ツイッターAPI騒動を見ながら、ツイッターは非常識なサービスのままでいるべきか、普通のサービスを目指すべきか改めて考えてみる

 ここ最近、ツイッターのAPI騒動の影響で、ツイッターの未来に関する議論が久しぶりに盛り上がっている印象があります。
 象徴的なのはこちらの記事でしょう。
Twitter関連サービスの終了相次ぐ API利用制限など「Twitterの変化」影響
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 実際にサービスが停止されたと紹介されているサービスは3件ですから、実際のTwitter関連サービスの数を考えると、終了相次ぐ、と言うほど相次いではいないと思うのですが、そういうタイトルをつけたくなる気持ちも分かるぐらい、API変更によるTwitter関連サービスの開発者の反応はネガティブです。
 このあたりの事情については、日本を代表するツイッタークライアントであるモバツイの開発者のえふしんさんがコラムを書かれているのでこちらを読んで頂ければと思いますが。
Twitter API ver1.1利用規約変更から学ぶプラットフォーム時代の生き方【連載:えふしん⑥】 |エンジニアtype
 この辺の事情をご存じない方に簡単に説明すると要はこういうことです。
■無名だった頃のツイッターは、APIを大きく開発者に開放してきた。
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■それにより、ツイッター社1社では不可能だったと思われるような急速な成長やエコシステムの拡大を実現してきた。
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■最近のツイッターは、有名になって会社も大きくなったせいか、急に一部のAPIを制限し、これまで仲間だった開発者を閉め出し始めた。
 ↓
■閉め出された開発者は当然ショックだし怒る。
 まぁ、冷静に第三者の視点から見ると、無名だったアイドルが有名になった途端に無名だった頃に相手をしていたファンの相手をしなくなり、昔からのファンが怒っているという構図にも見えてしまったりするわけで、良くある話ではあるのでしょうが、個人的に気になるのはやはりツイッター社の本質的な変質が起こっているのかどうかです。

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ウェブはグループで進化する(ポール・アダムス)を読むと、インフルエンサーに対する過度な期待が神話になろうとしていることが見えてきます。

4822249115 「ウェブはグループで進化する」は、Google+やフェイスブックの開発に携わっている開発者ポール・アダムスがウェブの変化の本質について考察している書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本の原題は「Grouped」。
 ウェブの世界がコンテンツ中心から人中心に変わることにより、小規模なグループにおける会話の流れに注目することが非常に重要である、というのがこの本のテーマです。
 
 従来のマーケティングの世界においては、芸能人や著名人など、一握りの超有名人としての「インフルエンサー」を通じてメッセージを発信することが効率が良いとされている印象がありますが、この本において著者は人のコミュニケーションのほとんどは親しい数人との間で行われており、そういった小規模なグループに注目する方が重要であると言う問題提起を行っています。
 ソーシャルメディアの世界においても、ウェブサイトからブログ、SNSと参加の敷居が下がるに従い、明らかに影響力は分散していく傾向にありますし、いわゆる普通の人が友人や知人に対して影響を与える機会も増えているように感じます。
 ウェブの本質的な未来が気になる人はもちろん、マーケティングに携わっている人にも参考になる点が多々ある本だと思います。
 
 「[徳力]パーミッション・マーケティング」や「インバウンド・マーケティング」をあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■ウェブが人を中心にした構造へと変化することは、もはや止めることのできない流れと言えるだろう。
 それは小さな軌道修正というレベルの話ではない。いまのウェブは根本から作り替えられようとしているのだ。
■従来のゲーム業界で一般的だった評価指標に照らしてみると、ジンガのゲームはあらゆる面で劣っていると言えるだろう。ただし他社のゲームにはない特徴が一つだけある。
 それはプレーヤーと、プレーヤーの人間関係を中心にゲームが構築されているという点だ。
■携帯電話のアドレス帳に何百という連絡先が登録されていたとしても、その中のたった4人を相手にした通話が、通話全体の80%を占めているのである。

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TVとソーシャルメディアの融合 つぶやき量、人気の指標に を日経MJに寄稿しました。

 本日、日経MJ「ECの波頭」に寄稿しているコラムが掲載されましたのでお知らせします。
 丁度、「TBSがTwitter連携のトークバラエティ生特番、バスキュールと協力し”朝ナマ”対抗」なんて記事も出てましたが、ソーシャルテレビ的な活動が昨年から今年にかけて一気に増えてきているのを感じます。


 「ソーシャルテレビ・アワード2012」というイベントが7月に実施された。私自身も審査員として参加したこのアワードは、番組制作にソーシャルメディアを戦略的に活用し、成果を上げたテレビ番組を表彰する企画だ。第1回目となった今回のアワードでは、大賞にTBSのドラマ「SPEC~翔~」が選ばれたほか、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」や日本テレビの「ZIP!」、NHKの「NEWS WEB 24」などが各賞に輝いた。
 いわゆる「ネットとテレビの融合」というキーワードは、2005年ごろ、ライブドア騒動で話題になった。当時はまだまだ未来の話という印象が強く、具体的な事例は少なかった。
《ポイント》
(1)テレビとソーシャルメディアの融合が加速し始めている。
(2)ソーシャルビューイングは視聴率に影響する可能性もある。
(3)逆に視聴率とは異なる影響力指標が見つかる可能性もある。
 続きは日経新聞のサイトでご覧ください。
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動員の革命(津田大介) を読むと、ソーシャルメディアの可能性はオンラインだけではなく、オフラインで実際に人を動かすことができる点にあると再認識できるはず。

4121504151 「動員の革命」は、「Twitter社会論」などでおなじみの津田大介さんがソーシャルメディアの本質について考察している書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この書籍で津田さんは、ソーシャルメディアの本質を情報発信ではなく「動員」という一点に絞って、考察を展開されています。
 実際問題、アラブの春やオキュパイウォールストリートなど、世界的にソーシャルメディアによる動員拡大の効果は見え始めていますし、日本でも脱原発デモをされてる人たちがソーシャルメディアを一つの情報インフラとして使っているようですから、この視点は非常に興味深い指摘だと言えます。
 津田さん自身も、自ら復興支援などにツイッターの動員力を最大限活用していた方ですから、そんな津田さんならではの実体験に基づく理論と言えることもできるかもしれません。
 ソーシャルメディアの普及によって、社会の何が変化しようとしているのかが気になっている方には参考になる点が多い本だと思います。
 「ドラゴンフライエフェクト」や「逆パノプティコン社会の到来」をあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■ソーシャルメディアの本質は「誰でも情報を発信できるようになった」という、陳腐なメディア論で言われがちなことではなく、「ソーシャルメディアがリアルを拡張したことで、かつてない勢いで人を動員できるようになった」というところにあるのです。
■ソーシャルメディアは、それ単体で政治的な圧力になったわけではありません。広場に何百万人も集まるという、民衆のデモが圧力になったのです。
■ソーシャルメディアというのは、実は人が行動する際に、モチベーションを与えてくれるもの-言い換えると背中を押してくれるメディアとして機能しているのです。

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愛されるアイデアのつくり方 (鹿毛康司)は、企業の広告やコミュニケーションを語るなら、絶対に読んでおくべき本だと思います。

4872905660> 「愛されるアイデアのつくり方」は、消臭力で有名なエステーの宣伝部長をされている鹿毛康司さんが、広告のあり方について考察している書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 エステーのテレビCMというと、「この部屋におうよ」やシュパッと消臭のお殿様など、インパクトのあるテレビCMで有名ですが、その数々のテレビCMを手がけられているのがこの鹿毛さんです。
 私自身、セミナーでご一緒させて頂いたことがあり、そのプレゼンに衝撃を受けたのですが、実は雪印事件の時の信頼回復の広報をされていたりという背景もあり、異色の宣伝部長ということができるでしょう。
 
 しかも、自らテレビCMに登場していて、宣伝部長としてのツイッターアカウントを持っていたりと、何から何まで規格外の方です。
 
 そういう意味で、エステーのアプローチは「奇策」やネタ重視という印象が強いかもしれませんが、本書に書かれているように実は鹿毛さんが広告の本当に本質的なところを突き詰めているから結果的に奇抜なアプローチを選択していると言うことが分かってくると全ての見え方が大きく変わってきます。
 実際、震災後に生まれたミゲルくんの消臭力のコマーシャル、それを起点にツイッターでのやり取りから生まれたTMRevolutionの西川さんとのコラボCMのくだりを見ていると、鹿毛さんがいかに本質を大事に日々真剣にCMのことを考えているか伝わってくると思います。
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 そのあたりは昔日経ビジネスのコラムにも書いたのでそちらを見て頂ければと思いますが。
消費者と企業が一緒に広告を作る新しいカタチ
 この本は広告やアイデアについて語られている本ではあるのですが、ノウハウ本と言うよりも鹿毛さんの生き方が詰まっている本と言えます。
 広告系の本を読んで正直この本ほど思わず泣きそうになってしまった本はありません。
 
 全ての広告やコミュニケーションに携わる方に読んで欲しい本だと思います。
【読書メモ】
■2000年に「雪印事件」が起きる。
 僕は、現場に長く留まり、被害を受けられた方々への対応を続けた。
 その後、有志7人で「雪印体質を変革する会」を立ち上げ、信頼回復に向けて全力を尽くした。このとき、企業に勤めるビジネスマンとして、お客様と「心」の通うコミュニケーションを取ることがいかに難しいかを痛感させられたものだ。
■震災前に撮影したCMを「新作」として放映していいのか?何もなかったような顔をして流すのが、企業として、人間として、まっとうなことなのか?
 僕には、とてもそうは思えなかった。

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グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ (デイヴィッド・ミーアマン・スコット、ブライアン・ハリガン)

4822248526 「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」は、タイトル通り著名なアメリカのロックバンドであるグレイトフル・デッドのマーケティングを考察している書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本は「マーケティングとPRの実践ネット戦略」を書いたデビッド・マーマン・スコットと、「インバウンド・マーケティング」のブライアン・ハリガンの共著になります。
 音楽業界というのはどちらかというとCD販売に入力するため著作権死守という印象がありますが、実はグレイトフル・デッドはその著作権のかなりの部分を放棄するような常識と逆行する活動をすることにより、ライブからの収入に注力していた、というのが非常に興味深いところです。
 最近話題の「インバウンド・マーケティング」の精神的なところを理解するためにも参考になる本だと思います。
 
【読書メモ】
■グレイトフル・デッドは、今あらゆるビジネスで注目を集めている「ソーシャルメディア」を活用した最先端のマーケティングの多くを、1960年代にすでに開拓していた。
■グレイトフル・デッドの活動のポイント
・従来の業界の思い込みを見直す
・消費者をエバンジェリストにする
・消費者に直接販売する
・たくさんの熱心なファンを作る

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