ad:tech Tokyoで思う広告とか技術とか、いろんなものの境界線の無意味さ

 先週の9月3日と4日の二日間、ad:tech Tokyoに参加させて頂きました。
2009090209360000.jpg
 世界最大のデジタルマーケティングカンファレンスの日本初開催という、非常に歴史的なイベントにスピーカーとして参加することができて、本当にラッキーでした。
 自分の担当セッションの内容自体は、すっかり会場の雰囲気に飲まれてしまっていたのでいろいろ後悔するとこもあるのですが、そちらの総括は別途させて頂くとして。
 いつも通りレポートが遅くなってしまいましたが、とりあえずイベント全体の感想をメモしておきたいと思います。
 個人的に、今回のad:techで特に印象に残ったのは、もはや「広告業界」とか「IT業界」とか、「マス」とか「ネット」とか、「オンライン」とか「オフライン」とか、「宣伝」とか「販促」とか「PR」とか、そういったこれまで明確に存在すると思われていた境界線は、どんどん溶け始めているのではないかということ。
 
 参加者によっては、ad:techというタイトルのadは外してもいいのではとか、逆にtechが誤解を生むのではないかというようなことを書かれていますが、その個別の指摘には賛同しつつも、なんとなくこのad:techという何かを表しているようで表していないタイトルこそが、ad:techの存在意義なのではないかというのを感じる二日間でした。
 7月に「「ad:tech Tokyo」にみる米国式ボトムアップでのイベントの作り方」という記事を書いたときには、自分がad:techの本質をちゃんと理解できていなかったということが、今となってははっきり分かります。
 
 私が担当したセッションは、ブログマーケティングに携わるパネリスト3者という、ある意味では非常に分かりやすい一般的な業界解説セッションだったのですが。
 個人的に、ad:techならではだなと思ったのは、やはり広告代理店、クライアント、ネット事業者など、異なる業界の担当者が混じり合って議論を重ねた業界横断セッション。
ADTECH 最終セッション

続きを読む ad:tech Tokyoで思う広告とか技術とか、いろんなものの境界線の無意味さ

天下一カウボーイ大会は、まるで日本版TEDのようなイベントだった。

 日曜日に、ユビキタスエンターテイメントとアスキーが主催している天下一カウボーイ大会にお邪魔してきました。
tenkaichi3_1.png
 正直な話、天下一カウボーイ大会ってエンジニアのためのイベントだと思っていたので、私は対象外だろうなぁと、過去2回とも気になりつつも、申し込まずにいたのですが。
 たまたま金曜日のTechCrunch Tokyo Campに参加した際に、清水さんと遭遇し、いろいろ話を聞いて急遽日曜日だけ参加させてもらう流れになったというのが背景です。
 で、参加してみて驚いたのが、その内容の幅広さ。
 タイトルに Code is Love とあるように、当然エンジニアの方向けの内容が中心なのですが。
 カウボーイと呼ばれるプレゼンターの方々は、実に多様。
 元Appleの増井さんや、川合さんのLISPの話のように、バリバリのエンジニアの話もあるかと思えば、takramの田川さんによるデザインの話や、京都大学の土佐尚子さんによる禅の話もあったりと、実際の内容は想像以上にバリエーションに富んだものでした。
天下一カウボーイ大会にやってきました
 基調講演も初日が元マイクロソフトの古川さんで、二日目が映画監督の樋口真嗣さんだったりと、あらためてよく見ると、そのプレゼンター陣は実に多才で、各業界を代表する方々が揃っています。
 最初に、てっきりエンジニア向けのイベントだと思い込んで、自分が良く講演内容やプレゼンターを見ていなかったという自分の浅はかさにちょっと後悔してしまいました。

続きを読む 天下一カウボーイ大会は、まるで日本版TEDのようなイベントだった。

それでも、私たちは選挙に行くべきだと思う理由

 続・選挙には行かない – TAKUYAONLINEを読んで。
 すっかりWISH2009WOMJセミナーの連続開催で、精神的に披露して脳がまわっていないですし、先日のTwitterの選挙中の発言禁止とかで、いよいよ日本の公職選挙法にはあきれかえったので、もう選挙についての言及はやめようと思っていたのですが。
 上記の記事を読んで、どうしても気になったので脊髄反射で個人的考えをメモしておきます。
 正直なところを言うと、上記の記事自体には特に反論はありません。
 私自身、実は大学で政治学科に通ったぐらいなので、どちらかというと政治に興味がある方の人種だと思うのですが、選挙のたびに自分の1票のおける役割の小ささとか影響力の低さというのには、つくづく無力感を感じます。
 下記のようなサイトを見ると、その無力感はますます増してしまったりします。
senkyo_ippoyu.png
 ただ、選挙におけるインターネットの活用という視点から、各党のブロガー懇談会に参加したり、ネット選挙イベントをやったりと、日本の選挙を自分なりに勉強してきた感想から言うと。
 やっぱり、それでも、私たちは投票に行かなければいけないというのを強く感じます。
 
 それはナゼか?というと、私たちの意見を政治に反映したかったら、投票率を上げるしか方法が無いから、です。
 明るい選挙推進委員会に出ていた世代別の投票率の推移がこちら。
senkyo_touhoyuritu.png
 他の世代に比べて20代、30代の投票率の落ち込みが明らかに激しいのが分かります。
 特に前回以前のここ数回の落ち込みはひどいですよね。
 
 関連して検索して見つけた記事にあったグラフがこちら
f:id:p_shirokuma:20070404142822j:image
現在の世代別投票率が続く限り「高齢者のほうを向いた政策」は終わらない – シロクマの屑籠(汎適所属)より
 世代の人数は実はそれほど変わらないのに、投票者数を見たら、明らかに少ないのが分かります。
 特に、世代の母数が少ない70代に、投票者数では負けているのは実にショックなデータです。
 政治家の人たちが、これを見て、「若い世代にアピールするより、年配の世代にアピールする方が票が取れる」と思ってしまうのは当然でしょう。

続きを読む それでも、私たちは選挙に行くべきだと思う理由

WISHというイベントで、私が表現したかった3つのこと

 はやくもWISH2009が終わって3日が経とうとしています。
 皆さんのフィードバックに一通り目を通しながら、そもそも自分自身がイベントの総括をしていないことを思い出しました。
DSC 0098(Photo by Crema
 当日、壇上ではすっかり舞い上がってしまって、大事なことを言い忘れているような気もするので、私個人が今回のWISH2009を通じて表現したかったことを3つ、ここにメモっておきたいと思います。
 イベントが終わってからこういうことを書くのも、今更手遅れな気がしないでもないですが、こういうことがやりたかったんだと思って頂ければ幸いです。
公式レポートが読みたい方はこちらをどうぞ
 なお、日頃私のブログを読んでいる方は、お察しとは思いますが、長文注意です。
WISHというイベントで、私が表現したかった3つのこと
■本人が楽しいことが一番大事
■サービスはユーザーと一緒に考える時代
■ウェブに境界線なんてない

続きを読む WISHというイベントで、私が表現したかった3つのこと

日本の公職選挙法は、やっぱりTwitterのつぶやきも禁止だった。

 「つぶやき」は公選法違反 政府「トゥイッター」禁止 – 毎日jpを読んで。
 すでに7月22日のニュースなので、完全に周回遅れになってしまいましたが、7月2日に「公職選挙法は、Twitterのつぶやきすら違法認定するかもしれない、という日本の現実」という記事を書いたこともあるので、今更ながらメモしておきます。
 要は毎日新聞の記事によると、『「Twitter(トゥイッター)」を選挙運動で利用することについて、「公職選挙法に違反する」』と認定されたということで、残念ながら先月の記事で書いた外れて欲しい予想があたる結果になってしまいました。
 ちょうどこのニュースが出る前日に、楠さんがNIKKEI IT-PLUSで「「Twitter」のつぶやきもダメ? 公職選挙法の逆効果」をいう記事を書かれていたので、前向きな議論を期待したりもしていたのですが。
 結局、少なくとも今回の選挙においては、Twitterだろうが、ブログだろうが、選挙期間中に選挙応援とみなされる主旨の発言をすれば、全て違法認定という結論が出てしまったと言うことのようです。
 まぁ、実際問題としてはTwitterで誰かが、「自民党がんばれ」とか「民主党がんばれ」とか「○○候補の当選を応援しよう」とか書いたところで、逮捕される事態にまでは発展しないと想像されますが、少なくともこれで候補者の人たちが選挙期間中のネット活用に一切手をつけられなくなるのは確定ですね。
 一方で政党のホームページ更新はいつのまにか事実上公認になっているようなので、このあたりが正直素人には良くわからないところですが。
 現在のところ公職選挙法上は、インターネット上のつぶやきとか発言とか会話とかは、全て公文書の頒布扱いで禁止。選挙期間中は事実上インターネット上では選挙に関する箝口令が引かれるという現状に全く変わりはないようです。
 イランの選挙後の混乱でイラン国内でのTwitterの利用がかなり注目されていましたが、そのTwitterの利用さえ禁止されるというのは、ある意味で日本は独裁国家よりもネット活用に厳しいかもしれないという笑えない話だったりします。
 せっかく、「オバマ現象のカラクリ」や「YouTube時代の大統領選挙」に書かれているように、オバマの大統領選挙で候補者と支持者のネットを活用したコミュニケーションのいろんな可能性が見えてきたというのに、日本ではあいかわらずネットの選挙活用については存在すら認めないという状況が続くというのは実に残念というか、虚しい感じですね。
 日本のウェブは残念論争なんかもありましたが、こういう国家の最大のイベント毎でネットがスルーされてしまう状況というのは、確実に日本のネットとかウェブとかの地位向上とか進化を妨げている要因だったりするんだろうなぁと思ったりしてしまう今日この頃です。

「ad:tech Tokyo」にみる米国式ボトムアップでのイベントの作り方

 ad:tech Tokyo公式ブログの方でもプレイベントの告知がされていますが、いよいよ、「ad:tech Tokyo」開催まで50日を切ったようです。
adtech_tokyo.png
 わたしもAMNに入った関係で、広告業界の方と情報交換することがこの2年間一気に増えましたが、未来の広告業界を語る上で、必ずといっていいほど出てくる言葉だったのが、この「ad:tech」というキーワード。
 正直、最初の頃は何かのサービス名か会社の名前かと勘違いしていたぐらいだったのですが。
  
 世界をまたにかけて開催されているデジタルマーケティングの世界最大規模のイベントだそうで。
 すでに7カ国11都市で開催されていると言うから凄いです。
 話をいろんな人から聞けば聞くほど、一度参加してみたいという思いは募るのですが、まだ一回も参加することができていません。
 そんなad:techが今年はいよいよ東京で開催されるというので、個人的にも楽しみにしているわけです。
 で、ad:techについて、先日武富さんに教えてもらうまでもう一つ勘違いしていたのが、そのイベントの開催方法。
 世界最大規模のイベントというと、CEATECとかINTEROPみたいに、イベント会社の方が中心になって基調講演とか、パネルディスカッションがトップダウンで配置されていくイメージがあるので、てっきりad:techも主催者の方々が、テーマ毎のパネリストとかファシリテーターをテーマ毎に選んでいくんだと思っていたんですが。
 実はパネリストもファシリテーターも公募を基本としていて、そこから主催者がテーマ毎にメンバーを選考していくというボトムアップなスタイルをベースとしているのだそうです。
 当然、選考のプロセスでかなりのフィルタにかけられるんでしょうけど、パネルの枠のテーマだけ先に決めて、スピーカーを公募で募集するというのは、日本の通常のビジネス系イベントではまず聞いたこと無いですよね。

続きを読む 「ad:tech Tokyo」にみる米国式ボトムアップでのイベントの作り方