあえずこの辺で・・・
(つづく、かもしれない)
ウェブ進化論 (梅田 望夫)
ウェブ進化論については、出版記念イベントに参加させてもらったりしたのもあり、全体への感想はブログに書いたりしているのですが、読書メモ自体をまとめていないのに気がつきました。
すでにそこら中で書評は書かれていますし、驚きの部数になっているようなので、こういったネットに関する本がこれだけ多くの人に読まれるのに改めて驚いている日々です。
読書メモをまとめるために改めて本を読み直してみたので、ついでに改めて感想をメモしておくと。
私たちは本というものを買うときに何かしらそこに答えとか、指針のようなものを期待しがちですが、このウェブ進化論で梅田さんが問いかけているのは、こういう流れに対して「あなたはどうするつもりなのか?」ということなのかもしれないなーと改めて思います。
その辺、今週のRTC勉強会でもどういった議論になるのか、楽しみです。
今からブログを始める人には当然匿名ブログを薦めます
先日、自分が人気ブログ至上主義者だと思われて悲しいという話を書いたが、もう一つ良く勘違いされるのが自分のブログの匿名・実名論に対するスタンスだ。
先に結論から書いておくと、もし今から初めてブログを始める人には、私は間違いなく匿名でブログを始めることを進める。
まぁ、自分自身はFPNをはじめ、自分のブログやら、AllAboutやらで名前も写真も露出狂ばりに出しまくっているので、こう書いても説得力は薄いんだろうけど。
自分が実名でブログを書いているのは、AllAboutでネット上に顔写真を出してしまってから吹っ切れたとか、それが自分の仕事の役にも立つと思っているとか、U30世代の無邪気な露出ぶりに理解できない焦りとか恐怖のようなものを感じたからとか、そういう小さい理由の積み重ねでしかない。
正直、最初にブログを始めるときには、いかに徳力という名前にひもづかないニックネームのIDやタイトルをつけるべきかに苦心したし、実は今でもネット上に実名を晒しまくっていることに対する漠然として恐怖感のようなものがある。
なにしろ苗字が珍しいだけに、一度出してしまったら後にはひけないし。
何か悪いことをしてしまったり、ネット上で問題が発生してしまったら、一生その出来事と自分の名前がリンクして記憶されるかと思うと恐ろしいものがある。
多分、他のブロガーに比べると、自分がブログに、やれどこに行ったとか、どこで食事したとか、誰とあったとか、カジュアルなことをほとんど書いてないのは、自分がビジネス系の話題にしかあまり興味が無いという性分が影響しているだけでなく、その辺のいまいちWeb1.0的(?)な本性のせいもあるんだと思う。
今振り返ると、臆病者の自分がよくぞここまで実名で突っ走ってこれたもんだと、自分でしみじみ思ってしまうぐらいだ。
ちょっと話がそれてしまったので、ブログの匿名実名論に話を戻すと。
もちろん、実名でブログを書くことによるメリットというのはいろいろと存在すると思う。
実際、自分がもやもやを振り切ってこの2年感実名でブログを書き続けてきた経験から言うと、実名でブログを書くことによるメリットというのは、非常に大きいと感じているのは事実だ。
ただ、そのメリットは必ずしも実名でブログを書かなくても得られる可能性は十分ある。
1年ぐらい前に「ブログは実名で書くべきか、匿名で書くべきか」という記事を書いたときに、ブログを書くことによるメリットをこんな風にまとめてみたことがある。
1・日々書くことで文章力が上達する(かもしれない)
2・書くことによって自分の思考を整理できる(かもしれない)
3・他のブロガーとディスカッションできる(かもしれない)
4・広告とかで若干のお金儲けができる(かもしれない)
5・他のブロガーと実際に会うことができる(かもしれない)
6・メディアでの執筆や本の出版のチャンスがもらえる(かもしれない)
7・本業に役立てることができる(かもしれない)
その記事を書いたときにも同じ事を書いたが、これらのメリットは、実は匿名でブログを書いていても同じように得ることができるのが、ブログの面白いところだ。
いわゆる2ちゃんねるの掲示板のようなところに匿名でコメントするという場合の「特定不可能な誰か」とは異なり、匿名でブログを書くという行為は少なくともそのブログを書いている人はある程度特定されうる。
(こういったペンネーム的な位置づけにある匿名は、正確には顕名と呼ぶらしい)
だから、ブログにコンタクト用のメールアドレスでも書いておけば、少なくともブログに興味を持った人はコンタクトすることができる(匿名よりも実名ブログの方がコンタクトしやすいのは事実だが)し、実際にR30さんやcatfrogさんなど、匿名でブログを書いているのにイベントや講演に参加しているような人は多く存在する。
まぁ、そもそも今の日本の大企業の中にいて、職業が特定されうる実名を晒してブログを書くという行為はリスクこそあれ、メリットはそれほど無い。
もちろん、私のような小規模なベンチャー会社に勤めている人間は、会社の理解も得やすいし、仕事への好影響も出やすいわけなので、ブログを実名で書くのもメリットの方に目が行きやすい。
でも、大企業の場合は、実名で書くデメリットの大きさを考えると、実名と匿名のメリットの差なんて誤差の範囲のはずだ。(自分がもしNTTをやめていなかったら、少なくとも実名ブログなんてありえなかったのは火を見るより明らかだし、ブログ自体を書いていない可能性も高いし。)
まぁ、こんなもったいぶった書き方をしなくても、匿名ブログから始めるべきというのは、もう一つ一番分かりやすい理由がある。
それは、匿名で書いていたブログをあるタイミングで実名ブログに変更するのは簡単だが、実名ブログで始めてしまうと、それを匿名ブログに変更するのは結構難しいということ。
名前を晒してから、何か問題が起こって慌てて消したとしても、その問題の過程ですべての人が忘れてくれる保証はないし、なにしろGoogleなりネットのアーカイブサービスなりにデータがキャッシュされてしまったり、他のブログに引用されて消しようがなくなる可能性は十分ある。
仮に実名ブログをやるつもりでブログを始めるにしても、ある程度は匿名ブログで初めて様子を見ながら、自信がついたら実名ブログにすれば良い。
武士道よろしく「やあやあ我こそは!」と名乗らないと気がすまないから、実名ブログで始めたいという人もいるかもしれないが、まずは無名の足軽から始めてみるのが無難なのでは?と思う次第です。
Winny問題は、開発者逮捕から2年近くも経つのに・・・
安部官房長官が国民に異例の呼びかけ–「パソコンでWinnyを使わない」 – CNET Japanを読んで。
一国の官房長官が、記者会見でフリーソフトの使用禁止を国民に訴えるというのは実に異例の光景でしたね。
Winny問題というのは、ファイル交換ソフト自体の著作権を巡る問題に加え、トラフィックの問題や、情報漏えいウィルスの問題も絡んでしまっていますから、普通の人に理解するのは不可能なレベルになってしまっている気もします。
そんな中、官房長官がわざわざ記者会見で「Winnyを使わないでくれ」と宣言して、どれぐらいの効果があるのかは正直微妙です。
なんだかかえってWinnyの注目度を増してしまい、模倣ウィルスの増加や興味本位の利用による被害の拡大を招いてしまいそうな気がするのは私だけでしょうか。
(安部官房長官の発言にバックアップされる形で、早速ぷららはWinnyの完全規制を打ち出しており、Winnyのトラフィックに悩むISPにとっては助かる宣言になったようですし、Winny対策の便乗商売は数々生まれてきているようですが)
先週丁度「Winnyは悪くない、悪いのはウイルスであり、感染する人だ」という開発者の金子さんのコメントが記事になっていましたが、改めてWinnyを巡る騒動を振り返ってみると、Winnyの開発者である金子さんが逮捕されてもうすぐ2年になろうとしていることに驚きます。
開発者が逮捕されて2年になるのに、いまだにWinnyをめぐる問題は収束するどころか、むしろ情報漏えいウィルスに関しては日々悪化しているような印象すらあります。
先日の記事で、特に個人的にひっかかっているのは開発者の金子さんが「Winnyの改良を行わないことを警察側に誓約した」という点。
これが問題を悪化させているように思ってしまうのは私だけでしょうか?
Winny及び金子氏が、そもそも問われている問題は著作権法違反幇助の罪です。
手軽に音楽や映画のファイルをコピーできるために人気を博したWinnyですが、コンテンツ業界からすれば当然これは大問題で、そのソフトウェアが改良されることを望まないのは当然でしょう。
ただ、残念ながら金子氏の逮捕以降もWinny利用者はそれほど減っていないらしいという現実があります。
英語圏では、複数のファイル交換サービスが存在するため、どれかが閉鎖されるとすぐ次のサービスに人気が移るという遷移がおこっているようなのですが、なぜか日本ではメインで利用されているのはいまだに昔ながらのWinMXとWinnyがほとんどのようです。
そういう意味ではウィルス開発者からすると、ファイルを自動的にコピーするためウィルスを伝播させやすい性質を持っており、ある程度の利用者もいるため影響も大きいことが想像でき、しかも開発者による修正や改善が停止しているWinnyというのは格好の標的です。
結局、情報漏えいウィルスのAntinnyの問題というのは、Winny自体にセキュリティホールがあって、ウィルスが伝播しやすいという仕組みを突かれているわけですから、本質的にはソフトウェアの問題。
ソフトウェアに問題があるなら、それを修正すれば被害はある程度防げるはずなのに、修正版が出てこないから利用者は未だに問題のあるままのバージョンを利用し続け状況が悪化するという状態にあるようです。
なんで、警察は金子さんに修正プログラムを書かせないのでしょうか?
ただただしさんも「Winnyを改善させて損をする人がどこにいるのか」という記事のなかで、「問題を起こして業務停止命令下にある自動車メーカーに、リコール対策すらも禁じているかのようなものです」と書かれていますが、私もそう思います。
もし今回の問題がハードウェアだったら、警察も当然その機器の改善を開発者に指示したんじゃないでしょうか?
なんだかソフトウェアだから良く分からないからという理由で、そのままにされているような気がしてなりません。
まぁ、そもそもの著作権法違反の視点で考えれば、Winny利用者がウィルスで苦しむこと自体は、警察側やコンテンツ業界としては実は追い風と見ることもできます。
Winnyの利用者がウィルスを恐れて減ってくれれば、著作権違反も結果的に減るわけで、そういう意味でもWinnyを改善する理由などないわけです。
そういう意味では、「Winnyを使わないで」というお願いぐらいしかやることはないというのも分からないでもありませんが。
でも、そもそものWinny利用者が未だに存在するという事実自体を踏まえて根本的な問題を解決をしないと、情報漏えい事件発生→メディアが報道→認知度が上がってウィルスを作る人や、興味でWinnyを試す人が増える→また事件発生というスパイラルは終わらないような気がしてなりません。
はじめの一歩を踏み出そう (マイケル・E. ガーバー)
この本を始めて読んだのは、2年以上昔だったと思います。
(Outlogicの杉本さんが薦めていたので買ってみたと記憶してます。)
起業系の本としては意外に薄く、読みやすいのが特徴ですが、重要なポイントをしっかりと抑えられているのが印象的な本です。
特にいろいろ考えさせられたのは「起業家」と「職人」と「マネージャー」の3つの視点。
自分ひとりの時には上手くいったのに人が増えると急に上手くいかなくなるというビジネスの初期の立ち上げの難しさの原因を、分かりやすく教えてくれます。
起業を志す人にはお勧めの本です。
ちなみに、最近逆に気になっているのは、独立という選択肢を取る人が増えていること。
個人規模での独立であれば、あくまで自分の「職人」としての価値に自信があれば良いわけで、インターネットを使えば上手く個人でもスケールできるWeb2.0時代には、あえて起業家的な拡大ベンチャー志向ではなく、職人としてのマイクロビジネスという選択肢も増えてくるような気がします。