凡才の集団は孤高の天才に勝る「グループ・ジーニアス」(キース・ソーヤー)

4478004099 「凡才の集団は孤高の天才に勝る」は、いわゆる集合知について考察されている書籍です。
 気になったので買って読んでいたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本で考察されているのは「グループ・ジーニアス」というグループゆえに生まれる天才的発想というコンセプト。
 個人的にも「クラウドソーシング」や「ウィキノミクス」のようなコンセプトが非常に好きなのですが、この本ではそういったツールの視点ではなく、集団によるコラボレーションの可能性を軸に、具体的なポイントを考察されています。
 「みんなの意見は案外正しい」や、「「多様な意見」はなぜ正しいのか」、「ヒトデはクモよりなぜ強い」といった書籍が好きな方には断然おすすめです。
【読書メモ】
■孤高の天才などというのは神話にすぎない。画期的なイノベーションを生み出すのは、グループゆえに生まれる天才的発想「グループ・ジーニアス」なのである
■創造性を発揮するチームの7つの特徴
1.時間をかけてイノベーションを生み出す
2.「ディープ・リスニング」を実践する
3.コラボレーションから生まれるアイデアを積み上げる
4.個々のアイデアの重要性は、閃いた時点ではわからない
5.問題を発見する
6.効率を追わない
7.現場を重視する
■台本思考
 現実に起こっていることを直視せず、自分の予想の範囲内で考えてしまう傾向


■イノベーションは、現場から意表を突く形で即興的に生まれてくる。そうしたイノベーションが生まれて初めて、何が起こっているのか気づくことが多い。
■フロー状態に入りやすい環境(チクセントミハイ)
・自分の技量に見合った挑戦的な仕事に取り組んでいること
・目標が明確であること
・その目標に自分がどの程度まで近づいているのか、その反応が即座に、また恒常的に得られること
・その仕事に完全に没入できる環境にあること
■グループ・フローを生み出す10の条件
・適切な目標 ・深い傾聴 ・完全な集中 ・自主性 ・エゴの融合 ・全員が同等 ・適度な親密さ ・不断のコミュニケーション ・先へ先へと進める ・失敗のリスク
■数十年にわたる研究でも、ブレインストーミングを実施しているグループよりも、同じ数の人びとが独力で考えたほうが、はるかに多くのアイデアが蓄積されるという結果が繰り返し出ている
■ブレインストーミングが創造性が低くなる3つの要因
・生産性の阻害
・社会的抑制
・社会的怠惰
■最も創造性に溢れた驚くべきアイデアは、それぞれ異なる知識を持つ者同士の結びつきから生まれる(メディチ・インパクト)
■作家のコラボレーション
 「指輪物語」と「ナルニア国物語」は、独りで仕上げたものではない。孤高の天才の手がけた作品ではなく、前述のとおり、コラボレーションに満ちたサークルで展開された物語なのである
■閃きが起こる5つの基本プロセス
・準備 ・中断 ・閃き ・選択 ・錬磨
■成功するイノベーターは自らの失敗に学ぶ。ダーウィンの失敗に終わったアイデアも、発明にいたる長い鎖の決定的な環となっていた。
■創造力の核となる4つの頭脳プロセス
・概念転移 ・概念結合 ・概念精緻化 ・概念創造
■最もイノベーティブな企業は、一事業部門の社員を400人を下回る数に抑えている。また、進化論の専門家は、私たちのDNAには、150人程度のグループ規模がプログラムされていると断言する
■コラボレーションを促進する組織への10の秘訣
・常に手を広げよ 
・「サプライズ部門」を創れ
・創造的な会話が交わせるスペースを設けよ
・アイデアを思いつく時間的ゆとりを設けよ
・即興がもつリスクを乗り越えよ
・混乱に陥る手前ぎりぎりの即興を試せ
・知識を活用してイノベーションを起こせ
・緊密なネットワークを築け
・組織図を捨てよ
・最適なイノベーションかどうか、見極めよ
■問題は研究開発費の概念そのものにある
 もし「研究開発」と呼ばれるグループから、すべての新しいアイデアが出てくるものと期待しているとすれば、その企業は、いまだに創造力に関する古めかしい直線的モデルを使っているということだ。
■イノベーションの潜在能力を推し量る方法
・小さな試験的プロジェクトに費やす時間の割合(上限は勤務時間の20%)
・プロジェクトが完了するまでの平均的な時間(短いほどよい)
・組織がどれほど失敗を歓迎し、その功労に報いているかを検証すること
■コラボレーション・ウェブの5つの特徴
・個々のイノベーションは、過去から続くイノベーションの歴史の上に徐々に築かれる
・成功するイノベーションは、多くの小さな閃きが組み合わさって生まれる
・コラボレーション・ウェブのなかでは、チーム同士の頻繁な対話が行われる
・コラボレーション・ウェブのなかでは、同時並行的な発見は珍しくない
・ウェブを独占できる企業はない
■今も広く引用されている研究で、この結果、500件のイノベーションのうち、5分の4は、ユーザーの提案、あるいはユーザー自身が実際に考案したものであることが判明した
■アイデアマーケット
・NineSigma(P&G創設)
・InnoCentive(イーライリリー)
・TechEx
・YouEncore
・Yet2.com
■変革すべき制度上の側面7つ
・著作権の保護期間を短縮する
・小さな閃きに報いる
・モディングの合法化
・従業員を自由に活動させる
・特許権の使用許諾を義務化する
・特許をプールする
・産業規模の標準化を推進する

4478004099 凡才の集団は孤高の天才に勝る―「グループ・ジーニアス」が生み出すものすごいアイデア
金子 宣子
ダイヤモンド社 2009-03-06

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