オウンドメディアコミュニケーション(後藤洋、福山一樹)

4797369302 「オウンドメディアコミュニケーション」は、タイトル通りオウンドメディア活用について考察されている書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 いわゆるトリプルメディアの概念においては、オウンドメディアとペイドメディアが古い従来のもの、アーンドメディアがソーシャルメディアを中心とした新しい概念と語られることが多いように思いますが、実はソーシャルメディアの普及により最も重要性を増しているのはオウンドメディアだと感じています。
 アーンドメディアはあくまで利用者のクチコミや評判などコントロールができない部分になりますが、オウンドメディアこそが企業が自らを主語に構想を組み立てることができる本丸です。
 そういう意味で、この書籍はいわゆる自社サイトの位置づけ自体を根本から振り返りたい方には参考になる点がある本だと思います。
 「パーミッション・マーケティング」や「インバウンド・マーケティング」をあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■ウェブが人を中心にした構造へと変化することは、もはや止めることのできない流れと言えるだろう。
 それは小さな軌道修正というレベルの話ではない。いまのウェブは根本から作り替えられようとしているのだ。
■従来のゲーム業界で一般的だった評価指標に照らしてみると、ジンガのゲームはあらゆる面で劣っていると言えるだろう。ただし他社のゲームにはない特徴が一つだけある。
 それはプレーヤーと、プレーヤーの人間関係を中心にゲームが構築されているという点だ。
■携帯電話のアドレス帳に何百という連絡先が登録されていたとしても、その中のたった4人を相手にした通話が、通話全体の80%を占めているのである。

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マーケティング戦略の未来(ブーズ・アンド・カンパニー)

4532317185 「マーケティング戦略の未来」は、タイトル通りマーケティングの未来について考察している書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この書籍では著者グループであるブーズ・アンド・カンパニーが、俯瞰的な視点からマーケティングの未来について分析されています。
 特に米国と日本の広告代理店の位置づけや変化の違いについての考察は、第三者ならではの視点から分析されていますので面白いです。
 マーケティングの未来を考えてみたいという方はもちろん、マーケティング業界の構造自体を学びたいという方にも参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■消費者は、買いたい時に情報を検索すればいいということに気づき、当分その商品は買わないという状態で広告に接しても、その内容を記憶にとどめようとしなくなった
■デジタル時代の新たなマーケティング環境には「常時接続(Always On)という特徴がある
■スーパーCMO
 従来のマーケティング担当役員たちよりもメディアに精通し、より広告の効果測定を重視している。単にマーケティング・キャンペーンを管理したり、広告業者を監督したりするだけでなく、会社の業績やイノベーション、成果を伸ばすことにこだわる
■ナイキのマーケティング戦術は、洒落たキャッチフレーズや印象的なロゴをちらつかせることから、消費者の体験を重視するものに変わったのである

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顧客ロイヤルティを知る究極の質問(フレッド・ライクヘルド) は、NPS(ネットプロモータースコア)を理解するための必読本です。

427000147X 「顧客ロイヤルティを知る究極の質問」は、ベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルド氏が書いたNPSの解説書籍です。
 かなり前に読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本は、最近ソーシャルメディア関連の効果測定の手法としても話題に出ることが増えてきたNPS(ネットプロモータースコア)のバイブルということができる本です。
 私個人がNPSについて興味をもったのは3年ぐらい前にツイッター関連のイベントでデルさんと無印良品さんとパネルディスカッションをご一緒した際に、NPSを指標としているという話を聞いたからなのですが、実は米国ではNPSはかなり多くの企業の経営指標として使われるようになっていて、人事評価と連動させている企業も少なくないようです。
 NPS自体の解説はこちらのページに出ていますが「ネットマーケティング・キーワード – NPS とは:ITpro」、要は「あなたはそれを友人や同僚に薦めたいと思うか?」という問いに対する答えを、0~10の11段階で調査。10~9をプロモーター(推奨者)、8~7をニュートラル(中立)、6以下をデトラクター(非難者)に分類する。プロモーターが占める%比率からデトラクターが占める%比率を差し引いた%数値をNPS指標とするもの。
 一件日本でもよくある5択の質問が11択になっているだけのようにも思われるかもしれませんが、明確にポイントでプロモーター、ニュートラル、デトラクターと分類して、それぞれの傾向を深掘りして対策をしようとPDCAを回す点が大きな特徴でしょう。
 実はAMNでも今年からNPSを導入してみているのですが、確かになかなか興味深い結果が出てきます。
 顧客のロイヤリティーや満足度の測り方に悩んでいる方はもちろん、ソーシャルメディアの効果測定に悩んでいる方にも参考になる点が多い本だと思います。
 「グランズウェル」や「エンパワード 」とあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■悪しき利益と良き利益
 顧客とのリレーションシップを犠牲にして得られる利益が悪しき利益なのである
■悪しき利益の悪影響は、そのほとんどが、悪しき利益が作り出す「批判者(デトラクター)」の手によってもたらされる。
 あまりのひどさに、こうした顧客は購入額を減らし、可能ならば競合他社に乗り換える。また、そんな思いをさせた企業を避けるよう周囲に警告を発する。
■推薦者(プロモーター)
 満足客たちは、実質的にその企業のマーケティング部門の一部となり、みずから購入額を増やすだけでなく、人にも熱心に推奨してくれる。

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ウェブはグループで進化する(ポール・アダムス)を読むと、インフルエンサーに対する過度な期待が神話になろうとしていることが見えてきます。

4822249115 「ウェブはグループで進化する」は、Google+やフェイスブックの開発に携わっている開発者ポール・アダムスがウェブの変化の本質について考察している書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本の原題は「Grouped」。
 ウェブの世界がコンテンツ中心から人中心に変わることにより、小規模なグループにおける会話の流れに注目することが非常に重要である、というのがこの本のテーマです。
 
 従来のマーケティングの世界においては、芸能人や著名人など、一握りの超有名人としての「インフルエンサー」を通じてメッセージを発信することが効率が良いとされている印象がありますが、この本において著者は人のコミュニケーションのほとんどは親しい数人との間で行われており、そういった小規模なグループに注目する方が重要であると言う問題提起を行っています。
 ソーシャルメディアの世界においても、ウェブサイトからブログ、SNSと参加の敷居が下がるに従い、明らかに影響力は分散していく傾向にありますし、いわゆる普通の人が友人や知人に対して影響を与える機会も増えているように感じます。
 ウェブの本質的な未来が気になる人はもちろん、マーケティングに携わっている人にも参考になる点が多々ある本だと思います。
 
 「[徳力]パーミッション・マーケティング」や「インバウンド・マーケティング」をあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■ウェブが人を中心にした構造へと変化することは、もはや止めることのできない流れと言えるだろう。
 それは小さな軌道修正というレベルの話ではない。いまのウェブは根本から作り替えられようとしているのだ。
■従来のゲーム業界で一般的だった評価指標に照らしてみると、ジンガのゲームはあらゆる面で劣っていると言えるだろう。ただし他社のゲームにはない特徴が一つだけある。
 それはプレーヤーと、プレーヤーの人間関係を中心にゲームが構築されているという点だ。
■携帯電話のアドレス帳に何百という連絡先が登録されていたとしても、その中のたった4人を相手にした通話が、通話全体の80%を占めているのである。

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動員の革命(津田大介) を読むと、ソーシャルメディアの可能性はオンラインだけではなく、オフラインで実際に人を動かすことができる点にあると再認識できるはず。

4121504151 「動員の革命」は、「Twitter社会論」などでおなじみの津田大介さんがソーシャルメディアの本質について考察している書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この書籍で津田さんは、ソーシャルメディアの本質を情報発信ではなく「動員」という一点に絞って、考察を展開されています。
 実際問題、アラブの春やオキュパイウォールストリートなど、世界的にソーシャルメディアによる動員拡大の効果は見え始めていますし、日本でも脱原発デモをされてる人たちがソーシャルメディアを一つの情報インフラとして使っているようですから、この視点は非常に興味深い指摘だと言えます。
 津田さん自身も、自ら復興支援などにツイッターの動員力を最大限活用していた方ですから、そんな津田さんならではの実体験に基づく理論と言えることもできるかもしれません。
 ソーシャルメディアの普及によって、社会の何が変化しようとしているのかが気になっている方には参考になる点が多い本だと思います。
 「ドラゴンフライエフェクト」や「逆パノプティコン社会の到来」をあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■ソーシャルメディアの本質は「誰でも情報を発信できるようになった」という、陳腐なメディア論で言われがちなことではなく、「ソーシャルメディアがリアルを拡張したことで、かつてない勢いで人を動員できるようになった」というところにあるのです。
■ソーシャルメディアは、それ単体で政治的な圧力になったわけではありません。広場に何百万人も集まるという、民衆のデモが圧力になったのです。
■ソーシャルメディアというのは、実は人が行動する際に、モチベーションを与えてくれるもの-言い換えると背中を押してくれるメディアとして機能しているのです。

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愛されるアイデアのつくり方 (鹿毛康司)は、企業の広告やコミュニケーションを語るなら、絶対に読んでおくべき本だと思います。

4872905660> 「愛されるアイデアのつくり方」は、消臭力で有名なエステーの宣伝部長をされている鹿毛康司さんが、広告のあり方について考察している書籍です。
 献本を頂いていたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 エステーのテレビCMというと、「この部屋におうよ」やシュパッと消臭のお殿様など、インパクトのあるテレビCMで有名ですが、その数々のテレビCMを手がけられているのがこの鹿毛さんです。
 私自身、セミナーでご一緒させて頂いたことがあり、そのプレゼンに衝撃を受けたのですが、実は雪印事件の時の信頼回復の広報をされていたりという背景もあり、異色の宣伝部長ということができるでしょう。
 
 しかも、自らテレビCMに登場していて、宣伝部長としてのツイッターアカウントを持っていたりと、何から何まで規格外の方です。
 
 そういう意味で、エステーのアプローチは「奇策」やネタ重視という印象が強いかもしれませんが、本書に書かれているように実は鹿毛さんが広告の本当に本質的なところを突き詰めているから結果的に奇抜なアプローチを選択していると言うことが分かってくると全ての見え方が大きく変わってきます。
 実際、震災後に生まれたミゲルくんの消臭力のコマーシャル、それを起点にツイッターでのやり取りから生まれたTMRevolutionの西川さんとのコラボCMのくだりを見ていると、鹿毛さんがいかに本質を大事に日々真剣にCMのことを考えているか伝わってくると思います。
estecm.png
 そのあたりは昔日経ビジネスのコラムにも書いたのでそちらを見て頂ければと思いますが。
消費者と企業が一緒に広告を作る新しいカタチ
 この本は広告やアイデアについて語られている本ではあるのですが、ノウハウ本と言うよりも鹿毛さんの生き方が詰まっている本と言えます。
 広告系の本を読んで正直この本ほど思わず泣きそうになってしまった本はありません。
 
 全ての広告やコミュニケーションに携わる方に読んで欲しい本だと思います。
【読書メモ】
■2000年に「雪印事件」が起きる。
 僕は、現場に長く留まり、被害を受けられた方々への対応を続けた。
 その後、有志7人で「雪印体質を変革する会」を立ち上げ、信頼回復に向けて全力を尽くした。このとき、企業に勤めるビジネスマンとして、お客様と「心」の通うコミュニケーションを取ることがいかに難しいかを痛感させられたものだ。
■震災前に撮影したCMを「新作」として放映していいのか?何もなかったような顔をして流すのが、企業として、人間として、まっとうなことなのか?
 僕には、とてもそうは思えなかった。

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