先日文藝春秋さんの「ロスジェネの逆襲」発売の企画で、本を読んだ感想を動画インタビューをしたいという謎のオファーを頂きました。
気がついたら「IT業界で活躍するロスジェネ世代の星が『ロスジェネの逆襲』を読んでみた」という派手なタイトルになっていて、お前のどこがロスジェネ世代の星なんだ?と各方面から突っ込みどころ満載なのは、依頼時には知らなかった話としてお許し頂くとして。
今回の企画に参加した背景と感想を、こちらにまとめておきたいと思います。
私のブログを読んでいるような方はよくご存じだと思いますが、私は世代論が大好きな人間です。
古くは、梅田望夫さんがCNETのブログで展開していた「PC世代」「ネット世代」を定義していたインターネット世代論に積極的に絡んでましたし。
76・77世代をいち早くインターネット時代のエリート世代と定義したのは勝手に自分だと自負していますし。
72世代と76世代の違いを勝手に定義してインタビューでしゃべったりしている人間です。
実際問題、個人的には1972年生まれの自分の世代は、ずっと損をしている世代だと思いこんで生きてきました。
いっつもネタとして話すことが多いんですが。
私たちの世代は、
大学受験は典型的な受験地獄
で、大学入った時にはバブルが続いてて、大学さえ入れば就職は安泰だと言われていたのに、
いざ就職活動を始めた時にはバブルが崩壊して就職氷河期に突入。
会社に入れば安定して終身雇用になるはずが、大企業も倒産する時代になってしまい、
老後に年金がちゃんともらえるかどうかも赤信号。
バブルを楽しそうに謳歌していたいわゆるバブル世代に比べると、何も良いことが無い世代だと思っていたのは事実です。
そもそも細かい話で言うと、
私たちの世代が高校生の頃に「女子大生ブーム」があったんですが。
私たちが大学生になった時には「コギャルブーム」になってしまったり。
第二次ベビーブーム世代で人数だけは多いはずなんですが、世の中の脚光は浴びない世代だったりする印象があるんですよね。
そんなわけで世代論大好き人間としては、今回のロスジェネの逆襲をトリガーに、ロスジェネ世代に感想を語らせるというのは面白い企画だな、と思った次第です。
実際、半沢直樹シリーズについては、テレビドラマを見て興味をもっていたんですが、テレビドラマがあまりに倍返しを決め台詞にした歌舞伎的というかヒーローものというかという感じの印象だったので、書籍は読んでなかったんですよね。
実は小説はあまり読まない人間なのでこんな機会でも無いと読まないだろうと思って、1巻から書籍を献本頂いて一気に読ませて頂きました。
特にロスジェネの逆襲は、ドラマで舞台となっていた1巻の「オレたちバブル入行組」と2巻の「オレたち花のバブル組」からガラッと変わって、IT業界がテーマ。
書かれたのが2010年頃なので、表紙に六本木ヒルズらしきビルが描かれているように、雰囲気的にはライブドアショック前後のIT業界の買収合戦の延長の文脈なので、ちょっと前のネット業界の感じはありますが、さすが池井戸潤。
めちゃめちゃ読ませる展開で、深夜に読み始めたら止まらなくなって午前3時ぐらいまでかけて一気に読んでしまいました。
で、個人的に印象に残ったのが、書籍の中盤で半沢直樹が部下を諭す際に言う
「結局、世代論なんてのは根拠がないってことさ。」
という発言。
半沢直樹シリーズ自体が、バブル入行組とかロスジェネの逆襲とか、ある意味世代論をベースにした小説であるわけですが、その小説の主人公にこの発言を明確にさせるあたりが憎いなぁとつくづく思ったりします。
実際社会のトレンドの分析とか空気感の分析をする上で世代論は面白いテーマなんですが、だからと言って「俺は○○世代だから」と個人個人が斜めに構えてしまうのは明らかにもったいない話。
最近のゆとり世代の人達とかも二言目には「これだからゆとり世代は」とか言われて悔しい思いをされていることと思いますが、別に同じ世代だからと言ってゆとり世代の全員がのんびりしてるっていう話ではないんですよね。
自分の世代がロストジェネレーションと呼ばれてしまうのは、正直まだ40代なのにロストワールド的にもう自分達の存在が無かったことにされてしまうみたいで、正直嬉しくないんですけど。
だからこそ、ロスジェネ世代って、苦労してる分凄いよね、と言われるように、一人一人が頑張らなきゃいけないんだなぁと改めて思ったりした次第です。
そのあたりの話は、緊張して顔がこわばっていてかなり恥ずかしい動画インタビューでも話してますので、ご興味がある方はこちらをどうぞ。
すでに新しく発売されたロスジェネの逆襲の文庫版は当然のようにランキング1位を獲得し売れまくっているようですが、私のように普段小説を読まないビジネス書好きな人にも面白く読んでもらえる本だと思います。
私同様、ドラマの印象が強すぎて本を敬遠していた人ほど、実は本を読んだ方が楽しめるかもしれませんので、読書の秋にオススメです。