躍進 日本オラクル 全社最適化戦略 (岩淵 明男)

4883384276 「躍進 日本オラクル 全社最適化戦略」は、タイトル通り日本オラクルの歴史について考察している本です。
 Oracle OpenWorld Tokyoの関係で献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 日本オラクルについては、NTTにいたころに創業者の方の本を読んだ記憶があるのですが、いまやその頃とは全く違う会社になっているんですね。
 最近エンタープライズシステム周辺についてはウォッチしていなかったため、オラクルが4年間で48社も買収していて製品数が500から1万に増えたというあたりには、特に衝撃を受けました。
 書籍の内容自体は、歴史本的な感じも強いですが、先日のサンマイクロシステムズの件もありますし、今後のオラクルの動向が気になるという方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■「オペレーション・エクセレンスからマネジメント・エクセレンスへ」
■マネジメント・エクセレンスを支える製品戦略
・コンプリート
・オープン
・インテグレーテッド
■オラクルのM&Aでは、オープン、業界トップ、ベスト・ソリューションが、買収の条件である。
■ピープルソフト買収前の2004年末の時点で、オラクルの製品数は約500
 48社を買収した2008年末になると、オラクルの製品数は、なんと20倍の約1万に激増していた。
■「日本オラクルは事業開始以来のサクセス・モデルとして、パートナー・モデルを構築してきたのですが、今は、そのパートナーとの関係を次のフェーズに進めなければいけないと考えています。」(三露正樹)
■「アプリケーションは、日本オラクルが自ら汗をかいて、お客様にその価値をお届けしないと、なかなか成功しないんです。」(桑原宏昭)

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買い物する脳 (マーティン・リンストローム)

4152089784 「買い物する脳」は、ニューロマーケティングという脳を意識したマーケティングについて考察している本です。
 Amazonで本を買ったときにお勧めに出てきて、気になったので、購入してみました。
 書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本ではさまざまなマーケティングの要素について脳がどのように反応したかという事例がいろいろと出てくるのですが。
 タバコの警告ラベルがかえって売上を上げる効果を持っていたりとか、コロナにライムを入れる習慣がバーテンダーの賭からはじまったらしいとか、性的内容を含んだ広告は実はブランド記憶の面では逆効果だとか、自分が常識と思っていることに実は脳は逆に反応していたり、、ということが分かって驚きます。
 Amazonでの評価は低いみたいですが、マーケティングの視点をちょっと広げてみたいという方には、参考になる点がある本だと思います。
【読者メモ】
■日本を調査することで、未来の世界を垣間見るきっかけとなると信じている
■タバコの警告ラベルは喫煙の抑止に効果がないばかりでなく、逆に側坐核を活性化して喫煙を促していたということが、fMRIの結果から分かったのである
■市場調査やフォーカス・グループといった従来の調査方法が、消費者の本当の考えを知るのに効果がないことは分かりきったことだった。
■「無駄なものにエネルギーを注ぐことができるのは、動物として地位や権力を持っている証拠ですからね」(ヘンリック・ウォルター)
■私たちの大半は、六十六歳までに約200万回ものテレビ・コマーシャルを目にする。時間に換算すると、毎日八時間の広告を六年間見たことになる。
■私たちは番組のストーリーにとって重要な役割を果たしていないブランドは覚えていない

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クラウド (小池 良次)

4844326783 「クラウド グーグルの次世代戦略で読み解く2015年のIT産業地図」は、タイトル通りグーグルを中心としてクラウドコンピューティングの未来について考察している本です。
 NTTの次世代サービス共創フォーラムで小池さんのディスカッションを聞いて、興味を持ったので本を買ってみました。
 読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 クラウドコンピューティングブームもあり、クラウド本はいろいろありますが、日本人による日本企業に対する示唆もありますので、クラウド化がすすむ産業において自社がどういう展開をすべきか悩んでいる方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■グーグルの賢いところは、ツールとインターフェースを重視するところにある
 グーグルは、ホームページをツール(=アプリケーション)として利用した。ホームページを情報を表示するメディアとして考えているヤフーやアメリカ・オンラインとは違っていた。
■ときどきだが、最近のシリコンバレーではグーグルが嫌われ役扱いされるようになった。
■米国でいちばん便利な場所は「パソコンの前」
 日本でいちばん便利なのは「手のひらの携帯」
■クラウドコンピューティング=中身がわからなくてよいコンピュータ
 雲は「中身がわからないもの」の象徴として使われている
■グーグルは通信事業者になろうとはしていない。グーグルはインターネット時代のソフトウェア最大手を目指しているだけだ。

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クラウドコンピューティングの幻想(エリック・松永)

4774138045 「クラウドコンピューティングの幻想」は、タイトル通り最近のクラウドコンピューティングブームの課題について考察している本です。
 献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 個人的には、どちらかというとクラウドコンピューティングの解説本と言うよりは、エンタープライズシステムの歴史本という印象もある本ですが、エンタープライズにとってのクラウドコンピューティングの意義に疑問がある方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■クラウドコンピューティング提供企業
・システムインテグレータ
・ソフトウェア/ハードウェアベンダー
・通信キャリア
・端末メーカー
・サービスプロバイダー
■クラウドコンピューティングの押し売りの見分け方
・プレゼンする人の肩書きがコンサルタント
・プレゼンの資料がキレイすぎ
・Google、Amazonの成功要因を技術的な優位性でしかとらえていない
・自社製品が既存製品の組み合わせ(再利用)
・こちらの課題や今抱えている問題を聞かない
・自社一社でサービスが完結するような話をする
■クラウドコンピューティングの3大構成要素
・ブラックボックス化されたコンピュータシステム
・コンピュータシステムにアクセスする多種多様なネットワーク
・ユーザーに提供されるサービスとユーザーのインターフェースとなる端末

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土地の神話(猪瀬 直樹)

4093942366 「土地の神話」は、猪瀬 直樹氏のミカド三部作といわれる書籍の二冊目に当たる書籍です。
 ミカド三部作の「欲望のメディア」と「ミカドの肖像」が面白かったので、こちらも購入して読んでみました。
 書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 こちらの本でテーマとなっているのは、タイトル通り「土地」そして東急グループです。
 私自身東急東横線沿線居住者なので、東急には親近感がある人間なのですが。
 東急グループや渋沢栄一、そして五島慶太という人物が私の想像をはるかに超えたレベルで、日本の通勤文化や発達した鉄道網に影響を与えていたという事実には、正直衝撃を受けました。
 何と言えばいいでしょうか、リアルシムシティーというべきか、リアルA列車で行こうというべきか。
 ゲームよりも実際の歴史の方がはるかに刺激的だったりするのが不思議です。
 ついつい、都市というものは自然発生的に成長するように思ってしまいますが、この本を読むと実は都市ですら、しかも東京のような大都市ですら、一人の人間の信念によって大きく影響を受けるものだ、ということを痛感させられます。
 
 なぜ、自分が毎朝満員電車にゆられて通勤しているのか、疑問に感じている方には刺激になる点が多い本だと思います。
【読者メモ】
■東京は政治と商売が渾然一体となっているが、大阪ではそうはいかない。大阪には無駄な資金がない。要るだけのカネはつねに動いている。(小林一三)
■五島慶太と堤康次郎
 明治22年生まれの堤と、明治15年生まれの五島。ともに小林の思想のある部分を拡大して継承する事により、終生のライヴァルとなった。
 堤は電車の終点の彼方に拓かれたリゾート地開発を中心に事業を展開し、五島は鉄道路線の伸長と住宅開発をひとかたまりにした経営方式に重点を置いた。
■目蒲線こそ東急線建設の基盤であり、今日の東急の出発点だったのである。
■「どんな利巧な人でも、社会があるから成功する事ができるのだ。だから成功したら社会に恩返しをするのが当然」(大渋沢:渋沢栄一)
■定期的に地震や大火に見舞われる日本人の自然災害観は独特な様相をもつ。地震だけでなく戦争もまた天災にしてしまう。”敗戦”は”終戦”と呼ぶ。台風が過ぎ去ったかのように。
■あらゆる私鉄が点と線のみを考えているとき、五島は大渋沢の田園都市のプランを吸収することでいち早く面の重要性に気づいていたのである。

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ミカドの肖像 (猪瀬 直樹)

4094023127 「ミカドの肖像」は、猪瀬 直樹氏のミカド三部作といわれる書籍の一冊目に当たる書籍です。
 ミカド三部作の三冊目に当たる「欲望のメディア」が面白かったので、こちらも購入して読んでみました。
 書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 こちらの本でテーマとなっているのは文字通りミカド(天皇)、そして西武鉄道グループです。
 天皇について私たちは何となく知っているつもりになっているのですが、実は知らないことが山ほどあることに驚かされます。
 実は原宿に天皇専用駅舎があったり、プリンスホテルが文字通り皇太子とのつながりから名付けられていたり、そのプリンスホテルの敷地の多くが天皇家にゆかりの土地であったり。
 そういうことを知ると、改めていろんなものが違った風に見えてくるから不思議な物です。 
 
 天皇について知っているつもりになっている人は、是非読んでみることをお勧めします。
【読者メモ】
■明治のはじめ、日本に鉄道技術を教えたイギリス人は、最初、このノウハウ(ダイヤ作り)だけは絶対に教えなかった。しかし、明治二十年代の終わりまでに、日本人独自の手で列車ダイヤを作成できるようになっていた。
■”お召の三原則
・ふつうの列車と並んで走ってはいけない
・追い抜かれてはいけない
・立体交差の際、上を他の列車が走ってはいけない
■十時コロコロ
 「十時ジャストのことだけど、10:00発と時刻表で表示されていても、スジではこれは十時十五秒、三十秒、四十五秒とあるんです」
■すべてが中流であるなら、他人との区別がつかない。差異性を喪失した社会はアイデンティティの危機を招き、人々は消費活動のなかに、少しでも差異性を導入しようと試みる。ブランド商品の横行や、モノそれ自体とは別にモノに付随した情報を重視する考えも、そのひとつのあらわれであった。
■西武鉄道グループが所有している土地は、日本全国に四千五百万余坪、東京二十三区の四分の一に匹敵する。その土地の時価は、銀行筋の推計ではおよそ十二兆円である。
■戦後、急にオンナが強くなったのではなく、また、急にアメリカナイズされた風俗が蔓延したのでもない。1917年を起点とする二十年間の大衆社会の素地があったからである。

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