震災と福島の原発事故をきっかけに、日本人は自分以外の誰も信じられなくなってしまったという残念なデータ(エデルマン・トラストバロメータより)

 先月、エデルマン・トラストバロメーターのセミナーに参加させて頂きました。
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 エデルマン・トラストバロメーターとは、世界26カ国で31,000人を対象に実施されている信頼度調査。各国のいろんな組織や人に対する信頼度がどのように推移しているのかを定点観測しているエデルマンの企画で、すでに13回目にもなる名物リサーチのようです。
 詳細のデータは、リリースやプレゼン資料がネット上に無料で開示されていますので、そちらをご覧いただければと思いますが。

 個人的に衝撃を受けたのがこちらの10ページのグラフ。
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 日本人の政府や企業、メディアなどに対する信頼度の推移のグラフなんですが、当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが、震災があった2011年を契機に、メディアや政府に対する信頼度が激減してるんですよね。
 推測するに原子力発電所の事故周辺の情報隠蔽疑惑の影響でしょうか。
 特に政府の失った信頼は震災から二年経った今でもまだまだ戻し切れていません。

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ローソンの製造小売宣言とアップルストア本に感じる、製造と小売を分けて考えることが時代遅れになる時代

 先日「CMO+CIO Leadership Forumで考える日本企業におけるマーケティングとテクノロジーの融合の難しさ」という記事を書きましたが、その際に一番衝撃を受けたセッションだったのが、ローソンの玉塚さんのプレゼンでした。
 プレゼンの詳細は下記の記事に出ていますが、
IBM CMO+CIO Leadership Forum Report:ローソン、ビッグデータ分析で「街」をもっと幸せに
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 最も衝撃を受けたのが下記の発言
「顧客の支持を得るためには、製造小売型のコンビニエンスストアを追求するしかない」
 ローソンと言えば、コンビニエンスストアですから教科書的に分類されるのは、当然「小売」業です。
 製造小売というのは、ユニクロや無印のように自らが製造した商品を自らの店舗で販売する業態を言うのであって、ローソンのような多数のメーカーの商品を販売するのが前提としている企業は、当然「小売」と定義されるべきでしょう。
 それが、明確に製造小売型を追求すると宣言されたのだからびっくりです。
 ある意味、これは現在コンビニに製品を並べているメーカーの方々への宣戦布告とも捉えられかねない発言なわけですが、玉塚さんの発言の趣旨としては、他のコンビニと全く同じ商品しか並んでいないコンビニでは顧客に選ばれないという危機感が後押ししていたように感じます。

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統計学が最強の学問である (西内啓)を読んで、あらためて統計や分析を学ぶことの重要性を再認識中です。

4478022216 「統計学が最強の学問である」は、タイトル通り統計学の価値について紹介されている書籍です。
 Cakesの加藤さんに教えてもらったので買ってみたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 正直、統計とか分析とかっていう単語を聞くと、一瞬で耳をふさぎたくなる理数科出身なのに文系受験して法学部に逃げた自分がここにいるわけですが。
 実はネットの進化やスマホの普及により、いわゆるビッグデータと言われる、利用者の動向が何でも分析できる時代がすぐそこに見えていることが明らかになっており、統計学の重要性は明らかに増していると感じます。
 実はビジネスにおいて、統計学のような数値を元に適切な判断を行うことは、インターネット以前から重要だったわけですが、最大の問題はデータが取れない、もしくは取るのに膨大なコストがかかること、でした。
 それが最近はデータ取得コストがあきらかに低下し、逆にデータが手元にありすぎて分析できていない時代に入っています。
 そういう意味で、この書籍のタイトルである「統計学が最強の学問である」というのは実に真実だなと感じます。
 昨日「CMO+CIO Leadership Forumで考える日本企業におけるマーケティングとテクノロジーの融合の難しさ」」というブログでも書いたように、マーケティングとテクノロジーの融合をするためには、テクノロジー側の人にマーケティングを理解してもらうのも重要ですが、マーケティングサイドの人間もテクノロジーやこういう統計や解析の世界の基本を抑えていく必要がましていると痛感します。
 この本ではそんな統計学の価値や可能性を分かりやすく解説してくれていますので、私のような統計学に苦手意識のある方でも取っつきやすいのではないかと思います。
【読書メモ】
■標準誤差を算出する
 標準誤差というのがどういったものかというと、サンプルから得られた割合に対して標準誤差の2倍を引いた値から標準誤差の2倍を足した値までの範囲に真の値が含まれている信頼性が95%という値
■データをビジネスに使うための「3つの問い」
・何かの要因が変化すれば利益は向上するのか?
・そうした変化を起こすような行動は実際に可能なのか?
・変化を起こす行動が可能だとしてそのコストは利益を上回るのか?

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CMO+CIO Leadership Forumで考える日本企業におけるマーケティングとテクノロジーの融合の難しさ

 先週IBMさんが主催された「CMO+CIO Leadership Forum」に光栄にもお誘いいただいたので当日の感想をメモしておきたいと思います。
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 当日の概要は、ITmediaさんがセッションごとに記事を書かれているので、そちらをご覧いただければと思いますが、イベントのタイトルにもある通り、CMOというマーケティングの責任者とCIOというシステムの責任者が両方とも対象になっている日本では珍しいタイプのイベントで、非常に刺激になる内容でした。
キヤノンの異色デジカメ「PowerShot N」が生まれた理由
ローソン、ビッグデータ分析で「街」をもっと幸せに
 実際、ビッグデータの議論でよく課題に挙げられるように、デジタルマーケティングの世界においてはマーケティングとテクノロジーのトップが連携して取り組むことの重要性が良く言われます。
 日本においては、そもそもCMOという役職自体が存在せず、その不在がマーケティング担当者の現場で嘆かれていたりしますが、さらにマーケティングの領域を統合するどころか、システム領域と連携しなければいけないわけで、縦割りの組織構造に慣れてしまった日本企業には難しい課題だなと思ったりするわけです。

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ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略 (小西圭介)は、ブランディング自体の位置づけの変化について考えさせられる本だと思います。

4478023492 「ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略」は、電通ブランドクリエーション・センターの小西圭介さんが書かれた書籍です。
 献本を頂いたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この「ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略」は、そんな小西さんが15年以上にわたるマーケティングコンサルのキャリアを元に、ソーシャルメディア時代のブランドの位置づけについて考察されている本です。
 ブランディング、というとどちらかというと製品や広告のイメージで印象をつくるという静的なイメージがあると思いますが、小西さんはそれを「形容詞のブランディング」と呼び、これからは「動詞のブランディング」というユーザーと企業が一緒に価値を生み出していくアクションとダイナミックなプロセスを軸にしたブランディングが重要になってくると提示されており、その実践に向けたやり方を具体的に紹介されています。
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 日本語の本なのに、あのデビッド・アーカーが推薦文を寄せてるって凄いですよね。
 何でもデビッド・アーカーが電通グループのアドバイザー的なことをされてるそうなので、それも影響してるのかもしれませんが。、それにしても二人で対談できるなんて羨ましすぎます。
【デービッド・A・アーカー氏×小西圭介氏対談】(前編) 企業が一方的にブランド価値を提供し、 メッセージやイメージを管理する時代は終わった
 私が小西さんに初めてお会いしたのは2009年までさかのぼることになると思います。
 まだ当時はツイッターの黎明期で、ソーシャルメディア自体の価値に多くの広告業界の人たちが疑問を持っていた時期だと思いますが、その頃から私の妄想のような話を真剣に聞いて頂いたのがとても印象に残っています。
(その関係で巻末の謝辞に私の名前も記載して頂いたようで本当に感激です。)
 ブランドコミュニティというタイトルから、いわゆる掲示板とかグループ的なネット上のコミュニティサービスをイメージされる方も多いかもしれませんが、この本はそういう本ではなく、ブランディング自体がコミュニティを意識して行わなければならないというブランド論の本です。
 ネットやソーシャルメディアの普及によりブランドの位置づけがどのように変化しているのか俯瞰的に考察してみたい方には参考になる点が多々ある本だと思います。
 「グランズウェル」や「マーケティング3.0」、「次世代コミュニケーションプランニング 」等を、あわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■人がブランドについて他者に伝えようとする動機(アーネスト・ディヒター)
・製品を購入し使用する経験が非常に目新しく、有用で愉快なため、人に伝えずにはいられない(33%)
・知識や見解を伝えることで、自分の判断への同意を求めたり、自分の優越を見せつけたりする(24%)
・つきあいがよく思いやりがあり、友好的であることを表現するために情報を伝える(20%)
・メッセージそのものの内容がおもしろかったり、有益であったりするために伝える価値がある(20%)
■ソーシャルメディア関与層の分類
・クリエイター層:独自のコンテンツを創造・発信したり、自らコミュニティの運営者となる 5%前後
・エディター層:ブログや写真投稿、情報の編集・加工などを行う層 10%前後 
・バリュアー層:主に情報に関してコメントをしたり、レビューを行う層 20%前後
・ブラウザー層:閲覧や視聴のみの利用を行っているユーザー層 65%前後
■マーケティングの定義の変化
・従来のマーケティング「顧客を創造する活動」
・今日のマーケティング「顧客と共に創造する」

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アップル 驚異のエクスペリエンス ー 顧客を大ファンに変える「アップルストア」の法則(カーマイン・ガロ)

4822249433 「アップル 驚異のエクスペリエンス 顧客を大ファンに変える「アップルストア」の法則」は、「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」や「スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション 」等の著書で知られるカーマイン・ガロ氏の書かれた書籍です。
 献本を頂いたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 カーマイン・ガロさんとは、「スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション 」の出版記念イベントでお会いしたことがあり、その際に三冊目を出すならどういうテーマかという議論はしていたのですが、アップルストアを持ってくるとは思いませんでしたね。
 
 ただ、この本を読んで、実はアップルストアは始めた当初は小売を敵に回すとか専門店が上手くいくわけないとかバッシングされてたのを思い出しましたが、この本を読むと実はアップルストアの存在が今のアップルの成功の下地になっていることが良くわかります。
 従来はアップルのような「メーカー」は、商品を開発するのに専念し、売るのは家電量販店とか小売に任せるのが一般的だったわけですが、実はアップルはその構造もアップルストアという自らの世界感の象徴をつくることにより、他のメーカーと全く違う存在になることに成功しているわけですよね。
 個人的には、最近力をいれはじめているNPSを、実はアップルは昔から使っていたというのを今更知ったというのも収穫でした。
  
 アップルについて興味がないという人こそ、この本を読んでみると新しい発見が多いのではないかと思います。
 「顧客ロイヤルティを知る究極の質問」や、「ザッポス伝説」をあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■ビジョンは一文で表現すべきです。語数は少なければ少ないほどいい。
■すばらしい職場をつくりたければ、人物で採用し、研修でスキルを身に付けさせるのが一番だ
■スティーブ・ジョブズが面接で必ず尋ねていた質問
 「なにか夢中になっているものはありますか」

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