朝日新聞記者のネット情報活用術 (平 和博)

4022734418 「朝日新聞記者のネット情報活用術」は、朝日新聞の平さんが新聞記者ならではのネット活用術について紹介されている書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 新聞記者の方々が実際にどのように情報収集をして日々のアウトプットをこなしているのかというのは、単純に新聞やニュースサイトを見ているだけではなかなか見えてこない情報だと思います。
 この本では、朝日新聞の中でもネット関連に非常に強いと有名な平さんのノウハウがかなり赤裸々に描かれていますので、プロの情報活用術を学びたい方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■本書の構成
・収集:ネットで情報を集める
・保存:情報をためる
・確認:情報を見極める
・編集:情報のまとめ方
・発信・共有:ソーシャルが変えるメディア空間
・発信・共有:ソーシャルの実践
・安全:ルールを考える
■情報は整理すべきではない
 いまは、急速にデジタル情報が主流になりつつあります。そして、デジタル化された情報のあつかい方は、紙の情報とは根本から違うようなのです。その勘所は「整理をしない」ということに尽きます。

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ハーバードビジネススクールが教えてくれたこと、教えてくれなかったこと (ビル・マーフィー・ジュニア)

4484111179 「ハーバードビジネススクールが教えてくれたこと、教えてくれなかったこと」は、ハーバードビジネススクール出身の起業家の実話をもとに企業のポイントについて考察している書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、ハーバードビジネススクールの3名の卒業生の実際の経験談をもとに、起業におけるポイントを俯瞰的に解説されていますので、いわゆる有名な成功事例だけでなく、少し身近なケースをもとに起業の心構えを勉強したい方には参考になる点がある本だと思います。
 ハーバードとスタンフォードの両方の空気を感じてみるという意味では「20歳のときに知っておきたかったこと」とあわせて読むのも面白いかもしれません。
【読書メモ】
■ほとんどのベンチャー企業は、地味で変動の乏しい業界で誕生する
 7年続くベンチャー企業は3割しかない
 典型的なベンチャー企業の資本金は2万5千ドルに満たず、創業者が自腹で捻出している
■起業家として成功するための10のルール
・成功を固く決意する
・まず問題を見つけ、それから解決策を考える
・大きく考える、新しく考える、もう一度考える
・1人ではできない
・1人でやらなくてはいけない
・リスクを管理する
・リーダーシップを学ぶ
・売り込み方を学ぶ
・粘って、辛抱して、勝つ
・一生つづける

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イノベーションのDNA(クレイトン・クリステンセン) を読むと分かるイノベーションを起こしたい日本人にとっての良いニュースと悪いニュース。

4798124710 「イノベーションのDNA」は、「イノベーションのジレンマ」の著者として知られるクレイトン・クリステンセンの新作です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 10年以上前にイノベーションのジレンマを読んで受けた衝撃は、個人的には忘れもしませんが、イノベーションのジレンマでは解決されていなかった疑問の大きなものの一つが、「イノベーションのジレンマで描かれているような破壊的イノベーションを生み出せるような人になるにはどうすれば良いか?」です。
 実際のイノベーションの起こし方自体は「明日は誰のものか」や「イノベーションへの解」などでも描かれていますが、今回のフォーカスは最も重要なイノベーションを引き起こす「人」自身になります。
 たいていの人はスティーブ・ジョブズや、ジェフ・ベゾスのような典型的な破壊的イノベーターを前にして、ああいう感覚や才能は天性のもので、生まれつきの性格で決まるから、自分には無理だろう、と思ってしまうもの。
 ところが、今回のイノベーションのDNAにおいて、クレイトン・クリステンセンは、そういった創造性は「生まれ」ではなく「育ち」の方が重要で、イノベーターは育てることができると説いています。
 そういう意味では、私たち誰もが努力すれば破壊的イノベーターになりうるという意味で、この本は救いがある本だと言えるのですが。
 一方でこの本を読んできつい一発をくらったと感じたのが、日本のような「個人より社会を、実力より年功を重視する国で育った人が、柔軟な発想で現状を打破してイノベーションを生み出す事が少ない」というくだり。
 個人的には戦後の日本というのは文字通り様々な破壊的イノベーターを生み出してきたと信じていますが、その後の高度経済成長や高齢化を通じてできた社会構造とか社会の雰囲気により、実は日本自体が構造上破壊的イノベーターを生みづらい構造になってきている可能性があるわけです。
 このあたりは、先日ご紹介した「20歳のときに知っておきたかったこと」とも通じる話だと思いますが、やはり日本が現在の構造的な右肩下がりの構造から脱するために本気でイノベーションを生み出す国に生まれ変わろうとするならば、ビジネスマン一人一人の努力とは別に、学校や企業内の教育構造とか、評価に対する考え方とか、いろんなものを根本的に変えないといけないのかもしれないな、と感じます。
 新しいイノベーションにチャレンジしたい若い世代の人だけでなく、大組織でイノベーションを起こしたいと考えている経営者やマネージャーの方々にも是非読んで頂きたい本だと思います。
【読書メモ】
■イノベーターの四つのタイプ
・スタートアップ起業家
・企業内起業家(企業内でイノベーティブな事業を立ち上げた人たち)
・製品イノベータ(新製品を開発した人たち)
・プロセス・イノベータ(画期的なプロセスを導入した人たち)
■革新的なアイデアが生まれるきっかけ
・現状に異議を投げかける質問
・技術や企業、顧客などの観察
・新しい事を試した体験や実験
・重要な知識や機会に目をむけさせてくれた会話
■創造性に関する限り、「生まれより育ち」
 このことは、日本や中国、韓国、多くのアラブ諸国など、個人より社会を、実力より年功を重視する国で育った人が、柔軟な発想で現状を打破してイノベーションを生み出す事が少ない理由を部分的に説明する。
■イノベータDNA
・関連づける力
・質問力
・観察力
・ネットワーク力
・実験力

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パーミッション・マーケティング(セス・ゴーディン)は、出版されてから10年以上たった今だからこそ改めて読み返すべき本だと言えそうです。

4903212297 「パーミッション・マーケティング」は、インターネット・マーケティングの第一人者であるセス・ゴーディンの書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 パーミッション・マーケティングは、もともと日本で最初に出版されたのが1999年。インターネットの特徴を真正面からとらえた原点的な書籍と言える本だと言えます。
 日本のマーケティング業界においては、この次の著作である「バイラルマーケティング」というフレーズの方が一般化している印象もありますが、なんといってもすべての始まりはこの「パーミッションマーケティング」。個人的にもまだNTTにいた頃にこの本を読み、衝撃を受けた記憶があります。
 今回のパーミッション・マーケティングは翻訳書の契約が切れたか何かで、出版社が代わり再出版されたものになるようです。
 今回10年以上ぶりにパーミッション・マーケティングを読んで改めて思うのは、この10年間でいわゆるホームページ時代からソーシャルメディア時代に変わったと言ってもマーケティングの基本的な変化のトレンドは実はこのパーミッション・マーケティングで予見されていた世界とたいして変わっていないんだなということ。
 10年前のパーミッション・マーケティングの手段の代表はメルマガでしたら、現在はそれがFacebookページやTwitterアカウントにも展開しているだけで、基本的な概念や大事なこと、マスマーケティングとの違いなどの議論は、今読んでもほとんど古く感じませんから不思議なものです。
 インターネットがマーケティングの世界に引き起こしている根本的なパラダイムシフトの本質を見直したい方には、是非今だからこそ読むべき本ではないかと思います。
【読書メモ】
■広告は大して役に立っていない。その効果を計量したり検証したりすることは難しいし、予測もできない。しかも高くつく。
■インターネットはすべてを変える。マーケティングも例外ではない。旧式のマーケティングはいずれ死んでゆくだろう。
■インタラプション・マーケティング
 マーケターはこの90年間、ほぼ一種類の宣伝広告だけに頼ってきた。
 消費者がそのときやっていることに割り込んで商品のことを考えさせることを狙った広告ばかり
■広告の定義
「消費者の嗜好の邪魔をして、なんらかの行動をとらせるメディアの創出、および配置の科学」

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デイヴィッド・オグルヴィ 広告を変えた男(ケネス・ローマン) を読むと、広告の本質がこの50年間でそれほど変わってないことを痛感させられます。

4903212327 「デイヴィッド・オグルヴィ 広告を変えた男」は、「現代広告の父」といわれるデイヴィッド・オグルヴィの人生と1950~60年代の広告業界の変遷を描いた書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 デイヴィッド・オグルヴィという名前は「ある広告人の告白」の著者としても知られています。ただ、個人的には正直「ある広告人の告白」は読んでもあまりピンときませんでしたが、今回の書籍を読んで、彼がいかに広告業界に大きな影響を与えたのかが理解できました。
 興味深いのは、彼が話しているポイントが、2012年の現代においてもそれほど色あせて聞こえないこと。
 広告における評価基準の話だったり、リサーチの重要性の話だったり、本を読んでいて50年前の話だと思えないのが実に考えさせられるところです。
 この辺の話は「広告に恋した男」を読んだときにも思いましたが、実は広告の本質というのはこの50年間でそれほど大きく変わっていないということなのだろうなと、考えさせられます。
 広告の本質を一歩引いて考えてみたい方には刺激になる点が多々ある本だと思います。
 日本の広告業界との比較ということで「この人 吉田秀雄」と比べて読んでみるのもおもしろいかもしれません・
【読書メモ】
■オグルヴィの成功の大きな要因は、手に入れたいもののために惜しみなくエネルギーを注ぎ込んだことにある
■書くときは猛烈、でも面と向かうとたいてい気弱だった。ある営業担当者は、オグルヴィに向かって三歩詰め寄っただけで、どんな議論にも勝てそうな気がしたという
■1885年には、広告というビジネスをプロフェッショナルにすべく「ハウツー本」が相次いで出版されるようになる
・メイザー・アンド・クロウザー「実践的広告」
・ベンソン「広告の知恵」「広告の力」
・J・ウォルター・トンプソン 「広告紳士録」
■ベンソンは広告には売上以外の評価基準はないとしていた

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20歳のときに知っておきたかったこと(ティナ・シーリグ)を読むと、日本の教育方針自体を根本的に見直した方が良いのでは無いかという気がしてきます。

4484101017 「20歳のときに知っておきたかったこと」は、スタンフォードの人気教授であるティナ・シーリグ氏の書籍です。
 NHKの白熱教室を見て面白かったので、本も買って読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 実は以前本屋に山積みになっているのを横目で見つつ、タイトルからてっきり若者向けの自己啓発書のたぐいかと勘違いしてしまっていたのですが、実はこの本はいかに「起業家精神」や「イノベーション」を生み出す力を養うべきかという根本的な問いに向き合っている本です。
 個人的にこの本を読んで実に悲しい気持ちになったのは「リスクを取ろうとする意欲と、失敗に対する反応は、国によって大きなばらつきがあります。失敗したときの悪い面が多すぎて、個人がリスクに対して過敏になり、どんなリスクも取ろうとしない文化があります。こうした文化では、失敗が「恥」と結びついていて、若い頃から、成功の確率が高い決まった道を歩くよう教育されています。」というくだり。
 まぁ、明らかにこれって現在の日本のことですよね。
 学生の公務員志向とかが想像以上に強かったりする話とかを聞いていると、本当に現在の日本が構造的に、リスク回避の若者を生み出して、社会がどんどん硬直していく未来を想像してしまい正直ぞっとします。
 ただ、日本も戦後はソニーやホンダの経営者に象徴されるように、リスクを積極的に取ることが実践されていましたし、日本の文化自体が、リスクを取ることを回避する文化だったとは思えません。
 現在のリスク回避の姿勢は、実際には高度成長期に生み出されたものではないかと個人的には思っていますし、逆に言うと現在の教育方針自体を根本的に方針転換することができれば、実はイノベーションにチャレンジする若い世代をもっと増やすことができるはずだという気もしてきます。
 もちろん、だからといって昨今のスタートアップブームに乗って誰も彼もが起業すれば良いという話ではありませんが、イノベーションにチャレンジする人が増えなければ、成功するイノベーションも増えないわけで。
 そういう意味では、この本は企業を目指す若い世代だけでなく、若い世代を教育する立場にある方々、教育制度や社内教育プランを考える立場にある方々にもぜひ読んで欲しい一冊だと思います。
【読書メモ】
■「これから五日間、封筒を開けてから四時間のあいだに、このクリップを使って、できるだけ多くの「価値」を生み出して下さい」
・チャンスは無限にあります
・問題の大きさに関係なく、いまある資源を使って、それを解決する独創的な方法はつねに存在する
・わたしたちは、往々にして問題を狭く捉えすぎています
■じつは、学校で適用されるルールは、往々にして外の世界のそれとはかけ離れています。このギャップがあるために、いざ社会に出て自分の道を見つけようとすると、とてつもない重圧にさらされることになります。
■学校では、要するに、誰かが勝てば、誰かが負ける仕組みになっています。これではストレスが溜まりますが、組織はふつう、そのようにできていません。自分が勝てば周りも勝ちます。

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