iPhoneショック (林 信行)

iPhoneショック ケータイビジネスまで変える驚異のアップル流ものづくり 「iPhoneショック」は、Apple関連に非常に強いITジャーナリストとして知られる林 信行さんがiPhoneが業界に与える影響についてまとめた本です。
 献本をいただいていたので、遅ればせながら読書メモを書いてみました。
 iPhoneについては、日本ではまだサービスが開始されていないこともあり、その端末側の機能やデザインに主な注目が集まっていますが、やはりこの本で語られているように通信業界や携帯電話メーカーに対して与えるインパクトの大きさも忘れてはいけない重要な要素だと思います。
 特に個人的に注目しているのは「上納金」と呼ばれる回線収入のレベニューシェアモデル。
 ソニーの出井さんが昔、ソニーがどれだけインターネット向けの端末を一生懸命作っても、結局最後はNTTが毎月の利用料という形で儲かることになる、という趣旨の発言をされていたことがあったと思いますが、インターネットの登場により、ソフトウェアがサービス化したのと同様、今後はハードウェアもサービス化することは十分あり得ると思っています。
 その課程で当然問題になるのがビジネスモデル。
 現在の売り切り型のビジネスモデルだと、メーカーは端末を頻繁に買い換えてもらう必要があり売った後の端末のサービスは全てコストになってしまいます。
 これが、回線収入のように毎月のサブスクリプションモデルであれば、顧客は長期的につきあう利用者となり、端末内のソフトウェアのアップデートや利便性の向上などもすべて利用を継続してもらうための積極的なサービス追加となり、これはメーカーと利用者の関係を大きく変える可能性があると思っています。

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ウェブ時代をゆく (梅田望夫)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687) 「ウェブ時代をゆく」は、昨年11月に出版された梅田さんの本です。
 完全に周回遅れどころか、三周回遅れぐらいなのですが、読書メモを書いていたので公開しておきます。
 Amazonの本の紹介に『ウェブ進化論』完結篇と書かれているように、この本はウェブ進化論から始まった梅田さんのウェブ時代論において、では、私たちはどのようにこれからの日々を生きていくべきなのかという点にフォーカスした内容になっています。
 個人的に特に共感したのは、「もうひとつの地球の創造者はグーグルだけではない」というくだり。
 最近、仕事の関係でいろんな業界の人と話をすることが増えましたが、インターネットを作り上げていく自分に、自分も参加していると感じているかどうか、というのが価値観の一つの大きな分岐点になっていると感じています。
 
 個人的には、ブログとかmixiとかを使ってみることから初めて見てもらえば、新しい価値観の人が増えていくのではないかと期待していたりするのですが、大企業においてはそれらのツールがアクセスが禁止になっていたりするところも多く、なかなか難しいなーと感じるところもあります。
 
 ちなみに、最後の方に「皆が「この人から学びたい」と思う尊敬する知人を一人選び、「皆で学ぶ」ためにその人にブログの開設を促せば、それだけでも日本語のネット空間は知的な豊穣さが増してくるだろう。」という提言もありましたが、これは自分でも是非促進されるように何かで挑戦してみたいところです。
 
 梅田さんのブログを普段から読んでいた人であれば、復習本的な位置づけの本になると思いますが、ウェブ時代における行動スタイルを考える上で良いまとめになると思いますので、まだ読んでないという方は是非どうぞ。

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次世代広告コミュニケーション (横山 隆治 他)

次世代広告コミュニケーション 「次世代広告コミュニケーション」は、CNETでコラムを書かれている横山 隆治さんや、インターネット広告のひみつの太駄 健司さんなどADKのメンバーが中心に執筆されている広告の未来を考察した本です。
 献本を頂いたにもかかわらず読書メモを公開し忘れていたので、遅ればせながら公開しておきます。
 個人的にもAMNで広告業界に関わるようになってようやく1年が経過したわけですが、これまでのマスマーケティング的な広告手法とインターネットを使った広告手法の間に大きなギャップを感じています。
 そのギャップを、大手広告代理店であるADKの視点から総合的に解説している本という意味で、この本は非常に勉強になります。
 特に、「広告コミュニケーション」と広告単体でなくコミュニケーションという双方向のキーワードで表現しているのは、興味深く、「プッシュ型からプル型のコミュニケーション開発へ」とこれまでのテレビCMとWebサイトではコミュニケーションの方向が反対であるというのは、あらためて考えさせられるポイントでした。
 
 ちなみに、面白かったのが、ブロガーに商品を送るときの5原則として紹介されていた要素の5番目の「書いてくれなかったとしたら何か事情があるはず。そっとしておこう」。
 ブロガー向けサンプル配布で、ブロガーが記事を書いてくれないと、何で書いてくれないのか?という話になるというのはありがちですが、ここをそっとしておくことができるかどうか、というのは一つ難しいポイントになりそうです。
 
 インターネットマーケティングに関わる方は、是非読むことをお勧めします。

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CONTENT’S FUTURE (小寺 信良 津田 大介)

CONTENT'S FUTURE ポストYouTube時代のクリエイティビティ (NT2X) 「CONTENT’S FUTURE」は、小寺 信良さんと津田 大介さんによるインタビュー本です。
 光栄にも献本をいただきましたので、感想をメモしておきたいと思います。
 正直な話、このCONTENT’S FUTUREは、あまりインタビュー本という表現が適切ではないかもしれません。
 形式としてはインタビューが中心になってはいるのですが、そのインタビュー対象も実に個性的。
 各分野で意欲的な挑戦をしている方々がコンテンツに対するそれぞれの想いを語っています。
土屋 敏男(第2日本テレビ エグゼクティブ・ディレクター)
草場 大輔(東京MXテレビ 報道制作局ディレクター)
椎名 和夫(音楽家、実演家著作隣接権センター運営委員)
遠藤 靖幸(価格.com マーケティング部)
江渡 浩一郎(産業技術総合研究所 研究員)
西谷 清(SONY ビデオ事業本部長)
長谷川 裕(TBSラジオ「Life」プロデューサー)
中村 伊知哉(国際IT財団 専務理事)
松岡 正剛(編集工学研究所)
 本の中で語られているのは、インターネットの登場によって大きく変化しているコンテンツ産業の未来についてなのですが、ネット側の視点ではなく、長らくコンテンツに関わってきた方々の視点が多く入っており、考えさせられる発言が随所に出てきます。

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そろそろ本気で継続力をモノにする! (大橋悦夫)

そろそろ本気で継続力をモノにする! 「そろそろ本気で継続力をモノにする!」は、スピードハックスなどの著書で、すっかり日本のライフハック第一人者となった大橋さんの単著です。献本を頂きましたので、感想をメモしておきます。
 私が大橋さんに初めて会ったのは、もう3年以上前になると思いますが、いまやすっかり自分流の仕事観を確立された感じですね。この出版のペースはすごいです。
 今回の書籍では「継続力」にフォーカスをあて、大橋さんならではの継続力哲学を披露されています。
 大橋さんは以前「手帳ブログのススメ」なんて本も書かれていましたが、まさに自他共に認める継続マニア。
 
 今回の書籍では、継続のタイプを「続ける系」「ためる系」「マスター系」の3つに分類し、大橋さんなりの継続力の高め方を体系的に解説してくれます。
 なんだかんだで、ついつい三日坊主になってしまうという人にお勧めです。

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フラット革命 (佐々木俊尚)

フラット革命 フラット革命は、「グーグル – Google 既存のビジネスを破壊する」や「ウェブ2.0は夢か現実か?」等で有名な佐々木俊尚さんの新刊です。
 最初はタイトルから、てっきりトーマス・フリードマンのフラット化する世界を日本向けに分かりやすくしたような内容かと思ってしまったのですが、違いました。
 この本は、インターネットによるフラット革命が、日本社会にどのような影響を与えるのか、これまでジャーナリストとして日本やインターネットを見続けてきた佐々木俊尚さんの視点から深く掘り下げた一冊です。
 トーマス・フリードマンの本はグローバルに起こっている出来事が客観的にまとめられて私も大きな影響を受けましたが、ある意味他人事のように感じられてしまったのも事実。
 でも、このフラット革命で描かれているのは、現在進行形の日本の話です。
 
 特にこの本が貴重なのは、様々な立場の人たちに実際に取材を行い、それを一つの本の中で綴っていることでしょう。
 一口にフラット革命といっても、それによって発生している現象は一口では言い表せないことを、この本に出てくる一人一人の声が明らかにしていくように感じます。

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