グロースハッカー (ライアン・ホリデイ)は、実はこれからの時代のマーケティング担当者の必読書といえると思います

482224993X 「グロースハッカー」は、タイトル通り最近話題の「グロースハッカー」について紹介されている書籍です。
 献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 グロースハッカーについては、Googleでグロースハッカーと検索すると関連後に「サザエ」と表示されるぐらい、こちらのサザエさんのスライドが有名ですので、まずはこちらをご覧ください。

 
 グロースハッカーというと、どうしてもハッカーという語感からエンジニア向けの書籍という印象をもたれると思いますが、書籍でも「グロースハッカーは新世代のマーケティング担当幹部である」という表現があるように、口コミでユーザーを増やすことができるソーシャルメディア時代の新しいマーケティングコンセプトと思って読んだ方が良いかもしれません。
 マーケターというと広告予算を基にお金を使う、というイメージを持たれている人が多いかもしれませんが、この本で定義されているのは製品開発も含めてできるだけ低コストの方法から試してみて、徐々に拡大するアプローチ。
 真逆の立ち位置というぐらいスタンスが異なるのですが、それこそが新世代のマーケティング担当幹部であるというメッセージです。
 書籍としては薄い本ですし読みやすいと思いますが、その概念自体はかなり奥が深いと思います。
 「リーン・スタートアップ」というコンセプトもありましたが、あの本と合わせて読むとより理解が深まる気がします。
 「グランズウェル」や「マーケティング3.0」と合わせて読むのもお勧めです。
 
【読書メモ】
■グロースハッカーは新世代のマーケティング担当幹部である
■「十分な予算がない中で、スタートアップは企業を急成長させる術を習得したのだ」(ミカ・ボールドウィン)
 
■そして今彼らが作り上げた手法、新機軸、裏ワザが、われわれマーケターがこれまで学んできた手法と対抗しているのだ。

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アドボカシーマーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業 (グレン・アーバン)

4901234951 「アドボカシーマーケティング」は、2006年に出版された書籍です。
 「アンバサダーマーケティング」の原著であるBrand Advocatesを佐藤達郎さんに紹介頂いた時に合わせて紹介されて読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本で取り上げられている「アドボカシー」は、Brand Advocatesで出てくる「アドボカシー」ともまた意味が違っています。
 Brand Advocates的なアドボカシーは、「アンバサダー」とか「アドボケーツ」と呼ばれるような企業を支援してくれる顧客を増やしていくイメージですが、こちらのアドボカシーは企業側が顧客を支援することを意味しています。
 ちなみにこの書籍の原題は「Don’t Just Relate ADVOCATE!」
 直訳すると、「関係を作るだけじゃなくて、支援しろ!」ですかね。
 このあたりの英語の定義を日本語で説明するのはなかなかに難しいですが、この本のアドボカシーマーケティングは、正直マーケティングと訳した方が近い感覚かもしれません。
 ちょっと古い本ではありますが、最近マーケティング業界でもよく話題に出てくる「Authenticity」につながる話もありますので、マーケティングの根本的な変化を俯瞰して考えたい方には参考になる点がある本だと思います。
 「Authenticity」をテーマにした本である「ほんもの」や、「マーケティング3.0」と合わせて読むのもお勧めです。
 
【読書メモ】
■アドボカシーマーケティングの「アドボカシー」とは「支援」「擁護」「代弁」などの意味を持つ。顧客との長期的な信頼関係を築くため、顧客を支援する。
■パラダイムシフト
・懐疑心の高まり
・政府による規制
・メディアパワーの低下
・過剰供給、コモディティ化、飽和
・裏切り行為に対する「罰」
■三つのマーケティング戦略
・プッシュ・プル戦略:無防備な顧客に情報や製品を押し付ける
・リレーションシップ戦略:顧客との長期的な関係を築くことによってCRMの理想を追求する
・アドボカシー戦略:顧客や見込み客に対して、あらゆる情報を包み隠さず提供する

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なめらかな社会とその敵(鈴木健)

4326602473 「なめらかな社会とその敵」は、貨幣システムPICSYなどでも有名な鈴木健さんが書かれた書籍です。
 献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 なめらかな、というフレーズは以前はてなの近藤さんが確かなめらかな会社という講演をされていたことがあって、個人的にも非常に印象に残っているフレーズです。
 インターネット以前の現実社会と、これからの社会を表現する上で、なめらかという定義が出てくるわけですが、非常に哲学的でありつつ、ビジネスの世界にも関係している概念であると思います。
 現在起こっている社会の変化を俯瞰して考えてみたい方には参考になる点がある本だと思います。
 「ヒトデはクモよりなぜ強い」や「フラット化する世界」と合わせて読むのもお勧めです。
 
【読書メモ】
■膜と核
 膜:現実社会はまだまだ資源の囲い込みに満ちあふれている
 核:現実社会では中央集権的な組織に満ちあふれている
■膜や核の構造は、世界に満ちあふれる複雑な相互作用のネットワークを背景に成立している
 生命と環境の分離不能な相互作用からさまざまな人工物が生まれてくる。人工物は生命と環境の相互作用のかたちを規定する
 社会制度もそうした人工物のひとつである

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オウンドメディアで成功するための戦略的コンテンツマーケティング(ジョー・ピュリッジ)

4798130877 「戦略的コンテンツマーケティング」は、タイトル通りコンテンツマーケティングについて考察されている書籍です。
 献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 ソーシャルメディアの普及により、ソーシャルメディアアカウントが一時的に注目される流れとなりましたが、実際にソーシャルメディアユーザーに企業やブランドについて話題にしてもらうためには、実はオウンドメディアが重要だというのは、最近改めて議論されるようになってきていると思います。
 私自身は、アンバサダー・マーケティングのようなアーンドメディア側、ソーシャルメディア側の立場ですが、結局コンテンツそしてブランド自身の軸が無いと、アーンドメディアだけではどうにもならない世界があると痛感する日々です。
 この本では、そんなコンテンツを軸にしたマーケティングについての考察がされていますので、改めてコンテンツの価値を考えてみたい方には参考になる点がある本だと思います。
 「インバウンドマーケティング」や「マーケティング3.0」と合わせて読むのもお勧めです。
 
【読書メモ】
■イノベーションに先立って、投資収益率(ROI)を実証するのは不可能だ(当然ながら、まだ実証されていないのだから)。同じようにマーケティングにおいて、より革新的、破壊的な成功を築き上げるには、さらなる失敗をよしとする余裕が必要だ。
■コンテンツマーケティング戦略において明確化してもいいROIの例
・売上推移のトラッキング
・コンバージョンのトラッキング
・エンゲージメントの測定
・前/後の認知度
■コンテンツマーケティングファネル
・訪問者→見込み客→販売機会→販売→顧客
・顧客→満足→リテンション→アップセル→口コミ拡散

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データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」(ディミトリ・マークス他)は、データが苦手な文系人間こそ今のうちに読んでおくべき一冊だと思います。

4822249476 「データ・サイエンティストに学ぶ「分析力」」は、最近のデータサイエンティストブームの火付け役ともいえる書籍です。
 献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 「データサイエンティスト」というキーワードは、ここしばらくマーケティング業界では頻繁に聞くようになってきましたが、これからのマーケティングにおいては必須の職種になってくると感じています。
 個人的には自分の会社の会社名が「アジャイルメディア・ネットワーク」ということもあり、最後に出てくるデータを活用することで実現できる「アジャイルマーケティング」というキーワードも非常に気になりましたが、様々なデータを取得することが可能になったことにより、マーケティングの現場の考え方が根本的に変化し始めているのを感じます。
 実際、「アンバサダーマーケティング」のようなコンセプトも、こうしたデータ分析が組み合わさることで間違いなく急速に進化していく手応えがあります。
 データという単語を聞くと食わず嫌いで逃げてしまいたくなる、文系人間な私のような人こそ、読むべき一冊といえると思います。
 「グランズウェル」や「エフェクト」と合わせて読むのもお勧めです。
 
【読書メモ】
■手元にあるのに気づいていないデータを活用すれば、売上とROIを同時にかつ劇的に上昇させることができる
■改善が可能になった理由
・最近のめざましい技術革新によって、顧客の行動に関するあらゆるデータが分析可能になり、そこから彼らの購買パターンを把握・予測できる
・いまやあらゆる行動からデータが生み出されるようになったことで、ビジネスに関係する人々の姿を完璧に捉えることが可能になった
■バリュースペクトラム・モデル
 価値と愛着度の二軸で顧客を分類

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アンバサダー・マーケティング(ロブ・フュジェッタ)を読むと、釣った魚にエサをやらない従来のマーケティング手法は、すごいモッタイナイと感じられると思います。

4822249778 このたび、こちらの「アンバサダー・マーケティング」という書籍で、解説を担当させていただきました。
 本日10月3日、発売となりますので、書評抜き読書メモの前半を公開させて頂きます。
 今日の夕方開催するインバウンドマーケティングとアンバサダーマーケティングのダブル出版記念セミナーでも紹介させていただきますが、この「アンバサダー・マーケティング」は、AMNのクリエイティブディレクターである藤崎さんが監修を担当し、私が解説を書くという形で、AMNが全面的に出版をお手伝いする形で取り組んだプロジェクトになります。
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 表紙にも書いてあるように原題は「Brand Advocates」。本来はそのまま翻訳するなら「ブランド・アドボケーツ」や「アドボケーツ・マーケティング」とするべきだったんでしょうが、それでは米国のマーケティング事情に詳しい一部の方にしか伝わらないだろうと出版社の方々にもアドバイスをいただき、ブランドアドボケーツ=ブランドの熱烈な支援者という言葉の雰囲気に近い「アンバサダー」に全部置き換える形で翻訳をさせて頂いています。
 もともとは、「教えて!カンヌ国際広告祭」などの書籍でもおなじみの佐藤達郎さんに、この本のコンセプトがAMNの提唱しているアンバサダー重視のアプローチに非常に近いから翻訳したほうが良いとご紹介いただいたのですが、私自身も読んでみて私以上に、アンバサダー的な口コミしてくれるファンの価値を強烈に推奨している本で驚いたのをよく覚えています。
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 ちょっと読んでもらえばすぐわかると思いますが、「インフルエンサーは注目を集めるのは得意だが、必ずしも売上に貢献するとは限らない。アンバサダーがオススメすれば売上に直結する」とか「アンバサダーに報酬を払わない」や「カネや無料サンプルを渡さなければ動いてくれないような顧客は、本物のアンバサダーではない。傭兵である。」など、一般的な日本のキャンペーンの現状からすると、かなり過激な発言が続きます。
 ここまで純粋にシンプルに考えて本当に機能するのか?というのは当然大勢の方が思うはずで、実際米国でも賛否両論を含んだ議論を他のマーケッターと、そこここで交わしているようです。
 ただ、この著者のロブ・フュジェッタ氏のすごいのは、その信念のもと、実際に多数の企業と報酬に基づかないアンバサダープログラムを展開し、成果を出しているところでしょう。
 本書で紹介されるNPSの究極の質問とアプリを組み合わせた手法は、パッと読むと本当にこんな上手くいくのかな?と疑問がわいてしまうぐらいシンプル。
 私自身も、この数年、アンバサダーやアドボカシーを重視した手法を推奨してきた人間ですが、この著者は私以上に、口コミしてくれるファンの価値の可能性を心底信じている人なんだなというのが伝わってくる本です。
 解説にも書かせていただきましたが、そうはいってもソーシャルメディアユーザー比率の高い米国の成功事例ですので、日本でこれをこのまま真似するのは、ツイッターやFacebook活用と同様良くないと正直思っている面もあります。
 ただ、やはり本当の意味でアンバサダーの価値を明確にしようと思うと、ここまで一気に言い切ってしまって証明していく必要があるのかなとも感じています。
 特に、同じく解説にも書いたように、日本企業は顧客との関係を大事にしている企業が多く、実は多数の既存顧客が口コミで顧客を連れてきている事実を日々感じているんですが。
 従来のマスマーケティングの価値観では、大事なのは新規顧客獲得であって、既存顧客やファンというのは「釣った魚」であって無価値に見られがちなんですよね。
 最近のiPhoneによる3携帯事業者による新規顧客獲得合戦が象徴で、長くその事業者の回線を使い続けている優良顧客より、毎年事業者を変更しているキャリアホッパーの方が毎回キャッシュバックで優遇されるなんて、明らかに何かが間違ってると思うんですが。
 これこそがこれまでの新規顧客獲得を重視するマーケティングの常識であり、釣った魚にエサをやらないのが常識の世界観だと思うんですよね。
 でも、ソーシャルメディアによって顧客の口コミの影響力が急上昇している今現在、これって実はすごいモッタイナイことだと思うんですよね。
 そういう意味では、アンバサダー・マーケティングを読んでもらえると、ソーシャルメディアの普及によって影響力を持ったファンをアンバサダー化し、いわゆる「釣った魚」と一緒に新しい市場を作っていくマーケテイングの可能性というのを感じてもらえるのではないかなと思います。
 昨日ご紹介した「インバウンドマーケティング」はもちろん、「グランズウェル」や「エフェクト」と合わせて読むのもお勧めです。
 ちなみに、AMNでも本日の出版記念セミナーのような活動も含め、アンバサダーに関する取り組みを継続して「アンバサダー・ラボ」というブログで今後ご紹介していく予定ですので、こちらも是非ウォッチしてください
【読書メモ】
■この本に登場するマーケティングは、マスコミュニケーションでは不可能だったユーザー一人ひとりの気持ちに着目し、個人とつながりを持つことで、個人の気持ちと熱量をマーケティングに生かすものだともいえる。(藤崎 実)
■アンバサダーがこれほど力を持っている理由は、たった一言で説明できる。「信頼」だ。世界中のネットユーザー10人中9人が、様々な広告形態のうち最も信頼できるのは友人や家族からのオススメだと答えている。ネット広告を信頼するのは10人中2人に過ぎない。
■最近の当社の調査では、アンバサダーの49%が商品やサービスをオススメする主な理由として「使ってみて良かったから」を挙げた。
 オススメする主な理由として、インセンティブや報酬を挙げた回答者はわずか1%だった。
■アンバサダーは何をしてくれるのか
・実質的な営業部隊として活躍してくれる
・ネット上の評価を高めてくれる
・すばらしい経験の”証言者”となってくれる
・質問に答えることで、迷っていた買い手を購入に踏み切らせてくれる
・クチコミによる紹介客、クリック数、販売数を増やしてくれる
・新商品の販売を応援してくれる
・説得力のある宣伝コピーを作ってくれる
・会社やブランドを批判者から守ってくれる
・競合の存在や市場ニーズを知らせてくれる
・フィードバックを提供してくれる

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