スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション (カーマイン・ガロ) は、ジョブズやアップルがあまり好きじゃないという方こそ読むべき本だと思います。

4822248569 「スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション」は、「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」の続編となる書籍です。
 来週著者のカーマイン・ガロ氏の来日記念イベントのお手伝いをする関係で献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 前作は主にスティーブ・ジョブズのプレゼン技術やスタイルにフォーカスがあてられていましたが、今回そのテーマとなるのは「イノベーション」そのものです。
 日本では、「イノベーション」という言葉に馴染みがうすいこともあり、とかく新しいイノベーションは特許や新発明などの技術に依存すると思われる節も多くありますが、この本を読むとそうではなく、イノベーションが生み出される背景にあるのはビジョンや信念であると改めて感じます。
 特にこの10年間のジョブズしか知らない人からすると、彼の人生には挫折なんてないんだろうな、と思う人も多いかも知れませんが、彼が1985年にアップルを追放された経験がある、というのは忘れてはいけないポイントでしょう。
 その挫折や追放後の苦悩こそが、ジョブズの人生に新たな経験をもたらし、現在のジョブズとアップルのエネルギーになっている。そう考えると、私たち自身の挫折にもエネルギーをくれそうな気がしてきます。

 前回もちらっと書きましたが、この本もスティーブ・ジョブズやアップルをあまり好きじゃないからウォッチしていないという人こそ、学ぶべきところが多い本だと言えると思います。
 もし現在のアップル帝国の方針に疑問を感じていたり、対抗したり、追いつきたいのであれば、表面的な技術面だけコピーしてもダメだというのが、この本を読むと良くわかるはずです。
 
 
※ちなみに、来週の7月7日(木)に著者のカーマイン・ガロ氏の来日記念イベントのお手伝いをすることになりました。滅多に無い機会ですので、本を読んだことがないという方も是非お申し込み下さい。
『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』刊行記念 著者来日イベント
【読書メモ】
■「イノベーションと起業家精神に対するあこがれを、天才だけでなく、何百万ものアメリカの子どもたちに取り戻してもらう必要がある」(トーマス・フリードマン)
■スティーブ・ジョブズが基本とする7つの法則
・大好きなことをする(キャリア)
・宇宙に衝撃を与える(ビジョン)
・頭に活を入れる(考え方)
・製品を売るな。夢を売れ(顧客)
・1000ものことにノーと言う(デザイン)
・めちゃくちゃすごい体験をつくる(体験)
・メッセージの名人になる(ストーリー)

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LinkedInに学ぶ、Facebook時代のウェブサービスの生きる道。

 先日、デジタルガレージさんにご招待いただきLinkedInの日本担当の方との意見交換会に参加してきました。
 
LinkedIn Presentation
※LinkedInのユーザー数は1億人を突破。
 ターゲットは全世界の6.4億人のプロフェッショナルだとか。
 当日の詳細については、ネタフルに「LinkedIn日本展開に関するブロガーミーティング」という詳細のレポートが上がっていますので、そちらをご覧いただければと思いますが、個人的な感想をこちらにもメモしておきたいと思います。
 今回の会に参加する際の個人的な興味を正直に書くと、これだけFacebookがインフラ化してしまったインターネット上で、LinkedInははたしてどうやって生き残っていくのだろうか。という点にありました。
 特に、日本においてはFacebookがある意味ビジネスSNS的に大企業のビジネスマンにも広がり始めている印象があるというのもあり、正直な印象としてはLinkedInが攻めるべき層は既にFacebookに取られてしまっているのではないかと感じるところもあります。
 デジタルガレージさんがLinkedInとの提携を発表して話題になったのは先月の25日のことですが。
 多くの方は忘れておられる、もしくは全く知らないのかもしれませんが、デジタルガレージさんがLinkedInの日本展開支援をすると最初に発表したのは実は「2007年9月」。
 なんともう4年近く前の話になるわけです。
デジタルガレージ、米LinkedIn社の日本展開支援で基本合意
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 個人的には、当時LinkedInが日本語化されるのを興味深く待っていた利用者の一人だったので、この日本展開がいつまでたっても実行されず、がっかりした記憶があります。
 そう言う意味で、実は今回のミーティングではLinkedInの人とJoiさんこと伊藤穣一さんに、「今更日本語化って遅くないですか?」と、ひとくさり文句でも伝えようかな、ぐらいの気持ちがあったのは否定できません。
 ただ、今回のミーティングで、JoiさんのLinkedInに対する思いを聞いて、ちょっとその印象は変わりつつあります。

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分散型リーダーシップの実践 Xチーム (デボラ・アンコナほか)

4904336089 「分散型リーダーシップの実践 Xチーム」は、これからの時代の分散型組織の可能性について考察している書籍です。
 年末に花王の本間さんに勧められたので読んでいたのですが、書評抜き読書メモを書いたので公開させて頂きます。
 この本では、Xチームという、ネット時代ならではの外部と連携した組織のあり方が考察されていますので、従来の組織構造を新しく分散型に変える必要を感じている方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■ネット世代チームこそ、Xチーム
■Xチームの特徴
・外部活動:チーム外の活動にかなりの精力を注がなければならない
 ・偵察
 ・外交
 ・タスク調整
・超効率的執行:チーム内で高度に効率化した超効率的執行体制で一体化する
・柔軟なフェーズ転換:さまざまな局面を柔軟に取り込みながら、時間の経過とともにチーム活動を転換していく
 ・探索:周囲の世界を調べて、多数の選択可能性を吟味する
 ・開拓:1つの方向を決め、効率的な活動と実戦に向け組織的に活動する
 ・搬出:自分たちの業務が大きな組織の中で牽引力となるための努力に集中する

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独自性の発見 (ジャック・トラウト)

4903212254 「独自性の発見」は、「マーケティング22の法則」や「リ・ポジショニング戦略 」の著者でもあるジャック・トラウト氏が差別化について考察している書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本の原題は「Differentiate or Die」、直訳するなら「差別化か死か」とでもいうところでしょうか。
 この本では、商品やサービスをコモディティ化するのではなく、いかに差別化すべきかという点を深く考察されていますので、差別化の基本を学ぶための教科書的な本と言えると思います。
 先日ご紹介した「経験経済」もあわせて読むのをオススメします。
【読書メモ】
■「選択肢がありすぎて、おまけにすぐに何でも手に入れて楽しむことができるので、子どもたちは---おとなもですが---いつまでも幼児のままです。」
■差別化の程度、あるいは消費者にとっての意味
・コモディティ
・場所取り商品
・ブランド
・人物のブランド化
■マーケティング担当者がブランド力を構築するよりも希薄化する方向で動いている
・販促プログラムに頼りすぎている
・マーケティング担当者は広告会社の困った本能を抑えることができない
 ・チャネル変更の呪い
 ・クリオ賞の呪い
・経営コンサルタントは山ほどいるが、この問題に正しく切り込む者はめったにいない。

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ミニコミ2.0 (KAI-YOU編)

4990523512 「ミニコミ2.0」は、ミニコミ誌周辺の論客のインタビューや議論をまとめた書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、様々なメディア関係者のメディアの未来についての視点がまとめられていますので、ミニコミだけでなく、メディアの未来を考えている方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■僕らミニコミ誌の最大のアドバンテージが取り次ぎを通していない、直販にある(宇野常寛)
■雑誌って圧倒的に編集長ものなんです。
 ミニコミ誌の場合、友達と一緒に作るからどうしても合議制を取らざるを得ない。(速水健朗)
■あるものが潤沢化したときにはサブセットで、その隣接領域に新しい希少が持ち上がってくる(クレイトン・クリステンセン)(小林弘人)

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「経験経済(B・J パイン、J・H・ギルモア)」は、今だからこそ日本企業が考えるべきポイントを教えてくれる本だと思います。

4478502579 「経験経済」は、現在の企業間競争の本質の変化について考察した書籍です。
 昨年読んでいたのですが、先日海外の方との打合せに出てきて刺激を受けたのもあり、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、コモディティ、製品、サービス、そして経験へと、企業の差別化のポイントが時代とともにシフトしている点に焦点を当てています。
 私が読んだのは2000年に出された書籍が、2005年に再出版されたものになりますが、今読んでも古く感じることはなく、ソーシャルメディアが話題になっている今こそ、あらためて注目しなければならない書籍のように感じます。
 実際問題として現在の企業間競争においては、製品の機能はもちろん、サービスのレベルでも差別化が難しくなっているのが明らかな現状でしょう。
 そんな中、ディズニーランドやアップルのように、一見競合他社と同じ事業を行っているようで、利用者側からは全く違う企業として受け止められる、そんな経験を提供できる企業になれるかどうかが、明らかに選ばれる企業になるための条件になってきています。
 多くの日本企業は、どうしても高度経済成長期の成功体験から、価格競争や製品やサービスの機能競争に陥りがちな印象がありますが、中国や韓国など人件費の安い国の企業の台頭が目立つ中、もはやそのレベルでの競争に限界があるのは明白。
 そう言う意味で、日本企業が目指すべきは、この「経験」そしてその上にある「変革」レベルの戦いになるはず。
 今回の震災をきっかけに、世界に対して新たに「日本」というブランドをどのように位置づけていくかという話とセットで、今こそ改めて考え直すべきポイントのように思います。
【読書メモ】
■コモディティ化。この言葉が自社の製品やサービスに使われて喜ぶ企業はない。
■コモディティから製品、サービス、そして経験へと進化するのが経済価値の本質なのである。
■インターネットは、製品もサービスもコモディティ化する強力なパワーを持っている。昔ながらの商売に見られる人と人の関わりという要素の多くを取り除いてしまうからだ。
■経験ステージャー
 製品やサービスそのものではなく、それをベースに顧客の心のなかに作られる感覚的にあざやかな経験を提供する。
 これまでの経済価値はすべて買い手の外部に存在しているが、経験は本質的に個人に属している。

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