パブリック(ジェフ・ジャービス)を読むと、ソーシャルメディア時代にプライバシーというものを重視しすぎることによるデメリットについて考えさせられると思います

4140815132 「パブリック」は、「グーグル的思考」などの著作でもしられ、米国でブロガーとしても有名なジェフ・ジャービス氏がソーシャルメディア時代の新しいパブリックの定義について考察した書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本は、小林弘人さんが監修をされているという意味で「フリー」「シェア」に続く三部作の三作目という印象もある書籍です。
 パブリックという言葉は日本ではあまりなじみがありませんが、プライバシーの対極にあるものというとイメージしやすいでしょうか。
 日本においては、個人情報保護法などの影響もあり、プライバシーを保護することに非常に気を使う傾向にありますが、実際にはソーシャルメディアの普及はプライバシーの境界線を次々に犯し始めており、その先にあるのがこの書籍の「パブリック」にあるような世界観です。
 現在の日本においては、おそらくパブリック信奉者よりもプライバシー重視派の方が明らかに多いでしょうし、この書籍に出てくるジェフ・ジャービスの言葉や、「インターネットやフェイスブック以前の世界では、誰もが無名だったからこそ膨大なプライバシーが存在した。人は生産者か消費者のどちらかでした。そのふたつがはっきりと分かれた社会、ある意味で自然に反する社会だったんです。」というザッカーバーグの言葉に賛成できない人も多いでしょう。
 ただ、日本においても米国並みにソーシャルメディアが普及したとすると、実際にはソーシャルメディア時代以前のプライバシーの維持というのは現実的には不可能になっていく可能性があります。
 もし、そうなのだと仮定したら、従来と同様のプライバシーを守ることに全エネルギーを投入するよりも、パブリックであることが容易になった世界の良い面の可能性を追求すべき。
 そう思えるかどうかが、この本を読んで共感できるか、恐怖を感じてしまうかの境界線のような気がします。
 ソーシャルメディア時代におけるプライバシーについて一歩引いた視点で考えてみたい人はもちろん、ソーシャルメディア普及後の未来について考えてみたい方には参考になる点が多々ある本だと思います。
【読書メモ】
■僕はこの本をとおして、もしプライバシーに固執しすぎればこのリンクの時代にお互いにつながり合う機会を失うかもしれない、と言いたい。
■「インターネットやフェイスブック以前の世界では、誰もが無名だったからこそ膨大なプライバシーが存在した。人は生産者か消費者のどちらかでした。そのふたつがはっきりと分かれた社会、ある意味で自然に反する社会だったんです。」(マーク・ザッカーバーグ)
■議論のなかで、聴衆の一人が、自分の画像が含まれているみんなの写真を勝手にネットに上げないでほしいと言った。許可していない、と言うのだ。彼がそう言い張れば、参加者は誰もイベントの写真を撮ったり共有したりできなくなると僕は言った。写真の次にはみんなが言ったことや聞いたこと、共有したいことを公開するなと言い出すかもしれない。
 このイベントは公共の資産だし、もしこの男性が他の参加者にそこで起きたことをシェアさせないのなら、それはみんなから何かを奪うことになる。

続きを読む パブリック(ジェフ・ジャービス)を読むと、ソーシャルメディア時代にプライバシーというものを重視しすぎることによるデメリットについて考えさせられると思います

「習慣で買う」のつくり方 (ニール・マーティン)

4903212319 「「習慣で買う」のつくり方」は、タイトル通り習慣で買うというリピーターの作り方について考察された書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、人間がいかに論理的に日々判断して行動している生き物ではなく、習慣に頼っているかという点を中心に、習慣を作るためのマーケティングのあり方について考察されています。
 ソーシャルメディアのツール選択においても、実は重要なのは論理的な機能差ではなく、日々の習慣の中心になるかというのが大きいのは実感値としてはありますが、いざ、具体的にここまで習慣の力を説明されると、なかなか考えさせられるところがあります。
 最新のマーケティング手法を勉強しすぎて頭でっかちになりがちな方には、原点に立ち返るという意味で参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■本来携帯電話業界は、既存顧客を長く維持すればするほど収益性が高まる。
 それなのに携帯電話業界は、既存の客よりも新規の客の方を第一に扱いがちだ。
■「満足」しても、リピーターになる率はたったの8パーセント
■無意識と顕在意識
 無意識=習慣脳は、生き抜くために必要なものとして生まれつき備わった武器だ。何かを日常的に繰り返し行ううちに、それは「習慣」となり、わざわざ意識しないでも自然にできるようになる。この仕組みのおかげで、進化の過程で後から備わった顕在意識=判断脳は、ほかの作業に集中することができる

続きを読む 「習慣で買う」のつくり方 (ニール・マーティン)

統合知 (山田まさる)

4062950731 「統合知」は「脱広告・超PR」などの著作を書かれている山田まさるさんが書かれた書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、社会的難題を解決するためのコミュニケーションという視点で、いわゆるPRのアプローチを広げて考えられていますので、新しいPRのアプローチを考えたい方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■競争タカシと難題トクオ
・競争タカシ
 ゴール:競争相手に勝つ
 ルール:自社の強みを活かす、相手の弱点をつく
 ロール:自分と競争相手と審判
・難題トクオ
 ゴール:問題を解決する
 ルール:問題の原因を探り、解決のための手段を講じる
 ロール:主体者と協力者、その他、利害関係者

続きを読む 統合知 (山田まさる)

シェア 共有からビジネスを生み出す新戦略(レイチェル・ボッツマン)には、震災を経験した日本人だからこそ、チャレンジすべき世界だと改めて感じます

4140814543 「シェア 共有からビジネスを生み出す新戦略」は、「フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略」を監修された小林さんが監修されたことでも話題になった書籍です。
 こちらも発売時に献本を頂いていたのですが、書評抜き読書メモを公開するのをすっかり忘れていたので、今更ながら公開させて頂きます。
 シェア、というコンセプトは、古くて新しいコンセプトというのが、この本を読んで改めて感じた印象です。
 部屋をシェアするサービスの下りで「1950年代以前には、友人や友人を頼って旅行する事はめずらしくなかった。」というくだりが出てきますが、確かに近代化以前は、そもそも近所でものを貸し借りしたりするのは当たり前の現象で、恥ずかしい行為ではなかったはず。
 それがマス消費の浸透もあり、年に一回しか使わないようなものでも、他人に借りるのは面倒だし恥ずかしいから、すべて自分の家にそろえてしまうようになったわけで。
 震災後の価値観の変化の影響もあり、さまざまな無駄が見えてくるようになった気がします。
 昨年末に、ネスレさんの「ネスレゆずりば」という、ソーシャルシェアサービスのグループインタビューをお手伝いさせて頂きましたが、このサービスもネスレの揖斐さんが震災を通じて感じた価値観の変化が大きく影響しているとのことでした。
 それもあって、改めてこの本を読み返してみたのですが。
 冷静に考えてみると、日本人ってそういう近所のものの貸し借りや、古いものを「もったいない」と簡単に捨てない文化をもっている国だったはず。
 そういう意味では、アメリカで「シェア」がはやっているから日本でも、とシェアを意識したサービスを始めるよりも、日本ならではの「共有」のサービスを生み出して、世界に日本の共有の文化を広めていくという心意気のサービスがもっと出てきても良いのではないかな、と感じたりします。
 既存の「消費」を当たり前としたビジネスモデルに対して疑問を感じている方には、ヒントになる点が多々ある本だと思います。
 以前ご紹介した「メッシュ」と合わせて読むのもオススメです。
【読書メモ】
■世界中で起きつつある何千というコラボ消費の事例を、三種類のモデルに分類
・プロダクト=サービス・システム
・再分配市場
・コラボ的ライフスタイル
■成功事例に共通する四つの原則
・クリティカル・マス
・余剰キャパシティ
・共有資源の尊重
・他社への信頼
■「エアビーアンドビーは近代的な発想じゃないんだ。」(チェスキー)
 1950年代以前には、友人や友人を頼って旅行する事はめずらしくなかった。
 エアビーアンドビーは昔の発送を借りてきて、P2Pネットワークと新しいテクノロジーを使って現代的にアレンジしたものだ。

続きを読む シェア 共有からビジネスを生み出す新戦略(レイチェル・ボッツマン)には、震災を経験した日本人だからこそ、チャレンジすべき世界だと改めて感じます

書籍「ゲーミフィケーション(井上明人)」を読むと、ゲーミフィケーションという言葉はソーシャルゲームブームのことではなく、様々な企業活動や取り組みに活用できる「ゲーム化」というコンセプトであることが分かるはず。

4140815167 「ゲーミフィケーション」は、タイトル通り最近話題のフレーズである「ゲーミフィケーション」について書かれた書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、ゲーミフィケーションというフレーズを流行語としてではなく、一つの可能性として冷静に分析されています。
 オバマが大統領選挙の時に構築したマイバラクオバマとハワードディーンのゲームの比較や、ディズニーの社内表彰制度とフェイスブックの類似の社内システムの比較など、実に幅広い視点でまとめられているのが大きな特徴と言えるでしょう。
 日本においては、「ゲーム」という言葉はテレビゲームのことを指すとイメージしている方が多いため、ゲーミフィケーションというと、ソーシャルゲームが流行っているのと重なって、企業がソーシャルゲームを作ることと勘違いされている方も意外に多いようですが、実際にはゲーミフィケーションとは「ゲーム化」のことで、それ以上でもそれ以下でもありません。
 一方で、実はこの「ゲーム化」ということには実に大きな可能性が秘められているというのが、最近のゲーミフィケーションの盛り上がりの背景にあると言うのは決して忘れてはいけないポイントでしょう。
 
 退屈な作業や、モチベーションを保てない行為においても、ゲーミフィケーション的な要素が組み合わさることで、楽しくなる可能性があります。
 個人的な象徴としてあげたいのは、インサイトやプリウスなどのハイブリッドカーのエコドライブランキング。
 本来ドライブのランキングと言えば、目的地に着くまでの時間を競うのが当たり前で、ゆっくり走るのはかっこわるい行為だったと思いますが、燃費を競うという仕組みを作ったことで燃費を良くするために「ゆっくり」走ることがかっこよくなり、自慢できる行為になるわけです。
 昨今のゲーミフィケーションブームを冷ややかにみている方には、是非この本を読んで頂くと、自分なりのゲーミフィケーションの活かし方が見つかるのではないかと思います。
 個人的には「オバマのつくり方」も合わせて読むのをオススメします。
【読書メモ】
■流行語としての「ゲーミフィケーション」という言葉に踊らされる必要は無い。何なら、ゲーミフィケーションという言葉は使わなくてもいい。
■2015年までにイノベーションを司る組織の半数以上が、そのプロセスにゲーム的な要素を取り入れ、2014年までにグローバル企業2000社のうち70%以上がマーケティングと顧客の維持のため、少なくともひとつ以上のゲーム化されたアプリケーションを持つ事になるだろう。(ガートナー)
■マイバラクオバマ・ドットコム
 まずは、登録。そして、個人情報の入力。そして、友達を誘う電子メールを送信する。
 こうした誰でも簡単にできる事を少しずつ続けていくと、マイバラクオバマ・ドットコムのなかでのレベルが上昇していく。

続きを読む 書籍「ゲーミフィケーション(井上明人)」を読むと、ゲーミフィケーションという言葉はソーシャルゲームブームのことではなく、様々な企業活動や取り組みに活用できる「ゲーム化」というコンセプトであることが分かるはず。

世代論のワナ (山本直人)

4106104512 「世代論のワナ」は、「「買う気」の法則」や、「電通とリクルート」などの著作を書かれている山本直人さんが書かれた書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、深く考えずに使われがちな世代論について山本さんならではの視点で冷静に解説されています。
 世代論というのは、いろんなところで議論の火種になっていますが、この本を読むと実は世代論を軸に議論していること自体が議論がかみ合わない原因なのではないかと思えてきたりします。
 
 一歩引いた視点で世代論について考えてみたい方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■若者の変化を批判的に論じる人やジャーナリズムが、どうにも二面的で、身勝手に感じられてきた
 そもそも、ゲームもケータイも大人が考え出して若者に売り込んだものだ。それで若者に負の変化が起きたとしても、その原因は大人にある。
■実を言うと、今までの日本の世代論のほとんどは若者論だったのだ。10代後半から20代後半の間に何らかのレッテルを貼られていたのである。そして、そのレッテルは、彼らが社会人になると段々と剥がれていった。
 ところが、近年になって若者以外の世代が、論じられるようになってきた。
■世代論=若者論ではなくなってきた。それは、大人が大人らしくなくなってしまったからともいえる。

続きを読む 世代論のワナ (山本直人)