先日、コカ・コーラさん招待の上海ツアーについてご紹介してから、すっかり間が空いてしまいましたが、上海ツアーの過程でコカ・コーラさんのアトランタ本社のソーシャルメディアへの取り組みについてのプレゼンを聞ける機会があったので、ここでご紹介しておきたいと思います。
(Photo by coolinsights)
プレゼンをしてくれたのは、Digital Communications Managerのナタリー・ジョンソンさん(NatalieJohnson)。なんでも33歳ぐらいだそうですが、以前GMでもソーシャルメディアの担当をされていたとかで、コカ・コーラの今後のソーシャルメディア関連の活動の中心人物という印象でした。
プレゼンの詳細は記事の最後につけた動画をご覧いただければと思いますが。
個人的に特に印象に残ったのが、ソーシャルメディア活用の「4R」
Review、Respond、Record、Redirectという四つのキーワードの頭文字を踏まえたメッセージです。
順番に簡単にご紹介すると下記の通り。
【ソーシャルメディア戦略の4つの「R」 (4R Social Media Strategy)】
■Review
まず、ソーシャルメディア上の発言をレビューする。
コカ・コーラは英語だけでも一日に5000件以上言及されているので、Radian6やScoutlabsのようなサービスを活用してモニタリングの仕組みを構築するのが重要とのこと。
米国のソーシャルメディア関連のプレゼンや講演では、まず最初にこうしたレビューとかListenがキーワードに並ぶことがかなり当たり前になってきた印象です。
■Respond
次にポイントとなるのがソーシャルメディアへの反応の仕方。
ソーシャルメディア上で実施されているのは、対話や会話であり、利用者に関係のある対応をすることが重要。
コカ・コーラではOnline Social Media Principlesなるソーシャルメディアポリシーを設けたり、Blog Squadなる専門チームを構成することで、利用者との会話につとめているとのこと。
■Record
個人的にちょっと新しいなと思ったのが、このレコード(記録と訳していいんでしょうか?)というキーワード。
当日は事例としてコカ・コーラが過去に実施したHappiness Machineというビデオが紹介されましたが、企業のRespondのプロセスを、真面目な対話だけでなくエンターテイメント要素のあるビデオ等でも共有していくべき、という趣旨のようです。
キーワード的には、何かしらの活動を実施したのであれば、それを必ず記録してソーシャルメディア上で共有しようという趣旨も含まれているように感じました。
■Redirect
最後のRは、リダイレクト。直訳すると「向け直す」とかになってしまいますが、どちらかというと利用者にいかに上記のRespondやRecordで生成されたコンテンツを見せていくかと言うポイントのようです。
YouTubeやFacebookなどソーシャルメディア上に散らばっているコンテンツを、いかにSEOやSEM、相互リンクなどで利用者の目に触れるようにするかに注力されているとのことでした。
あまり細かくは言及されなかったのですが、ここはいろいろと工夫の方法がありそうな気がします。
グーグル的思考 (ジェフ・ジャービス)
「グーグル的思考」は、米国でブロガーとしても有名なジェフ・ジャービス氏がグーグル的経営手法の可能性について考察した書籍です。
かなり以前に買って読んでいたのですが、読書メモを書いてなかったので遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
タイトルだけ見ると、「ザ・サーチ」のようにグーグル自体の分析をしている本のように見えてしまうかもしれません。
ただ実は、この本で考察されているのはもともとの英語での書籍のタイトル「What Would Google Do? (グーグルならどうする?)」にあるように、インターネット時代の経営やマーケティングをグーグルのように全く新しい視点で考えようと言うメッセージです。
ジェフ・ジャービス自身が、米国で有名な炎上事例であるDELL HELLというネガティブキャンペーンのきっかけとなった人でもあり、自らの体験も踏まえての「客との関係をひっくり返してみよう」というメッセージを企業に提示しているわけです。
インターネットやソーシャルメディアの進化によって企業がつきつけられている本質的な課題や可能性について考えさせられる本ですので、ソーシャルメディアを活用したマーケティングに携わる方だけでなく、経営企画や顧客サービスを担当している方々にも是非読んで欲しい本です。
「グランズウェル」や「ブログスフィア」、「ビジネス・ツイッター」と合わせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■デルヘル(デル地獄)2005年6月
ジェフ・ジャービスのデルに対する批判記事が、グーグルで「デル」を検索した際に、1ページ目に表示されるように
→2005年8月 ビジネスウィーク誌がこの一件を記事に
■ジェフ・ジャービスからのデルに対する助言(2005年8月)
・ブログを読むこと
彼らを単なる「ブロガー」と侮ってはいけない。彼らこそ、消費者であり、市場であり、運が良ければあなたの顧客となる人々なのだ。
・消費者と対話する。
ブログに対する御社の方針は「見るには見るが、介入しない」だそうだが、それは消費者に対する侮辱だ。
・ブログを開設する。
ブログを書くことで、御社が消費者との対話を恐れていないことの証になるからだ。
・マスコミやブログ上の悪い評判に耳を傾け、自らに問題があることを認める。
その上で、今後どのように向上していくかを示してくれれば、こちらも力になれる。
■その後のデルの対応
→2006年4月 不満や解決策を提示しているブロガーたち一人一人と接触するように。
→2006年7月 デルのブログ「ダイレクト・トゥ・デル」が開始
ライオネル・メンチャカが登場してから事態は一変悪名高き炎上パソコンについても、真っ向から話しあった。
→2007年2月 マイケル・デルはアイデア・ストームの立ち上げを命じた
→2007年 1億5000万ドルを投じて、悪名高い顧客サポートセンターのテコ入れを図った。(処理時間を計測する代わりに、問題一つの解決にかかる時価を計測するようにし、電話たらい回しの問題を45%から18%にまで削減)
→デルに対する不満をブログに書いたら、デルから連絡が来て問題が解決したという記事が、様々なブログ上で見られるようになった。
ザッポスの奇跡 (石塚しのぶ)
「ザッポスの奇跡」は、非常に特徴的な経営手法で注目されているザッポスについて考察されている書籍です。
河野さんが推薦されてたので、気になって買って読んでいたのですが、読書メモを公開できてなかったので書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
浅い理解でのMBA的な世界で一般的に言われている顧客サービスの常識や、経営の常識というのは、実は所詮ここ数十年で形成されたものにしか過ぎません。
特にインターネットによって価値観や、コミュニケーションのコストが大幅に変化している中、一般的な正解というのを元に教科書的な経営手法を行うことが、いかに視野が狭いアプローチかと言うのを、この本を読むと思い知らされます。
もちろん、ザッポスが実践しているような顧客第一主義を本当に実践した経営手法は、実はインターネット以前からも実践している企業はあり、個人的にはザッポスはネット時代版ノードストロームやフォーシーズンズホテルという印象も強いのですが。本荘さんのコラムによるとすでにザッポスはノードストロームも超えているという印象もあったりするようです。
当然、だからといってザッポスの経営手法をコピーすれば、どんな会社でも成功すると言うわけではない、というのがまた難しいところなのですが。
インターネットによる構造的な変化が、経営手法や顧客サービスにも新しい選択肢を提示してくれているわけで、そんな新しい可能性を真剣に考えてみたい方には、是非オススメしたい本だと思います。
【読書メモ】
■「幸せのデリバリー」
人や状況によって、サービスの「行動」は違うが、結果として生まれるのは、社員にとっても、顧客にとっても、「忘れがたい体験」である。
■「サプライズ・アップグレード」
リピート顧客に対しては、無条件で翌日配達サービスにアップグレードする
■「普通の会社ならTV広告などマス・メディア広告に大枚をはたくところを、ザッポスではそれを選ばず、代わりに、顧客サービスに投資しているのです」
グリーン革命 (トーマス・フリードマン)
「グリーン革命」は、「フラット化する世界」の著者としても有名なトーマス・フリードマンが、環境関連問題の課題や事業の可能性について考察した書籍です。
フラット化する世界に非常に大きな影響を受けたこともあり、こちらの本も買って読んでいたのですが読書メモを書いてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
我々は環境問題をどちらかというと、経済やビジネスの足かせとなる義務や責任として考えがちですが、実は環境問題に真剣に取り組むことで、ビジネスにおける競争優位も確立することができる、というのがこの本で提示されている視点です。
この書籍自体は米国に対するメッセージが中心になっているのですが、逆に日本が成功事例として紹介されており、日本人にとっては日本ならではの事業の可能性として、一つの光明を見いだすことができる本と言えるのではないかと思います。
先日の「コカ・コーラ上海ツアーでも感じましたが、この書籍で書かれているように日本が環境問題に対する最先端の事例であり続ければ、当然中国は日本の最新技術を売り込む非常に有望な市場となるわけで、あらためて日本の地理的優位性を感じてしまったりもします。
昨今続く暗いニュースや政治的混乱から、日本の未来を悲観的に感じてしまっている方に、是非読んで欲しい本です。
【読書メモ】
■「グリーンとは、電力を生み出す単なる新方式ではない。グリーンとは国力を生み出す新方式なのです。」(カーネギー財団 デビッド・ロスコフ)
■温暖化、フラット化、人口過密化する世界で急激に深刻化している5つの重要な問題
・供給が細りつつあるエネルギーや天然資源への需要の増大
・産油国と石油独裁者への莫大な富の集中
・破壊的な天候異変
・電力を持つものと持たざるものを二分して起きているエネルギー貧困
・動植物が記録的な速さで絶滅し、生物多様性の破壊が急速に進んでいること
■「サウジアラビアとリビアは、テロとの戦いにおいてアメリカに全面的に協力する同盟国と見なされているが、昨年自爆テロその他の攻撃を行うためにイラクに来た外国人勢力の60%が、両国の出身者だった」(ニューヨーク・タイムズ)
Me2.0 (ダン・ショーベル)
「Me2.0」は、ソーシャルメディアが当たり前にあるいわゆるWeb2.0時代におけるパーソナルブランディングの在り方について考察した書籍です。
出版社の方から献本を頂いてたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
かなり前に、「パーソナルブランディング」という本を読んだことがありますが、このMe2.0で描かれているのはいわゆる一般的なパーソナルブランディング論ではなく、ブログやSNSが当たり前にあるソーシャルメディア時代におけるパーソナルブランディング。
執筆者も20代の若手らしく、個人がソーシャルメディアをいかに活用するべきかと言う方法論がかなり具体的に描かれています。
ソーシャルメディアの進化により、会社と個人の関係が変化する可能性を感じている人には、参考になる点がある本だと思います。
佐々木俊尚さんの「ネットがあれば履歴書はいらない」に影響を受けたという人には特にオススメです。
【読書メモ】
■パーソナルブランディングを実践する人が増えた本当の理由は、SNSの急速な成長と人気にある。パーソナルグーグリング(個人名をグーグルで検索すること)は、今やひとつの現象であり、人々は互いの名前を驚くほど頻繁に検索している。
■ブランドイメージは見た目の影響を強く受ける
■Web1.0の特徴は、Me1.0にも当てはまる。人々は会社ブランドの陰に隠れ、企業ロゴを盾に外部の世界から身を守っていた。個人が人脈を広げるために使えるツールはほとんどなく、人々は黙って会社の方針に従った。
■「Y世代は「ID世代」ともいわれます。IDとは、「私には(良いものを)受け取る権利がある(I Deserve)」の略です。この世代は、社員としての評判はあまり良くありません。あてにならないし、ひとつの企業に忠誠をつくそうという気もありませんから。」(ロビン・ライアン)
企業のTwitter運営ポリシーを9つの視点から考える(その2) を日経NMに投稿しました。
日経ネットマーケティングで連載を行っているコラム「カンバセーショナルマーケティングの近未来」に新しいコラムを書きました。
今回も、前回に引き続き、Twitterの具体的なマーケティング活用について考えてみています。
不明点や不足点等ありましたら、記事の方でもこちらのブログでも遠慮無くご指摘下さい。
■企業のTwitter運営ポリシーを9つの視点から考える(その2)
「前回のコラムでは、企業のTwitter運営ポリシーを9つの視点に分け、その中からユーザーとコミュニケーションを行わない前提の3分類について紹介しました。
Twitterの運営ポリシーの9分類
今回は引き続き、Twitterユーザーとコミュニケーションを図るパターンの運営ポリシーについて考えてみたいと思います。」
※このコラムでは、先日公開したカンバセーショナルマーケティングの講演資料でまとめた話の掘り下げだとか、実際にソーシャルメディアを活用したマーケティングを実践する際のステップなどを書いていければと思っています。