すっかり間が空いてしまいましたが、先月TEDxTokyoに参加させて頂いたので、遅ればせながら感想をメモっておきたいと思います。
TEDというのは、米国で1984年から開催されている有名カンファレンス。
元アメリカ合衆国副大統領のアル・ゴアや、ヴァージン・グループ創始者のリチャード・ブランソンなんかもプレゼンをしているので有名で、個人的にもポッドキャスティングで愛用しているトップ3チャネルの一つです。
TEDx というのは、そのTEDのコンセプトにもとづいて、各国独自の運営で開催されるアソシエイトイベントで、TEDx Tokyoというのはその東京版にあたります。
当日のスピーカーのプロフィールは公式ブログの方にも出ていますので、そちらをご覧いただければと思いますが。
トヨタ自動車のBR企業価値開発室の改田さんや、ソニーコンピュータサイエンス研究所社長の所さんのような日本を代表する企業の研究者から、ピュリッツァー賞受賞フォトジャーナリストのレネ・バイヤーさんや、元CIA捜査官で作家のバリー・アイスラーさんなど、実に多彩なメンバーでした。
ただ、スピーカーのすごさもさることながら、個人的に当日強く感じたのは、それを囲むオーディエンスや会場の雰囲気の重要さ。
今回のTEDxTokyoは東京開催ではあるものの、主催メンバーが主に英語圏出身のメンバーということもあり、当日の運営は基本的に英語。
参加者も日本人の方が少ないぐらいで、どちらかというと西海岸のイベントに日本人が招待されてお邪魔しているような雰囲気すらあったのですが。
その関係で印象的だったのが、プレゼンの後のスタンディングオベーション。
書きたがる脳 (アリス・W・フラハティ)
「書きたがる脳」は、自らが医者であり患者でもある著者が「ハイパーグラフィア」という書き出したら止まらない病気と、「ライターズ・ブロック」という書きたいのに書けない病気について考察した本です。
誰かのブログで書かれていて気になったので買ってみました。
書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
正直、書籍の内容は一般向けと言うよりも、学者向けな内容なので、ちょっと私には難解だったのですが、書きたいことがたくさんあるのに書けないという悩みがある人には参考になる本だと思います。
【読書メモ】
■書くことは人間の至高の営みの一つである。
■ハイパーグラフィア
・ハイパーグラフィアの人は大量の文章を書く
・ハイパーグラフィアは外部の影響よりも強い意識的、内的衝動から生まれる
・描かれたものが当人にとって非常に高い哲学的、宗教的、あるいは自伝的意味を持っている
・少なくとも当人にとっては意味があるという緩やかな基準は別として、文章が優れている必要は無い
■二人の人間にプロジェクトを与え、一人には金銭を支払い、もう一人には払わないとすると、前者の創造性は報酬によって損なわれるらしい
■集中型思考と分散型思考の五段階
・まず問題をおおざっぱに定義する
・それについてできるだけ多くのことを学ぶ
・袋小路につきあたったところで、問題が無意識のなかで孵化するのを待つ
・孵化の期間を経て、ふいに一つまたは複数のアイデアが湧き起こる
・そのアイデアを検証する
リファクタリング・ウェットウェア (Andy Hunt)
「リファクタリング・ウェットウェア」は、オライリーのライフハック本とでもいうべき書籍です。
出版社から献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
副題に「達人プログラマーの思考法と学習法」と書いてあるように、ちょっと私には内容が難しかったのですが、エンジニアの方には参考になる点が多い本ではないかと思います。
【読書メモ】
■初心者から達人への五つの段階
・初心者 :初心者にはレシピが必要
・中級者 :中級者は全体像を見たがらない
・上級者 :上級者は問題解決ができる
・熟練者 :熟練者は自己補正が可能
・達人 :達人は直感で動く
■2種類のモード
・Lモード(Linear Mode) 線形の処理方式
・Rモード(Rich Mode) 非同期で全体論的な方式
「メディアやブログ記事の価値を検索連動型広告の費用に換算する」を日経NMに投稿しました。
日経ネットマーケティングで連載を行っているコラム「カンバセーショナルマーケティングの近未来」に新しいコラムを書きました。
今回も、検索連動型広告を基準にした、ネットマーケティングの効果測定の考え方について紹介してみました。
不明点や不足点等ありましたら、記事の方でもこちらのブログでも遠慮無くご指摘下さい。
■メディアやブログ記事の価値を検索連動型広告の費用に換算する
「 前回のコラムでは、企業によるブログ構築や、自社サイトのメディア化においても、検索連動型広告にかけるコストを基準に広告効果を算定することが可能、という話を紹介しました。
実は、同様のアプローチは企業が直接ブログを運営する場合だけでなく、PR活動やクチコミマーケティングでメディアやブログに記事を取り上げてもらう施策の場合にも活用できます。 」
※このコラムでは、先日公開したカンバセーショナルマーケティングの講演資料でまとめた話の掘り下げだとか、実際にソーシャルメディアを活用したマーケティングを実践する際のステップなどを書いていければと思っています。
日本のウェブを盛り上げてくれそうなサービスや端末のプレゼンイベントをやってみませんか?
※とりあえず、結構な数のフィードバックを頂いたので、実行の方向で進めたいと思います。進捗報告や相談のためにGoogleグループにメーリングリストを作ってみましたので、今後の進捗メールを受け取っても良いよという方は下記から登録お願いします。
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ウェブイノベーションサミット(仮)に参加 |
メール: |
このグループにアクセス |
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先週、「日本のウェブは遅れているのではなく、急速に進みすぎたのではないかという仮説」とか「日本のウェブの残念度を下げるために、私たちができそうな7つのこと+α 」とか、個人的な仮説をとりあえずブログにつづってみましたが。
書くだけで何も行動しないでいると、また忙しさにかまけて忘れてしまって、年末に後悔してしまいそうなので、とりあえず無理矢理一つ、企画を始めてみたいと思います。
その名は「ウェブイノベーションサミット(仮)」
まぁ、イベント名は仮称なので、この際何でも良いわけですが、要はウェブに関連するサービスや端末のプレゼン大会。実は、2年ぐらい前からやってみたいなーと悶々と考えていたものです。
ワークスタイル・メモのようなウェブサービスレビューブログをやっていると特に思うのですが。
米国、特にシリコンバレー周辺のネットコミュニティを見ていると、
TechCrunch50とか
Demo.comとか
新規サービスが一同に介して、プレゼンをしたりメディアや利用者にアピールする場がいろいろあるように思えます。
メディアの面でも、TechCrunchがサービスしたばかりの名もないサービスをピックアップしたりとか、ブログコミュニティ全体が、新規ウェブサービスをみんなでよってたかっていじってあげている印象があり、始まったばかりのサービスがスタートダッシュを切るのに良い環境がある気がします。
ウェブはバカと暇人のもの (中川淳一郎)
「ウェブはバカと暇人のもの」は、タイトル通りインターネットの限界について考察している本です。
正直、タイトルの煽りがきついので、あまり読む気にならなかったのですが、先日の梅田さんのインタビューにも出てきていたのもあり、反対意見も知らずに「日本のウェブの残念度を下げるために、私たちができそうな7つのこと+α 」のような楽観論ばかり書くのも問題な気がしたので買って読んでみました。
著者自身が冒頭で言及しているように、基本的にはこの本は、梅田さんの「ウェブ進化論」、佐々木さんの「グーグル」、岡田さんの「ネットで人生、変わりましたか?」あたりへのアンチテーゼという位置づけにある本です。
この本を書かれた中川淳一郎さんは、元博報堂出身で、現在はニュースサイトの編集者をされている方。
そう言う意味では、博報堂側でテレビの影響力も体験しており、ニュースサイトというネットの現場での実体験もされているわけで、タイトルの煽り具合に比べると、書籍の内容自体は両方の経験を元に冷静にネットの限界をしっかり分析している本という印象です。
テレビの影響力がまだまだ最強であるという点や、ネットの課題や限界など、参考になる点は多いです。
ただ、個人的にこの本を読んで残念だなと思ったのは、この本がマスメディアを置き換えるものとしてのネットの優劣を議論の土台としている点。
書籍の副題には「ネット敗北宣言」と書かれていますが、要は「マス」に対する影響力においてはネットはマスメディアにかなわない、という敗北宣言であり、マスメディア vs ネットという土台からくる二者択一の議論のように思います。
特に後半部分では、ネットよりもリアルの方がすごいという主張が繰り返し登場してくるのですが、利用者からするとネットもリアルも一つのツールでしかないわけで、ネットもリアルも当然組み合わせて使うから意味があるわけで、ネットとリアルを二者択一の選択肢として描く時点でもったいないなと思ってしまいます。
このあたりは、著者の中川さんの仕事がニュースメディアの編集者という、単純にメディアの影響力でマスメディアと二者択一で比較されやすい立ち位置にあるということも影響しているのかもしれません。
(本の方では言及されていないのですが、この辺の記事を見る限り、中川淳一郎さんが担当されているニュースサイトというのはアメーバニュースのようなので、ターゲットとしている読者層がマスに近いことを考えると、余計にマスメディアと単純比較されがちな立ち位置な気がします。)
たしかにメディアの世界においては、良い意味でも悪い意味でも、ネットの影響力が誇大に吹聴される傾向にあり、そう言う意味では著者の主張は実にまっとうで、「ネットだけを利用する」という行為と「リアル(ネット以外)だけを利用する」という選択肢の比較として本書を読むと、納得できる点が多々あります。
実際、大規模に話題を引き起こす力においては、ネットはテレビにはかないませんし、ネットの特性を考えるとその傾向は当分かわることはないでしょう。
ただ、一方でマスに到達しなくても良いと思っている人や、そもそもテレビのようなマスの手段を使えなかった人たちにとって、ネットは非常に便利なツールであり、それこそがネットの大きな価値であると思うので、そこを無視して単純に影響力の比較とか勝ち負けを議論するのもどうかなぁという気がします。
そう言う意味では、ネットもマスメディアも、もともと全く目的やメリットが違う手段なので、そろそろ単純比較すること自体をやめて、「(私たち個人個人が)ネットをどのように活用するべきなのか」を議論した方がいいという話なのかなぁ、という印象をこの本を読んで強く受けました。
ネットが全ての問題を解決してくれる魔法のツールと思ってしまいがちな人には、参考になる点がある本だと思います。
【読者メモ】
■断言しよう。凡庸な人間はネットを使うことによっていきなり優秀になるわけではないし、バカもネットを使うことによって世間にとって有用な才能を突然開花させ、世の中によいものをもたらすわけでもない。
■ネットには「怒りたい人」「吊し上げの対象を血眼で探す人」が多いので、あまりネットの世界が善意にあふれているとは思わないほうがいい。
さらに、そういった人びとは匿名の個人として発言し、組織を背負っていないがゆえに、「絶対に勝てる論争」を高みから仕掛けてくる。クレームを受ける側は組織を背負っているため、逆ギレもできない。完全なるハンディキャップマッチに巻き込まれてしまっているのだ。