「グランズウェル」は、米国においてソーシャルメディアの専門家として非常に有名なシャーリーン・リーが書かれた書籍です。
翻訳をされた伊東さんに献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
事例も抱負で、体系だってまとめられているので、ブログを始めとするソーシャルメディアを活用するマーケティングに興味がある方にはバイブルになる可能性がある本だと思います。
オススメです。
個人的にも、これまでカンバセーショナルマーケティングという言葉で表現しようとしていた世界感が、この本にしっかり整理されていると感じているので、来年はこの本を参考に日本向けのグランズウェル的アプローチを真剣に考えたいと思います。
【読書メモ】
■ストライサンド効果
インターネットからコンテンツを削除しようとして、逆に広めてしまう現象
■グランズウェルを生んだ3つの力の衝突
・人間
・テクノロジー
・経済学
■ファストレーンは、GMのコミュニケーションを一変させた
業界紙や高額なテレビCMだけが、顧客、ディーラー、従業員、投資家にメッセージを伝える方法ではない。GMは、彼らに直接語りかけるチャネルを手に入れたのだ。
■ソーシャル・テクノグラフィックス・プロフィール
・創造者(Creators)
・批評者(Critics)
・収集者(Collectors)
・加入者(Joiners)
・観察者(Spectators)
・不参加者(Inactives)
■グランズウェル戦略の4段階のプロセス「POST」
・人間(People):顧客は、どんなテクノロジーを使う傾向があるのか
・目的(Objectives):ゴールは何か
・戦略(Strategy):自社と顧客の関係をどう変えたいのか
・テクノロジー(Technology):どんなアプリケーションを構築すべきか
■グランズウェル戦略の5つの目的
・傾聴戦略:顧客理解を深める
・会話戦略:自社のメッセージを広める
・活性化戦略:熱心な顧客を見つけ、彼らの影響力を最大化する
・支援戦略:顧客が助け合えるようにする
・統合戦略:顧客をビジネスプロセスに統合する
■グランズウェル戦略へのアドバイス
・小さく始める
・グランズウェル戦略がもたらす戦略を考え抜く
・高い地位にいる人物を責任者に据える
・テクノロジーの選択とパートナーの選択は慎重に
カテゴリー: 読書メモ
情報革命バブルの崩壊 (山本一郎)
「情報革命バブルの崩壊」は、切込隊長BLOGでお馴染みの山本一郎さんの書籍です。
献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
金融危機がインターネットに与える影響だとか、来年以降のネット業界の課題とか可能性とかが気になる方には、参考になる点が多い本だと思います。
【読書メモ】
■情報革命の本質とは、情報そのものが増えたわけではない。情報へアクセスする方法の効率が良くなっただけである。
■ネット社会における価値は「情報」と「名声」によって集約され、価値のある情報がもたらされる島や、社会的に知見の高いとされる名声がある島は大きくなり、多くのネット人口を養う。一方、ある情報の価値というものは、その特定の分野に関心を持っている人においてのみ高まり、関心のない人は見向きもしない。
■ネット社会が一般人の購買に強い影響力を与えていることはマーケティング上多くの事例を蓄積する中で分かりつつあるが、一方で多くのネット上の工作、煽動の技法の確立という悪しき側面も見受けられるようになった。
■ネットの元から持つアングラ的なスキルや方法論が、そのままネット社会の成長と共に現実社会の消費行動に大きな影響を与え始めている。
■ソースロンダリング
ネット内でちょっとした揚げ足取りのような議論をわざと湧かせ、問題であるとネット内で批判の火をつけようとし、ある程度コメント数が揃ったところでJ-CASTに代表されるネット内メディアやZAKZAKなど夕刊紙のサイトでネット内のトピックスとして取り上げることから、社会的な炎上は始まる。
■ネット内でなぜバッシングが起きやすく、現実社会に対して批判的な言論が成立し支持されやすいのか
・ネットでのこれらの言論や風評を、具体的な検証なしに鵜呑みにする程度の社会知識しかない人がネット社会での議論で声が大きいこと
・既存のマスコミがネットに進出する過程で、ネットから情報を拾って書かれる記事が急増したこと
・私たちは私たちの見知った、専門とするもの以外は、情報の真贋など判断がつかず、自分の関心領域から外れたものの価値は、過大評価するか過小評価するしかできない、という点
■情報化社会は国民の総専門家化を促すものであり、一人の人間が持つ情報量に限りがある以上、社会にいる人間同士が価値観や考え方を共有したり相互理解することの妨げになりかねない。しかも、これを押し止めることはできない。
■我が国でも場合によってはネットの無料文化自体をどう収束させ、適正な費用をユーザーから徴収し、ネット業界全体で按分していくべきかという議論は政策レベルで為されなければならないだろう。
■ネット界隈が一般社会の価値観や秩序の枠組みに取り戻され、普通の社会の延長線上にネットがあるのであって、ネットが必ずしも「あちら側」の踏み進むべきフロンティアとは限らない、ということを、良く理解するべきだと考えるのである。
■この世界間の競争に自分たちが不利とならないよう、どのようなルールを加えるべきか、どうすれば加えられるのか、それを学ぶことこそが、混乱期を乗り切るもっとも重要なエッセンスにほかならない。
仮想コミュニティがビジネスを創りかえる (ワグナー・ジェームズ・アウ)
「仮想コミュニティがビジネスを創りかえる」は、セカンドライフの立ち上がりからブームまでの歴史を、その渦の中心にいた方の視点から書かれた書籍です。
監修をされた滑川さんから献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
セカンドライフブームが、一過性のバブルに過ぎなかったと思っている方には、目から鱗な非常に刺激になる点が多い本だと思います。
【読書メモ】
■セカンドライフを特徴付ける3つの原理
・ビーバップ・リアリティ
基本となる物理法則とアイデンティティを住人が自由に変えてしまえる世界
・感銘社会
セカンドライフでは有機的な創造性と長期的な影響力を基準として文化的、経済的、社会的な貢献の評価が行われる。
・両面的な繁栄
セカンドライフへ貢献すれば現実世界側の生活にもよい影響が生まれるし、その逆もまた真であるはずだという信念を表す言葉。
■モノ作りがリンデン・ワールドの中心だったわけではない。もともとは破壊的なアバターと岩食い鳥からゲームに持っていこうとしていたのだ。
■ユーザー参加型コンテンツについてのソクラテス式問答
「モネの絵と子どもが指で描いた絵を持っていたら、どっちを家に飾りますか?両方でしょう?その背景にあるものが大事なんです。」(ハンター・ウォーク)
■真のユートピアとは統一的なルールのセットによるものではなく、ユートピアに対するさまざまな考え方(対立する考え方も多い)が併存できるほどオープンな個人の自由を尊重するリバータリアン的な状態
■「労働の恩恵を労働者自身が受け取れる必要がある。つまり、所有権と金銭的報酬、両方を受け取る必要があるのだ」(ロビン・ハーパー)
■仮想通貨には奇妙な魅力があり、住人は、現実よりも高い価値をリンデンドルに見出すのだ。
■ブログをはじめとするネット系の交流と異なり、仮想世界は第四の壁を越える力を持つ。媒体と参加者を隔てる壁をなくし、今までそのような気になりにくかった媒体に参加しようという意志をもたらす。
■メタバースのグーグル化
革新的ソフトウェア企業の作り方 (エリック・シンク)
> 「革新的ソフトウェア企業の作り方」は、ソフトウェアの起業家として知られるエリック・シンクのブログをまとめた書籍です。
献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
個人や少人数でウェブサービスやソフトウェアを開発しているエンジニアの方には、参考になる点が多い本だと思います。
【読書メモ】
■製品を作る上での3つのルール
・あなたの製品は、1つ大きな点で違っている必要がある
・あなたの製品は、完全に違うものであってはならない。
・エキサイティングであることと収入とはしばしば逆相関している
■マイクロISVの製品開発のポイント
・あまり大きく始めない
・まだ仕事は辞めない
・複数人いる振りをしない
・集中の法則を忘れない
・広告に金を使いすぎない
・ユーザーを煩わせない
■キャリアの成功の方程式 C=G+LT
Cは実力(Cluefulness)
Gは素質(Gifting)
Lは学習(Learning)
Tは時間(Time)
コントロールできるのはLの値のみ
■ポジショニングのポイント
・ポジションの記述はほとんどの場合何らかの最上級を含んでいる
・ポジションはマーケットが製品に対して付けるラベルを記述する
・ポジションは製品をそのように見る人のグループが正確に何かを定義する限定詞を含む。
■明確なマーケットがあるものを作るほうが成功する見込みは高いと思う。
そして競合を賢明に選ぶことで成功の見込みはさらに高くなる。
■ISVが透明性によって顧客に信頼を示す8つの方法
・ブログを書く
・Web上に掲示板を用意する
・製品の持つ問題を隠さない
・正直な人々を煩わせない
・簡単にダウンロードして使える試用版を用意する
・返金保証を提供する
・財務状況について少し知らせる
・将来の計画について話す
■反応的セールスは、私たちが自分の側の役割を果たしていれば、とてもよく機能する。
・積極的セールスでは、セールスガイが主導する。
・反応的セールスでは、顧客が主導する。
抜擢される人の人脈力 (岡島悦子)
「抜擢される人の人脈力」は、株式会社プロノバCEOでヘッドハンターをされている岡島悦子さんの書籍です。
献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
自分の将来のキャリアであるとかヒューマンネットワーク構築であるとかを真剣に考えたいという人には、参考になる点が多い本だと思います。
【読書メモ】
■「人脈スパイラル・モデル」五つのステップ
・自分にタグを付ける:自分が何屋なのか訴求ポイントをはっきりさせる
・コンテンツを作る:「お、こいつは」と思わせる実績事例を作る
・仲間を広げる:コンテンツを試しあい、お互いに切磋琢磨して、次のステップを共創する)
・自分情報を流通させる:何かの時に自分のことを思い出してもらうよう、種を蒔く
・チャンスを積極的に取りに行く:実力以上のことに挑戦し、人脈レイヤーを広げる
■多種類の「タグ」を作成しておいて、場や相手の状況を見ながら、時にはユーモアも交えて「タグ」を披露する
■人脈のパラダイム・シフト
・企業の組織寿命が短命化し、個人のビジネス寿命の方が長くなる
・組織は、定常的組織から、プロジェクト型組織へと移行する
・人は、クリティカル・ワーカーとルーティン・ワーカーに二極化し、ルーティン・ワーカーの仕事はグローバルな労働力に代替される
・リファレンス文化が普及し、所属組織名での評価から、個人の実績や仕事ぶり重視へと、評価の質が変化する
■ビジネスに必要な心配機能を高める方法
・「脳に汗をかく」くらい頭を使う
・ビジネス上の修羅場を経験する
・自分の名前で仕事をする
■「勉強会をやるときは、幹事という面倒なことを引き受けたほうがいい。なぜなら、ノウハウや情報、人とのつながりはすべて幹事に集まってくるものだから。」(堀義人)
■人脈力におけるブログの二つの効果
・多くの人に”リマインド効果”を与えられる
・自分が何者かを示す”レジュメ”になる
■行動に制限を掛けられるのは「責任を果たす能力がない」と見られているから
■目の前の仕事に打ち込んでいない人のところにはチャンスはやってきません
アーキテクチャの生態系 (濱野 智史)
「アーキテクチャの生態系」は、Wired Visionの濱野智史の「情報環境研究ノート」 でもお馴染みの濱野 智史さんが書かれた書籍です。
献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
日本のインターネットならではの特徴や可能性について理解したい方には、刺激になる点が多く含まれている本だと思います。
【読書メモ】
■「検索エンジンは、的確な検索結果を導き出すためにリンク構造を利用している。このため、適切なタイミングで、大量のリンクを生み出すブロガーは、検索結果の生成に重要な役割を果たすようになっている。また、ブログ・コミュニティはきわめて自己言及的であるため、ブロガーが他のブロガーに注目することで、ブロガーの存在感と力は増幅していく。」(ティム・オライリー)
■ネット上にいかにして<都市空間>をつくるのか
西村氏のネットコミュニティの設計思想は、初めは本来自由に人々が集まって作られたウェブ上の「アソシエーション」が、時が経つにつれて排他的で閉鎖的な「コミュニティ」へと変質することを避ける、という点に主眼が置かれています。
■個人主義・集団主義ではなく信頼社会/安心社会(山岸俊男氏)
・信頼社会(米国)
人的流動性の高い社会では、不確実な環境の中でも、よりよい交渉や協働のための相手を探すために、まずは見知らぬ他人の信頼度を高く設定しておいて、いざその相手が「信頼」にたる人物かどうかを、後から細かく判断・修正するほうが効率的。
・安心社会(日本)
人間関係があまり流動しない状態では、自分が所属する集団に対する「内輪ひいき」をして、「内輪」を裏切らないでいることが、結果的には合理的になる。
■グーグルからの逃走を実現するアーキテクチャ
ミクシィというSNSは、雑多で猥雑なウェブ空間から「隔絶」したアーキテクチャとして人々の目の前に登場したのです。
■アーキテクチャを通じた規制方法
「盗撮はシャッター音が必ず鳴るので物理的に無理」
■ツイッターの時間的な特徴は「選択同期」
■ニコニコ動画は「疑似同期」
■セカンドライフは「真性同期」
■「真性同期型アーキテクチャ」<後の祭り>を不可避に生み出してしまうシステム
「疑似同期型アーキテクチャ」<いつでも祭り中>の状態を作り出すことで、閑散化問題を回避するシステム
■ニコニコ動画は、ユーチューブよりも、もっと直接かつ強力に「繋がりの社会性」を実現するためのアーキテクチャとして生まれてきた
■ニコニコ動画特有のインターフェイスこそが、本来であれば<主観的>なものになりがちなコンテンツの評価基準を、<客観的>と呼べるレベルに引き上げる効果を発揮していたのではないか
■ケータイ小説のユーザー(著者&読者)たちは、ほとんど<客観的>と呼べるほどに明かなコンテンツの評価基準を共有していた。だからある一時期のケータイ小説作品は、よくいわれるように、どれをひもといても「恋空」のようなワンパターンな物語展開を見せていた。
■操作ログ的リアリズム
ひたすらにケータイというメディアにどう接触し、操作し、判断し、選択したのかに関する「操作ログ」を描くものである
■フリードリヒ・A・フォン・ハイエクは再帰的リバタリアニズム
機能的には、市場という「自律・分散型」の情報通信システムの性能を評価しつつ、歴史的には、その「偶然性=自然成長性」としての側面を認める
■どれだけ匿名性がある種の理念から見て規範的に「悪」とみなしうるとしても、多くの日本のネットユーザーにとって、匿名的身分が「合理的」なものとして選択されている以上、それを頭ごなしに否定する主張は、端的に無意味なのである(西村博之氏)
■そもそも私たちは、米国的なインターネット社会のあり方を唯一普遍のものとみなす必要はない
■日本特殊の現象に見えた「繋がりの社会性」が、世界的に拡散しつつあるように見えてきます。
■私たちは、社会全体に浸透するに至ったアーキテクチャの設計と進化を通じて、日本社会のあり方そのものを書き換えていくことすら、不可能ではないはずです。