安易にペイパーポストには手を出しちゃダメだと思う 11の理由

 さて、予想外に先週から継続されることになっている、ペイパーポスト関連の重い記事シリーズですが。
 私が過去の記事で、できるだけ中立に記述しようとしていたために、私をペイパーポスト推進派と勘違いしている人もおられるようなので、ここで明確に私が、一ブロガーとして、いわゆる不特定多数を対象にしたペイパーポストは「ナシ」だと思っている理由を書いておきたいと思います。
 長文で読みづらいという苦情も頂いているので(汗)、今回は箇条書きを試みてみます。
 (でも、お察しの通り以下長文注意です)
 
【非開示ペイパーポストの場合】
 まず、先日の「GoogleのPayPerPost騒動の議論に思うこと」にも書いたように、個人的にそもそもNGだと思っているのは、ブログの記事中で報酬の開示を義務づけていない非開示ペイパーポスト。
 再掲になりますが、整理するとNGだと思う理由は以下の4つです。
■報酬の有無を隠すことは、やらせ記事ととらえられる
 そもそも記事を書くこと自体に、金銭報酬があるのであれば雑誌やニュースサイトの記事広告同様、その記事がメディア側の興味からではなく、企業の報酬をきっかけに書いていることを開示する義務があるはずです。
 企業からお金をもらっているにもかかわらず、それを隠して他の人に製品を推奨することは、極端に言うと企業から買収されているのに近く、読者から見るとあきらかにやらせ記事になってしまうと思います。
■利用者にやらせ行為を推奨することは、より深刻な問題である
 記事広告を記事広告と明記するという倫理の問題は、実際には、一部の雑誌やニュースサイトではなし崩しになっているという話もあり、それと比較してマスメディアと同じという人がいます。(実際米国のPayPerPostの人も言っていました。)
 ただ、上記の例は主体となるメディアが「企業」であり、自らの知識の元にリスクを取っているといえますが、ペイパーポストの場合は「不特定多数の個人」にやらせ行為を推奨するという意味で、単純な非開示の記事広告より、更に問題だと考えています。一部の事業者は「利用者に開示の判断を任せる」というポリシーを取っているようですが、個人的にはプロの企業が素人に責任を押しつけているように見えてしまいます。
(米国のFTCでも「プロダクトの口コミによるプロモーションを行い、口コミを行った人が口コミ料を報酬として受け取る方式の マーケティングを行う企業は、その旨を明らかにしなければならない」という意見書を発表しています。)
 
■企業側に炎上リスクがある
 さらに、仮に上記の倫理上の問題がもし無視できたとしても、マーケティング上も炎上のリスクがあります。
 企業が、ブロガーに金銭的報酬を支払い記事を書かせ、そのことを隠していた場合、当然利用者がそのことを良く思うわけはありません。
 今回のGoogle Japanの騒動は、開示型のペイパーポストですし、Googleの自社ルールに抵触していたという話ではありますが、非開示のペイパーポストの利用が悪い形で判明した場合には、他の企業でも同様かもっと悪いトラブルになるケースも否定できません。
■書き手側にも炎上リスクがある
 金銭的報酬があることを隠して、ブログに記事を書いた場合、炎上の対象になりうるのは企業だけではなく、ブログの書き手も同様です。
 テレビのように電波というチャネルを持っている媒体であれば、あるある大辞典のようなやらせ騒動があっても、視聴者がそのチャンネルを二度と見なくなると言うことはほとんどありませんが、ブログの場合読者と書き手をつないでいるのは「信頼」だけです。その信頼を失ってしまったら読者を失う可能性は高いでしょう。
 日本でも、NHKに取り上げられた 女子大生のブログが炎上したケースがありました。
 上記のように、非開示ペイパーポストについては、そもそも倫理的にNGだし、マーケティング的にもリスクが大きすぎるのではないか、というのが私の考えです。

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Google Japanの再謝罪に改めて思う、過ちを認めることの大切さ

 連日続いている重い長文エントリーシリーズ。
 今日は、開示型ペイパーポストはマーケティング倫理上はアリだとは言っても、私自身はペイパーポストはナシだと思っている、という話を書こうかと思っていたのですが。
 今回の長文シリーズのきっかけになったいわゆる「Google PayPerPost騒動」で、本日嬉しい展開がありましたので、そちらを軽くご紹介したいと思います。
 詳細は下記のエントリーを見て頂ければと思いますが。
Google Japan Blog: Google.co.jp のページランクを下げた件について
googleJapan_ppp.jpg
 Google Japanの公式ブログで、再度、今回の騒動についての謝罪エントリーがアップされたのです。
 個人的にも先日のエントリーに「是非、今後修正なり追記なりがされることを祈っております」なんて書かせて頂きましたが。
 正直なところを言うと、既に一度謝罪を書かれてしまっているし、外資系企業としてはこのあたりが限界なのかなーと勝手に思い込んでしまっていたのもあり、今回の重ねての謝罪エントリーには驚きました。
 前回の謝罪文で「プロモーション活動の一部でブログを活用したことが、Google のサーチに関するガイドラインに違反することが判明」と誤解を生みやすい表現だったのが、今回は「過去に行った iGoogle 等のプロモーション活動の一環で、このガイドラインに違反する有料リンクとみなされる行為を私たち自身が行っていたことが判明しました。」と詳細に説明されており。
 さらに、Webmaster Central 日本版公式ブログにおいて「有料リンクについて」という詳細の解説記事を同時に掲載する念の入れよう。
 こちらでは、「今回問題となった google.co.jp への有料リンクは、ブロガー達に対価を払うことにより紹介記事を書いてもらういわゆる Pay Per Post ネットワークからのものでした。」とか、「いわゆる Pay Per Post ネットワークに参加する場合には、その記事に対して対価が払われていることを、ユーザーに対してわかりやすく表記するべきと考えます。」とか、具体的に今後のペイパーポストネットワーク参加ユーザーに対する注意を促しています。
 これで日本におけるペイパーポストサービスの野放図な状況にも、ひとつ大きなくさびが打ち込まれそうな印象もあり、2006年から非開示ペイパーポストを中心とするやらせブログ問題の解決を祈ってきた人間としては、非常に嬉しい出来事なのですが。
 まぁ、その話は別途書くとして。
 個人的に今回ちょっと感動したのは、前述のポストの下記の部分。
 「また、ユーザーの皆様やネットコミュニティーの方々には、叱咤激励のお声をいただき、ありがとうございました。」
 もちろん、何の変哲もない一文ですし、私の過大解釈かもしれませんが、単に「ユーザーの皆様」だけで済むところを、わざわざ「ネットコミュニティーの方々」と入れたのは、自分たちはネットコミュニティーの声を聞いているよ、という宣言とも受け取れますよね。
 正直、今回の騒動で、Google Japanの方が、日本のネットコミュニティに対するコミュニケーションを閉ざしてしまうのではないかとちょっぴり恐れていたので、なんだかほっとする一文でした。
 
 当然、今回の騒動については、本国の強い指導というのは大きいでしょうし、前回の謝罪文の内容や、前回の謝罪文から今回まで間が空いたことなどもありますから、まだまだ斜めに見る方も多いようですが、外資系の企業において、本国と調整しながら文章を修正していたであろう事などを考えると、今回のGoogle Japanの方々の対応は、あらためてさすがGoogleと感じさせる対応だったと言って良いのではないかと思います。
 やはり大事なのは、間違っていたら間違っていたと認めて、素直に謝罪することですよね。
 この教訓は、個人的にも、AMNとしても、忘れないようにしたいです。
 さて、あとはこれにサイバーバズさんが続いてくれて、来週の木曜日のWOMマーケティング研究会で、皆さんと生産的な議論ができることを期待したいと思います。
明日(というか今日)2月19日(木)12時が締切りですので、興味がある方はお早めにどうぞ

「強制視認効果のないバナー広告、効果測定難しいテレビCM」を日経NMに投稿しました。

nikkeinetmarketing_logo.png 日経ネットマーケティングで連載を行っているコラム「カンバセーショナルマーケティングの近未来」に新しいコラムを書きました。
 今回も、前回に引き続き、私なりのAISASの考え方の話を書いています。
 不明点や不足点等ありましたら、記事の方でもこちらのブログでも遠慮無くご指摘下さい。
強制視認効果のないバナー広告、効果測定難しいテレビCM:日経ビジネスオンライン
「前回までのコラムでは、インターネットならではの典型的な広告サービスともいえる検索連動型広告とアフィリエイトプログラムが、従来の広告の役割と考えられている「Attention(認知)」の獲得には向いていないという話を紹介しました。
 今回は、インターネット広告の中でも歴史の古いバナー広告について考えてみたいと思います。 」
※このコラムでは、先日公開したカンバセーショナルマーケティングの講演資料でまとめた話の掘り下げだとか、実際にソーシャルメディアを活用したマーケティングを実践する際のステップなどを書いていければと思っています。
nikkeinetmarketing_banner.png

WOMマーケティング協議会の率直な現状について書いておきます

womj_logo.png 今日は、非常に感動する体験をさせて頂いたので、そっちの話を書きたいのはやまやまなのですが。
 ちょっと、以前書いたWOMマーケティング協議会に関して、いろいろと誤解があるようなので、そちらの話を書いておきたいと思います。
 まず、最大の誤解だと思うのは、WOMマーケティング協議会の今のフェーズ。
 私も面倒くさいのでWOMマーケティング協議会と略してしまっているのが悪いのですが、WOMマーケティング協議会という組織はまだ存在していません。
 
 現在存在するのは、WOMマーケティング協議会設立準備会という言い訳のような長い名前の組織で、この組織は「日本にもWOMマーケティング協議会が必要だよね」という人たちに集まってもらうために立ち上げた、いわばあえて悪い言い方をすると宣伝バルーンみたいなものです。
womj_site.png
 現在発起賛同人に応募頂いた方は、時差はあるものの基本的には全員リストに追加させていただく方向で対応していますし、何らかの詳細な審査をしているわけでもありません。
(当然、正式に団体化する際に、会員登録や審査等の手続きが発生することになると想像しています)
 そう言う意味では、現在のWOMマーケティング協議会のサイトの参加一覧は、純粋に「日本にもクチコミマーケティングを考える組織が必要だと思う」ということに賛同頂いた皆さんのリストになっています。
 
 で、現在の世話人というのも、残念ながら発起賛同人の方々に選んで頂いた存在ではなく、たまたま「日本にもWOMマーケティング協議会が必要だよね」という議論をしていた際に、事務を手伝っても良いと手を挙げた人たちでしかありません。
 つまり、現在のWOMマーケティング協議会設立準備会というのは、日本にどのようなWOMマーケティング協議会が必要なのか、実際にどういうことをやるべき組織なのかというのを議論するための組織であり、まだ実体は何もないのです。

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ペイパーポストかどうかが問題ではなく、読者にどう受け止められるかが問題だと思う

 先日、GoogleのPayPerPost騒動の長文のエントリーで、言いたいことを全部書いて肩の荷がおりた気でいたのですが。
 前の記事にトラックバックを頂いて知ったのですが、残念ながらサイバーバズさんのところで別の騒動に飛び火しているようですね。
 そもそものきっかけは、サイバーバズさんがプレスリリースで、自社のサービスがペイパーポストではないと否定したところから始まっているようです。
cyberbuzz_press.png
 私自身、先日の記事で、「サイバーバズさんのサービスは同じPayPerPost(記事単位で謝礼を支払う)サービスでも、記事にサイバーバズの企画であることを明示させているという点で、PayPerPostサービスの中では比較的倫理的な意識の高いサービスというのが個人的な認識」と書いていることも、騒動の一翼を担ってしまっているようですので、ここの整理からしたいと思います。
(またもや長文注意です・・・すいません)
 個人的にはペイパーポスト(Pay Per Post)は、単純にペイパークリック(Pay Per Click)やペイパービュー(Pay Per View)と同じ英単語として捉えており。
 ペイパークリック=クリックに応じて料金を支払うこと
 ペイパービュー=視聴に応じて料金を支払うこと
 
 と同じく
 ペイパーポスト=記事に応じて料金を支払うこと
 と理解しています。
 まぁ、個人的には「ブログ記事広告サービス」と呼びたいのですが、いわゆるGizmodoとか田口さんがやっているブログメディア系の記事広告とごっちゃになってしまうので、ペイパーポストと言い続けている次第。
 そう言う意味では、サイバーバズさん自身は「記事掲載に対する対価として金銭の支払いは推奨しない」とリリースで否定されていますが、トラックバックで頂いた記事にも書かれているように、FAQで記事を書くことに謝礼を支払うと明記されていたなど、広い意味ではペイパーポストに分類されるのが自然なのではないかと思っています。
 
 細かい話を言うと、おそらくサイバーバズさんからすると、今回のGoogleさんの案件はブログパーツ広告だったということなのでしょうが、例えば、単純にブログパーツを広告として掲載する場合には、当然クライアントは表示位置や表示回数、表示期間を設定するはずですが、サイバーバズさんの案件は掲載位置は自由のようですし、記事内(ブログの全体よりも明らかに表示数が少なくなる)だけでも良い印象があり、掲載期間等も指定が無いようで、いわゆるバナー広告的なブログパーツ「広告」とは種類が違うように思います。
 
 その代わりに、参加者の皆さんの記事を見ている限りではブログでの記事紹介とセットになっている印象が強いですから、ブログパーツ掲載+記事執筆で謝礼が支払われるという意味で、これも広い意味でのペイパーポストと言えると思います。
 ざっくり言ってしまうと、記事執筆にブログパーツ掲載が追加されているだけに見えるわけです。
 この点については、AMNでブログパーツシーディングを開始する際に、パートナーブロガーの方々とかなり密な議論を行い厳しいご指摘もいただいた結果、上記のような結論に至っていますが、あくまで私の個人的な認識ですので、一般認識や事実と間違っているようであれば、修正をさせていただきたいと思います。
 ただ、今回Googleが自ら、サイバーバズのサービスを活用してキャンペーンを行ったGoogle Japanのページランクを下げるという形で罰したように、サイバーバズさんのサービスがGoogleの定義の中でも広義のペイパーポストとして認識されてしまったのは、否定できないと考えています。
 この点については、サイバーバズさんとGoogle Japanさんとの間の話し合いがどのようにされたのか分かりませんので、結果から類推しているだけです。
 ブログを活用したマーケティング事業者としては、今後の境界線のためにもそのあたりの議論が何らかの形で開示されることを期待しています。
 さて、ここからようやく本題に入るのですが。
 個人的には先日の記事にも書いたように、ペイパーポストであること=マーケティング手段として悪い、という話ではないと考えています。

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ブランディング22の法則 (アル・ライズ/ローラ・ライズ)

488497073X 「ブランディング22の法則」は、先日ご紹介したマーケティング22の法則のアル・ライズとローラ・ライズが、ブランディングの基本的な法則についてまとめた書籍です。
 昨年購入して読んでいたのですが、読書メモを書いてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 ブランディングというと人によってイメージするものが違うというのが、なかなか難しい点だと思いますが、ブランディングの基礎をもう一度ちゃんと整理したいという人にはお薦めの本だと思います。
【読書メモ】
■拡張の法則:ブランドの力はその広がりに反比例する
 顧客はブランドの範囲が狭く、ただ一語で識別できるブランドを望む。
■収縮の法則:フォーカスする時、ブランドは強力になる
■パブリシティの法則:ブランドが誕生するのは広告ではなく、パブリシティによってである
■広告の法則:いったん誕生したブランドは、その健康を維持するために広告を必要とする
1・新しいカテゴリーの導入
2・新しいカテゴリーを開発した企業の急成長
3・語るべきニュースがなくなった時こそ広告の出番
■言葉の法則:ブランドは消費者の頭の中に自分の言葉を所有する努力をすべきである
 「市場のサイズはどのくらいだろうか」という発送が誤りの始まりである。「ブランドの焦点を絞り消費者の頭の中にひとつの言葉を所有することによってどれだけの市場を創造することができるだろうか」と問いかけるのが正解になる

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