「ムーブメント・マーケティング」は、タイトルから想像されるとおりムーブメントの起こし方について考察されている書籍です。
献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
ソーシャルメディアの普及により、ボトムアップで大きなムーブメントが起こせるという話は、「ドラゴンフライエフェクト」や「逆パノプティコン社会の到来」など、様々な書籍で取り上げられていますが。
この本ではタイトル通り、そのムーブメントをマーケティングとして仕掛ける場合にはどうするべきかというテーマを正面から取り上げた本になります。
フィリップ・コトラーの「マーケティング3.0」においても、コーズマーケティング的なアプローチにかなりの紙面がさかれていましたが、ソーシャルメディア時代だからこそ、本書で定義されているような「神の声型マーケティング」で企業から一方的に宣伝をするのではなく、「製品やサービスをなぜ提供するのか」という原点に立ち返り、顧客が何を求めているのかに耳を傾ける必要があるという、マーケティングの根本的な変化が起こっていると言えるのかもしれません。
この変化は、「パーミッションマーケティング」と「インタラプションマーケティング」。「インバウンドマーケティング」と「アウトバウンドマーケティング」など、様々な形で表現されているわけですが、少なくとも米国においては着実にその規模感が大きくなってきているのを感じます。
もちろん、日本で同様の規模の変化が起こるのかどうかは別問題ですが、アラブの春やオバマの大統領選挙のような、ソーシャルメディアが生み出した革命を自らもマーケティングで再現してみたいという方には参考になる点がある本だと思います。
「エフェクト」や「インテンションエコノミー」を合わせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■ムーブメント
「あるアイデアや信念が、情熱によりコミュニティ全体に広がる現象」(セス・ゴーディン)
■ムーブメント・マーケティングのポイント
・共有が新たな合い言葉となる
・謙虚さと透明性が重要
・芽生えつつあるトレンドを見つける
・自社ブランドと巷の話題との接点を見つける
・ターゲットを絞り、悪役を決める
・誰が主役かを理解する
・ムーブメントの火をつける
■世間にはムーブメントはトライブの集まりだという誤った認識がある。
ムーブメントの場合、全く異なる人々、さまざまな地域のありとあらゆる種類の人々が集まる。彼らが共有しているのは、ムーブメントの中心にある基本的な考え方や、それに対する情熱だけだ。
■不安や不満+斬新なアイデア(を印象的な方法で表明)+信者+促進=文化的ムーブメント
■「かつては、グループに参加したい、世界を変革したいと思えば、既存の文化組織や政治組織に参加するしか方法がありませんでした。しかし現在では、以前よりはるかに多くの選択肢があります」(サスキア・サッセン)
■考え方を変える
・神の声型マーケティングモデル:企業が神となり、顧客が何に関心を持つべきかを企業が決めようとするモデル
・ムーブメントマーケティングの大きな特徴は、指図するのではなく、耳を傾けることにある。
■ブランドの目的を見つける3つの円
・なぜ:製品やサービスをなぜ提供するのか
・どのように:製品やサービスをどのように提供するのか
・何を:どんな製品やサービスを作るか
■消費者は何を提供するか、どのように提供するかと言った点にはあまり心を動かされない。
■マーケティング担当者は、試供品や景品でブロガーを買収しようとするのだが、わが社の経験から言えば、大半のブロガーは買収を望んでいない。
では何を望んでいるのか?実際に自分たちが利用できそうな、信頼の置けるアイデアやコンテンツである。
■イベントへの参加を通じ、現実世界で軌道に乗り始めたムーブメントにおいて、さらにコミュニティ内の人と人とのつながりを醸成・強化する方法がある。それは、メンバー間で共有できるシンボルを設定するのである。
■「どんなムーブメントも、独自のシンボルや旗を作り、ムーブメントが存在していることを大衆に知らせるべきです。シンボルを至るところで見かけるようになれば、ムーブメントをより大規模なもの、力強いものに見せることができます。」(ブライアン・コリンズ)
■ストロベリーフロッグのアプローチ
・世の中に芽生えつつあるトレンドの中でも、現在の文化を規定するような力強いトレンドを取り上げる
・大衆をそのトレンドに惹きつけるようなコンテンツ、活動、ツール、イベント、コミュニティを考案する
・すでにそのトレンドが話題になっている場所から始める
・きわめて発言力の強い人物に協力を要請する
・マスコミを利用し、幅広い大衆に呼びかける
・検索エンジン最適化を行う
・PR活動、ソーシャルメディアの利用、コンテンツ配置などにより、クチコミを促進する。
・ムーブメントが一過性のものにならないように、自己所有が可能なオンラインメディア、オフラインメディアを開発する
■サイオンの場合、エンブレムという新たな表現形態を生み出すウェブサイトを設置した際、当初はサイトのパスワードを、熱心なファンにしか教えなかった。 ファンがあちこちでこのサイトを話題にすれば、外部の人間もこれらのエンブレムが何を意味しているのか知りたくなる。
ムーブメント・マーケティング 「社会現象」の使い方 スコット・グッドソン 山田 美明 阪急コミュニケーションズ 2013-02-28 by G-Tools |